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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『遭遇』 その11

 荒野を行く一同はオアシスに近付いていた。ここまで何事も無く順調に来た一同だったが、オアシスが次第に大きく見え始めた時、支援部隊の前にミレットが急降下して少し乱雑に着陸すると、慌てた様子で大声を出した。


「皆さん、ちょっと待って! 止まって!」


 彼の言葉を聞いた支援部隊の三頭は足を止め、きょとんとしている。後方で続いていたショーナとフィーも彼の声を聞き、何事かと支援部隊の左側に出てミレットを見る。

 険しい表情をしているミレットに、支援部隊の先頭を歩いていたドラゴンが問う。


「どうしたんですか? 何かあったんですか?」

「オアシスの向こう、まだ遠いですが……。こちらに向かって来る多くの影を見付けました」

「多くの……影……? それは一体……」

「遠方だったので、はっきりとは見えませんでしたが……。ドラゴンと馬に乗った人間らしき影が……それぞれ多数……。直掩も上がっている様です」

「……!!」


 ミレットの言葉を聞いた支援部隊の面々は、皆驚愕して言葉を失っている。ショーナも顔をしかめていたが、その隣でフィーはきょとんとしてショーナに質問する。


「ねぇ、『ウマ』って……なに……?」

「『馬』ってのは、その……そういう動物。足が速いから、人間が乗ったり物を引かせたりする」

「……ふうん……」


 今の状況で詳しい説明が出来なかったショーナは、口早に説明をしてすぐにミレットに顔を向け直した。

 当のミレットは話を続ける。


「今、隊員を偵察に向かわせています。相手に見付かるとまずいので、相手の直掩の更に上、高高度で雲に隠れながら行く様に伝えました。偵察としての情報精度は落ちますが、まずは安全を優先という事で……。

 もうすぐ戻るハズですから、少し待機を……」


 そこに翼竜一頭が急降下して、乱雑にミレットの横に着陸する。もう一頭の翼竜は上空でホバリングをし、直掩を継続していた。

 ミレットが話し終えるのが先か、その翼竜が戻ってくるのが先かは分からなかったが、その翼竜は血相を変えて声を荒げた。


「ほ……報告します! 前方の影は、ドラゴンと馬に乗った人間で間違いありません! 総数は、我々の戦闘部隊で換算すると……一個大隊程! こちらに向かって来ています!」


 その報告に、その場にいた一同は一斉に険しい表情をした。……ただ一頭のドラゴンを除いて。


「ねぇ、『イッコダイタイ』って……なに……?」


 フィーは少し顔をしかめ、ショーナに質問していた。ショーナは彼女に険しい表情を向けると、その問いに答える。


「『一個大隊』ってのは、隊の大きさの事。……フィーは『小隊』は分かってるよね?」

「えぇ」

「『中隊』は?」


 フィーは静かに首を横に振る。


「『中隊』ってのは、三、四個小隊が集まった隊の事。それで、『大隊』ってのは、その中隊が三、四個集まって出来た隊の事。

 だから、『一個大隊』ってのは……。ジャック隊長は『一個小隊は最低でも三頭で組む』って言ってたから、最低の数で計算しても……一個中隊が九頭だから……二十七頭って事になる」


 その会話を聞いていたミレットは、真剣な表情で彼に率直な思いを伝え、そして情報を付け足す。


「……さすがです、聖竜様。……つまり、相手はドラゴンと人間合わせて、およそ三十といった所ですね」


 ミレットの言葉が終わるのと同時に、偵察を行った翼竜が口を開く。


「それと、人間は……『大弓(おおゆみ)』も持ち出してきています! 大弓が一台、馬に引かれて……!」

「な……何ですって!?」


 翼竜の報告を聞き、ミレットは驚愕して声が漏れていた。支援部隊の面々も皆、驚愕して顔を引きつらせている。


「ね、ねぇ……。『オオユミ』って……なに……?」


 この状況を察し、フィーは恐る恐るショーナに質問していた。しかし、当のショーナもフィーの質問を聞き、それを自身の言葉でミレットに質問した。


「お……『大弓』って何ですか!?」

「『大弓』と言うのは、人間が作った『対魔物用兵器』です。木製で簡易な作りではありますが、簡易なので数をそろえる事が出来るんです。そして……木製の車輪が付いているので、馬で牽引する事が出来ます。

 友好派にも少数ですが、大弓はあります。友好派は自衛部隊の戦力が独立派程ではありませんから、魔物の迎撃に大弓を使う事もあるのだとか……」


 真剣な表情で聞くショーナとフィー。ショーナは更に質問を重ねる。


「それで、その大弓は……どんな兵器なんですか……!?」

「大弓は……その言葉の如く、大きな弓です。『弓』と言うのは……」

「強く張った(つる)で、矢を放つ武器……ですよね?」

「……その通りです、聖竜様。……大弓は、それを巨大にした物です。放つのは矢ではなく、先を(とが)らせた丸太を放ちます」

「ま、丸太を……!?」


 ショーナは顔を引きつらせ、思わず少し顔を引いた。そしてミレットに言う。


「そんな物が直撃したら、ドラゴンだって……!」

「……そうです。彼らが何の目的で大弓を持ち出したのかは分かりませんが、一個大隊程の総数で大弓を持ち出し、そして……こちらに向かって来ているというのは……、私は……あまりいい状況とは思いません」

「…………」


 ショーナがため息混じりにうなると、偵察を行った翼竜が再び口を挟んだ。


「あと、もう一つ……。その一団の先頭を歩いていたのは……ジコウさんです……!」

「なっ……!!」

「えっ……!!」


 翼竜の言葉に、ショーナとフィーは同時に声を上げて驚いていた。


「ど……どうしてジコウが……!」


 ショーナは顔をしかめて一言呟いていたが、隣にいたフィーは違った反応をしていた。


「……じゃあ、ジコウが見付かったんだし、今から行って連れ戻せば……!」

「それは危険だよ、フィー」

「どうして? 別に、話しに行くだけじゃない。……力ずくになるかもしれないけど」

「その『力ずく』になった時が危険なんだよ。向こうは一個大隊で、数が違いすぎる。対魔物用兵器まで持ち出しているのに、穏便に済むなんて……とても思えない」

「でも、その『タイマモノヨウヘイキ』は、魔物と遭遇した時に備えてるだけかもしれないでしょ? それなら……」

「それなら、そんな数で向かって来る必要は無い。そもそもドラゴンも一緒にいるのに、対魔物用兵器を持ち出している時点でおかしい!

 とにかく……その数だと簡単に包囲されて、逃げ道を塞がれる。行くのは危険だ」


 今の二頭の会話を聞いていたミレットは、ここで口を挟む。


「聖竜様のおっしゃる通り、あの一団の中に飛び込むのは危険です。我々も、このまま友好派に向かう事は出来ません。向こうは直掩を上げていますから、現状……我々の存在に気付いているハズです。オアシスで身を隠したとしても、あの数では……見付かってしまう恐れが……。

 ……戻りましょう! 集落に戻って、この事をジャック隊長達に知らせるんです!」


 ミレットがそう言うと、荷車を引く支援部隊のドラゴン達は、ぐるりと大きく弧を描いて回り込み、独立派方面へと回頭。そして走り出す。ショーナとフィーも支援部隊の後方で走り始め、偵察を報告した翼竜は羽ばたいて上空へと上がり、もう一頭の翼竜と共に直掩を開始した。

 そんな中、ミレットは低空でショーナと並行して飛び、彼に声を掛ける。


「聖竜様! 我々に構わず、先に集落に行って下さい!」

「で……でも! ……それに、どうして支援部隊は荷車を切り離さないんですか!? あれを切り離せば、もっと速く走れるのに……!」

「荷車だって、我々にとっては貴重な物資です。もちろん、命に危険が及んだ時は切り離しますが、今戻れば追い付かれる事はありません。

 とにかく……我々は彼らを直掩しなければなりません! 万が一の事があれば、我々は『しんがり』をしなくてはなりません! ですから……! お二方は先に集落に向かって、この事を少しでも早く伝えて下さい! ……お願いします!」

「わ……分かりました……!」


 往路の時とは違う、真剣な表情で訴えるミレットに、ショーナは事の深刻さを理解して彼の提案を受け入れた。そしてフィーに目を向け、一言言う。


「よし、先に行こう!」

「オッケー!」


 そうして彼らは速度を上げると、前方を行く支援部隊を両側から追い抜く。そして……


「フィー!!」

「オッケー!!」


 彼の一声でフィーは勢いよく羽ばたき、急上昇して直掩を開始した。それを後方で上昇しながら見守るミレット。


(……やはり、お二方は……仲がいいですね。お若いのに……羨ましいです)


 一方、ショーナは全力疾走で見る見る輸送部隊を引き離していた。


(くそっ……! こんな事になるなんて……! まさか……あいつ……! 独立派と戦うつもりじゃ……!)


 そう思いながらも、彼はただひたすら集落目指して荒野を駆け抜けた。

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