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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『遭遇』 その10

 空は相変わらず分厚い雲に覆われ、彼らはいつもより薄暗くなった一本道を歩く。上空ではミレットを含めた三頭の翼竜が、三角形の編隊を組んで直掩を行っている。

 ショーナとフィーは支援部隊の後方を歩いていたが、ショーナは少し情報を集めようと、一番後ろを歩く支援部隊のドラゴンの横へと歩み寄り、そのドラゴンに話し掛けた。


「あの、すみません」

「はい。何でしょうか、聖竜様」

「今、友好派って行方不明者が出ているじゃないですか。それで……ちょっと気になったんですけど、他にも何か……異変とかって聞いた事ありますか?」


 ショーナの問いに、そのドラゴンは少し顔をしかめて目を上に向けると、思い出しながら答えた。


「……そうですね……。あっ、そういえば……! 昨日戻ってきた別の輸送班から聞いたのですが、どうやら……昨日、友好派の集落で『人間の集落でも行方不明者が出た』と、耳に挟んだそうです」

「人間の集落でも……行方不明者……!?」

「はい。ゼロ司令とジョイ隊長が友好派を()った後、この話を聞いたそうで……。

 昨日はその輸送班が帰ってきたのが遅かったですから、ゼロ司令達への報告までは出来なかったので、恐らく今頃、その報告に行っていると思います」

「そうですか……。ありがとうございます」


 ショーナは一言お礼をすると、歩く速度を落として後方のフィーに合流した。


(今度は……人間にも行方不明者か……。この前の副長の言葉じゃないけど、何か……不穏だな……)


 そう思いながら彼は顔をしかめる。そこに、彼の左側で歩いていたフィーが声を掛けた。


「ねぇ、何か情報あったの?」

「……あぁ。……今度は人間の集落で行方不明者だって」

「人間も……?」


 フィーは目を丸くして一言返し、ショーナは顔をしかめたまま静かにうなずく。それを見たフィーも彼と同じ様に顔をしかめると、前を向いて鼻で小さくため息を吐く。彼らはそれ以上、その話題を続ける事はしなかった。

 二頭が黙り込んでからしばらくして、一同は荒野に足を踏み入れる。ここで久々にフィーが沈黙を破り、口を開いた。


「ねぇ。私、上がった方がいい?」

「いや……。今日は空戦隊が直掩をしているから、フィーが上がる必要は無いよ。飛んだ方が楽なら、飛んでも構わないけど……。それはフィーに任せるよ」

「……自分だけで飛ぶのって、話し相手がいないから……退屈なの……」

「……分かった。でも……体が辛かったら早めに言って。フィーにはこれまで、ずっと直掩をお願いしていたから、この距離の徒歩は経験が無いし……。その時は楽な方にしよう、いいね?」

「……オッケー」


 彼らが微笑んで言葉を交わしていると、そこにミレットがふわりと高度を下げてショーナの右側に並行し、微笑みながら彼らに声を掛ける。


「お二方。今日は我々が直掩をしますから、友好派までの恋路、お話に花を咲かせていて下さい。……荒野にも花が咲けばいいんですけどね」

(副長……。直掩について言いに来るタイミングが遅いし、恋路じゃないし、上手い事は余計だし……。本当にさぁ……)


 苦笑いをしながら、そんな事を思っていたショーナ。彼は苦笑いをしたまま、ミレットに以前の事を話し出した。


「あの……ミレット副長……?」

「何でしょう?」

「その……。オレ達が遠征訓練ですれ違った時の事、副長は……ジョイ隊長達に報告したじゃないですか」

「あ、はい。そうですね」


 平然と返すミレットに、ショーナは相変わらず苦笑いをしたまま、フィーに聞こえない様に小声で彼に言う。


「……言っちゃったんですか? 『旅路と恋路は順調でした』って……。冗談って言ってたのに……」

「えっ……。あっ、ああぁぁっ! す、すみません! つい、うっかり……!」

(『うっかり』ねぇ……。副長って『口が軽い』のは知ってたけど……『うっかり屋さん』なのかなぁ……)


 ショーナの言葉で当時を思い出したミレットは、慌てた表情で彼に謝っていた。それをショーナは苦笑いしながら聞き、彼の左にいたフィーは何事かと目を丸くして彼らを横目で見ていた。


「で……では、私は……直掩に戻ります……! デ、デート……楽しんで下さいね!」


 ミレットは気まずそうにそう言うと、バサバサと乱雑に羽ばたいて上昇していく。それはショーナから見ても明らかに動揺していると分かる様な動きだった。


(『デート』……ねぇ……。『うっかり屋さん』なのか、それとも……計画的なのか……。まぁいいや……)


 ショーナは苦笑いしながら上昇していくミレットを目で追い、そこまで考えた所で考えるのをやめた。



 その後、一同は何事も無くオアシスに向かって進んでいった。ショーナとフィーは支援部隊の後方で、時々たわい無い話をしながら彼らに続く。そうして独立派とオアシスの中間辺りまで来た時、再びミレットはショーナの右側へと高度を下げ、並行しながら声を掛ける。


「そろそろ独立派とオアシスの中間地点です。……お二方、お変わりありませんか?」

「はい、オレは大丈夫です」

「私も特に……」


 ミレットの問いに答えたショーナに続き、フィーも言葉少なに答えていた。するとミレットは微笑みながら、ここで何の脈絡も無い話題を口にしだす。


「それにしても、お二方はいいですよね。独立派生まれで独立派育ち、しかも幼馴染みで結ばれるなんて。……何だか新しい時代が来た感じがしますよ」

「えっ……?」

「昔から独立派って、みんな友好派から移ってきたんですよ。まぁ、私は友好派出身じゃないんですけどね」


 きょとんとしながら聞くショーナとフィー。そんな彼らの事など気にも留めず、ミレットは話を続ける。


「私は幼い頃、自分が生まれた集落が厄災で壊滅してしまったんです。それで、命からがら集落を脱出して、オアシスで倒れていた所を助けられ……て…………ああぁぁっ!!」


 冗舌に話していたミレットが急に大声を出した事で、話を聞いていた二頭は目を丸くして驚いている。


「す、すみませんっ!! え~っと……その……。わ、私は直掩に戻りますね!」


 慌てた素振りで話を切り上げ、またもバサバサと乱雑な羽ばたきで上昇していくミレットに、二頭はぽかんとして彼の後ろ姿を目で追った。

 しばらくしてから、フィーは少し顔をしかめてショーナに問い掛ける。


「ねぇ、『ヤクサイ』って……なに……?」

「いや……。オレも知らない……」


 彼女の問いに、ショーナは顔をしかめて答え、


(『厄災』か……。確か……昨日の地図にも、そんな事が書いてあったっけ……。それに、一昨日ジャック隊長と話していた時に、報告に来たミレット副長……。あの時もそんな事を言っていた様な……。

 でも、何だろう……。他にも……見た覚えがある様な気が……)


 そう考えていた時だった。


「じゃあ折角だし、聞いてみればいいじゃない。支援部隊のドラゴンもいるんだし」

「あっ……! おい、フィー! ……全く……」


 フィーはそう言うと、前方で三角形の隊列を組む支援部隊の左側へと走り出した。ショーナは呆れながらぼやくと、今の位置を保ったまま彼女を見守る。

 支援部隊と並行したフィーは、大きな声で彼らに問う。


「あの……! すみません! ……ちょっと聞きたい事があるんですけど!」

「あ、はい。……何でしょうか?」

「『ヤクサイ』って……何ですか……?」

「……!!」


 最初は穏やかに受け答えていた支援部隊のドラゴン達も、フィーの問いを聞いて表情を一変し、皆気まずそうにしながら言葉に詰まっている。そして……


「す……すみません……。それは、我々の口からは……」


 申し訳無さそうに彼女に答えた。


「そう……ですか……」


 フィーはぽかんとしながら呟くと、意外な返答に足を止めてしまっていた。そこに後方から歩いてきたショーナが追い付き、彼女に問う。


「……どうだった?」

「……教えてもらえなかった……」

「……そっか……」


 残念そうな表情で答えたフィーは再びショーナの左側で歩き出し、彼女の答えを聞いたショーナは、それについて考えを巡らせていた。


(『教えてもらえなかった』……か……。そういえば、昨日の書庫長も……そんな感じだったなぁ……。一昨日のジャック隊長も、急に副長の言葉を遮っていたっけ……。

 もしかして、『口にしたらいけない言葉』……なのか……? いや、でも書庫長は『時が来たら』話してくれるって……。じゃあ……『今は話せない』って事か……。でも……みんなそろって……? 箝口令(かんこうれい)でも敷かれているのか……?)


 ショーナは顔をしかめつつ考えたものの、そこで考えるのをやめた。現状では答えにたどり着かないと分かってしまったからだ。

 彼は鼻で小さくため息を吐くと、気持ちを切り替えてオアシスを目指した。

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