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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『遭遇』 その5

 ショーナの問いにフォーロは少し真剣な表情を浮かべて腕組みをし、右手をアゴに添えて答える。


「ふむ……。友好派の集落の南北には、少しの野原を挟んで林が広がり、その林の先は再び野原が広がっている……と、わたくしは伺いましたな。北側は林と野原の先に山脈が広がっているのだとか……。

 それと、西側に関してですが、そちらは見渡す限りの野原が広がっています。そして、その先を行けば……人間の集落にたどり着けると言われておりますな」

「あっ……!」


 この世界にも人間がいるという事を、ショーナはコドモの頃に聞いていた。久々にフォーロの口から耳にした事で、彼は少し驚き、目を見開いて一声漏らしていた。

 そんな彼にフォーロが言葉を付け足す。


「ただ……。今、お話しした事は……わたくしが自らの目で見た物は少ないです。わたくしも友好派の集落出身ではありますが、集落周辺がどうなっているのかは……あまり見た事が無いのですよ。

 集落周辺に野原が広がり、西側以外には林が、北東には隣接した湖が……。そこまでは目にしております。しかし……他の情報は聞き()てです。そして、その情報も少ない……」

「あっ……」


 ショーナはそれを聞き、この地図が意味する事を察して一声漏らした。


「だから、人間の集落や山脈が、この地図には記されていない……という事ですか」

「左様。この地図が曖昧に作られているのは、不確かな情報は載せたくないという理由もあるのです。……申し訳ありません」

「いえ……! 書庫長のお話を聞いて納得しました」


 フォーロの謝罪に、慌てて声を掛けたショーナ。彼は一呼吸置いてから、今のやり取りで気になった事を問う事にした。


「あの、書庫長……?」

「ふむ、何でしょう?」

「さっき書庫長は、『情報は聞き伝てで、その情報も少ない』と……」

「そうですな」

「ちょっと気になったんですけど……。友好派のドラゴン達って、人間と友好関係を築いて交流しているんですよね? それなら、ドラゴン達が人間の集落に行った事があるんじゃないかと思ったんですけど……。

 今の書庫長のお話だと……友好派のドラゴン達は、人間の集落に行った事が無い様に聞こえたんですが……」


 ショーナの疑問はもっともだった。友好派のドラゴン達が人間と交流しているのであれば、人間が友好派の集落に来るのはもちろんの事、ドラゴンが人間の集落に行く事もあるのではないか、という、ごく普通の疑問だったからだ。

 それを聞いたフォーロは、右手をアゴに添えた腕組みはそのままに、彼に微笑んでその問いに答える。


「ふむ、さすがショーナ様ですな。鋭い考察です。

 ……して、それに関してですが……。友好派のドラゴン達は確かに人間と友好関係を築き、交流を行っております。ただ、その交流は人間側からの事なので、人間が友好派の集落までやって来る事がほとんどなのです」

「では、ドラゴン側から人間の集落に行く事は……」

「……わたくしも、聞いた事がありませんな。ドラゴン側から彼らに事を起こす事が無いので、集落に行く必要も……ほぼ無いでしょう。

 仮に何か訳あって行く必要があったとしても、代表者が数頭行けば済む事ですからな。友好派のドラゴン達も、人間の事は知っていても、その集落の場所であったり、集落の全容であったり……。そういった事を知る者は……ごく僅かでしょうな」

「そう……ですか……」


 ショーナは少し表情を曇らせ、ぽつりと相づちを打つ。彼の傍らでは、フィーが退屈そうに床に伏せ、尻尾の先をゆらゆらと揺らしている。

 彼は一旦間を空けると、真剣な顔付きで自身の胸の内をフォーロに打ち明けた。


「書庫長。先のお話でもありましたが、オレ達は今……ジコウを捜しています。ジコウが荒野方面に行った事だけは……分かっていますが……、この集落周辺の林にも、オアシスにも……何の痕跡もありませんでした。

 昨日、今日で、ゼロ司令達が友好派周辺の林の中を捜索しているそうなのですが、もし……これで見付からないとなったら……。

 書庫長は、ジコウが潜伏している場所、何か……心当たりはありませんか……?」

「ふむ……」


 ショーナの問いに、フォーロは腕組みはそのままに少し顔をしかめ、目を閉じ顔をやや上に向けてしばらく考えると、再び彼へと顔を向け、先の問いに答えた。


「わたくしの知る限り、他に場所は……考えられませんな……。他の生物より生命力の強いドラゴンといえど、生きる為には水や食料は不可欠です。それが確保出来ない場所では、生き長らえる事など出来ないからです。

 であれば……、それらを確保出来る場所を選ばねばなりません。そうなると場所は限られます。林の中、オアシス、あるいは……集落の中……」

「……!!」


 フォーロの最後の言葉に、ショーナははっとした。


「そ……そうか! 集落の中……友好派の集落の中か……! それは盲点だった……!」


 ショーナは目を見開きながら声を上げていたが、それを聞いたフィーは伏したまま、彼に半眼を向けて言う。


「でも、確かジコウの情報は友好派に持っていったって、ジャック隊長言ってなかった? それに、昨日と今日で、こっちから捜索に行ってるんだし、集落の中にいたら分かるんじゃない……?」


 フィーの反論を聞いたショーナは、彼女に顔を向けて説明する。


「いや、可能性はある」

「どうして?」

「理由は簡単だよ。友好派のドラゴン達は、ジコウの顔を知らない。例え友好派にジコウの情報を持っていったとしても、それは文書か口頭で情報が伝えられただろうから、顔を知らなければ……誰がジコウかなんて分からない」


 ショーナの力説に、フィーはすぐさま反論する。


「でもそれ、前に聖竜サマが言ってた事と矛盾しない? 聖竜サマ、確か……すぐ気付くとか、どうとか……」

「あぁ。……ただ、それは『ジコウが不審な行動を取った場合の話』だからね。もしジコウが集落の中に潜んでいたとしても、不審な行動を取らずに息を潜めていたとすれば、友好派のドラゴン達は気付かないかもしれない。

 ジコウの情報だって、集落の全てのドラゴンに行き渡ったかどうかなんて分からないし、今の友好派は……行方不明者が出ていて、ジコウどころじゃない。だから、何食わぬ顔をして紛れ込んでいても、何もおかしな事じゃない。

 ……もし怪しまれる様であれば、昼間は潜伏して、目が付きにくい夜間とかに、ひっそりと食料や水を確保すればいい。だから、可能性はある」


 それを聞いていたフォーロは、ショーナの言葉が切れるタイミングを見計らって、彼らに口を挟んだ。


「ふむ、ショーナ様の推測は一理ありますな。ジコウさんの情報が隅々まで行き渡るかどうかとなると、それは話が変わってきます。友好派の集落には、稀に『流れ者』として来るドラゴンもおりましたし、ジコウさんが不審な行動をしていなければ、果たして気付けるかどうか……。

 それと……友好派に行方不明者ですか……。わたくしは今、初めてお聞きしましたが……。もし、その様な状況にあるならば、友好派としても行方不明者の捜索を優先するでしょうし、とてもジコウさんの事を気に留める余裕など、残っているとは思えません……。

 友好派に潜伏しているという可能性は、決して無いとは……言い切れないでしょうな」


 フォーロの言葉を聞き、ショーナは思う所があった。


(そう……、オレは勘違いしていた……。行方不明者が出て、その情報を広める場合……『顔写真』や『似顔絵』なんかを使って、情報を広めると思っていた……。

 でも、そもそも『写真』なんて……この世界に無い。あったとしても、少なくともこの集落には無い。『似顔絵』の可能性はあるけど、似顔絵だって……書庫でさえ見た事は無い。そうなると……描けるドラゴンがいるのかも分からない。

 だから、友好派への情報ってのは、ジコウの特徴を……文書か口頭で伝えたハズだ。それだと……その情報を知った上で、本当に注意深くドラゴンを見ないと……分かるかどうか……。

 これは盲点だった……。行く必要があるかもな、友好派……)


 ショーナは長考しながら間を空けると、フォーロに口を開く。


「書庫長、地図……ありがとうございました」

「ふむ。……お役に立てましたかな?」

「はい。……それと別件で……。ドラゴンの生物学の書物をお願いしてもいいですか?」

「えぇ。では、お待ち下さい」


 そう言うとフォーロは、手早く地図を筒状に丸めてヒモで結ぶと、それを持って書庫の奥へ歩いていった。

 今のショーナの言葉を聞いていたフィーは、相変わらず床で伏せながらショーナに問う。


「ドラゴンの生物学? 子作りの事でも調べるの?」

「……っ!? ち、違うよ!!」


 突然の言葉に驚いたショーナは、顔を赤くしてフィーに反論していた。それを聞いたフィーは……


「ふうん……。まぁ、聖竜サマって前世の記憶があるし、子作りの事とか……もう知ってても、何も不思議じゃなかったわね……」


 呆れ顔で、そう口にしていた。

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