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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『遭遇』 その4

「さて……。本日は、どういったご用件でしたかな? ショーナ様」

「はい……」


 地下に下りて、部屋の中央に置かれたテーブルの側に立ったフォーロは、ショーナに微笑んで問い掛けた。その問いにショーナは一言相づちを打つと、一呼吸置いてから真剣な表情でフォーロに質問する。


「書庫長……。この世界に……『地図』って……ありますか……?」


 ドラゴンとして生まれてから、ショーナはこの書庫で色々な書物を見てきた。しかし、地図に関しては見聞きしていなかった為、それを恐る恐るフォーロに問い掛けていたのだ。

 対するフォーロは、ショーナに微笑んで答える。


「えぇ、ありますよ。……少々お待ちを」


 そう言って、彼は地図を取りに向かった。この世界にも地図があるという事が分かり、ショーナはほっと胸をなで下ろす。しかし……


「ねぇ、『チズ』って……なに……?」


 ショーナの横に歩み寄ったフィーは、少し顔をしかめながらショーナに質問していた。ショーナはフィーに顔を向けると、微笑んで説明する。


「あぁ、『地図』って言うのは……そうだね……。その地にある場所を、分かりやすく記した図……かな」

「場所……?」

「そう。例えば……独立派の集落とオアシス、そして友好派の集落……。その位置関係を図にした物なんかが、地図って言われる物だよ」

「ふうん……」


 一旦相づちを打ったフィーは、一呼吸置いて質問を重ねる。


「でも、どうしてその……『チズ』っての、見ようと思ったの? オアシスも友好派も、場所なんてもう知ってるじゃない」

「……確かに、オアシスと友好派なら……オレ達は知ってる」

「オアシスと友好派……『なら』……?」


 フィーは顔をしかめ、ショーナが言った言葉の引っ掛かった部分を強調して問い返した。ショーナは真剣な顔付きをして静かにうなずくと、その問いに答える。


「オレ達がこの集落の外で知っているのは、あくまでも……オアシスと友好派の場所だけだ。もし、その周辺にオレ達の知らない何かがあれば、それを知る事が出来る」

「でもそれ……知る事が出来たとして、特に何か……意味があるの?」

「あぁ、あるよ。……もし周辺に何かがあれば、そこにジコウが潜んでいる可能性もあるからね」

「……!」


 はっとしたフィーは、目を見開いてショーナの事を見ていた。当のショーナは更に続ける。


「まぁ、オアシスの周辺に何も無いって事は、ジャック隊長の言葉で何となく察してるけど、友好派の周辺には……何かあるかもしれない。林とか湖だけじゃなくて、身を隠せる様なほら穴とか、何かが……」


 そうした話の中に、フォーロが筒状に巻かれた大きな紙を持って戻ってきた。フォーロはそれをテーブルに広げながら、彼らに声を掛けた。


「ふむ、なるほど……。そういう事でしたか……。ジコウさんの件は、わたくしの耳にも届いております。……大変な事になってしまいましたな」

「……はい」

「……して、今……ショーナ様がお話しされていた事なのですが……」


 フォーロは紙を広げ終えると、少し暗い表情でショーナを見て、続きを口にした。


「友好派の周辺には、確かに林は広がっているのですが……。わたくしの知る限り……身を隠せそうなほら穴は……」

「…………」


 フォーロの言葉を聞き、ショーナは少し表情を曇らせ、鼻で小さくため息を吐く。そして彼は表情そのままに、広げられた地図を眺めながら呟く。


「……まぁ、仮にほら穴があったとしても、ゼロ司令達が捜索していますから……。とりあえず今は、色々な位置関係を……」

「ふむ……」


 相づちを打ったフォーロの傍らで、ショーナは地図の隅々まで目を配らせていた。


「それにしても……。結構……大雑把なんですね、この世界の地図って……」


 フォーロが広げた地図を見ながら呟くショーナ。その地図は彼が口にした通り、集落や林、オアシス、荒野といった場所が大雑把な円や点で示され、それらに名称が書かれていたシンプルな物。距離や縮尺も曖昧であり、「位置関係を知る為の地図」としての役目は十分だったものの、ショーナにしてみれば、とても正確な地図とは言えない物だった。

 彼の呟きを聞いたフォーロは、微笑んで答える。


「ふむ。それはわたくしが作った地図ですからな」

「えっ……!? 書庫長が……!?」

「この集落に、地図なんてありませんでしたからな。ですので、わたくしが……わたくしの知り得る知識と、周りの方からの情報を元に、その地図を作った……という訳です」

「……そうだったんですか……」


 ショーナの相づちを聞き、フォーロは一呼吸置いてから彼に問う。


「ふむ。もしや……先程のショーナ様の口振りから察するに、ショーナ様が人間だった世界にも、地図があった……という事ですかな? それも……正確な……」

「あ、はい……。向こうの世界では『長さの単位』が決まっていたので、それで正確な地図を作る事が出来ました。

 『長さの単位』が決まっていたので、地図全体で、どれだけ縮小するのかも統一する事が出来たんです」

「なるほど……、『長さの単位』ですか……。先日の『時間』のお話といい、実に興味深いですな」


 彼の説明を聞いたフォーロは腕組みをし、右手をアゴに添えると、目を閉じて何度も小さくうなずいた。

 ショーナとフォーロが小難しい話を始めてしまった為、側にいたフィーは早々に飽きてしまい、床に腰を下ろして退屈そうに尻尾の先をゆらゆらと揺らしている。

 そんな事などつゆ知らず、ショーナは地図で「ある記号」を見付け、それを指差しながらフォーロに問う。


「あっ……! これ……! 書庫長、もしかして……。この世界にも『方角』の概念はあるんですか? これ、『東西南北』を示しているんですよね?」


 彼が見付けたのは、地図の右上隅にある十字に交わった矢印の記号だった。上に向いた矢先だけは大きく強調されており、それを見てショーナは気付いていたのだ。

 その問いを聞いたフォーロは、彼に微笑んで答える。


「左様、それは方角を表す記号です。……どうやら、方角に関しては同じ……という事の様ですな」


 ここで、彼らの会話を聞いていたフィーは顔をしかめ、首をかしげながら口を開く。


「ねぇ、その『トウ…………何とか』って……なに……?」


 フィーの問いを耳にした二頭は彼女に顔を向け、そしてその問いに答えたのはフォーロだった。


「ふむ、方角は普段の生活では使いませんからな。フィーさんがご存じ無いのも無理はありません」


 そう微笑みながら発すると、一呼吸置いて続ける。


「『東西南北』と言うのは、決められた方角の呼び方を、一まとめにした言い方ですな。

 一つ一つに分けていきますと……東は太陽が昇る方角、西は太陽が沈む方角です。そして、右手を西に、左手を東にして向いた方角が南となり、南の反対側が……北となるのです」

「じゃあ、オアシスや友好派があるのは……西って事ですか?」

「その通りです、フィーさん」


 フィーの言葉に微笑んで相づちを打ったフォーロ。その傍らで、ショーナは再び地図へと目を向ける。すると、不意に彼は地図上で気になる記述を見付け、それに目が留まってしまった。

 彼が見付けたのは、独立派の集落の右下に位置する一つの点だった。その点に書かれた文字に彼は顔をしかめる。


(……ん? この点は……何だ……? 『厄災のほら穴』……?)

「ショーナ様」

「……!」


 考え込んでいた彼は、フォーロの言葉にはっとして顔を向ける。そんな彼に、フォーロは優しく微笑んで言葉を掛けた。


「今は、ジコウさんの事に集中しましょう。ジコウさんに繋がらない情報は雑念となってしまいます」

「……そうですね」

「……いずれ時が来たら、わたくしの口からも……お話しさせて頂きます。その時の為に、今はどうか……ジコウさんの事に集中して、そして……ジコウさんの無事を確認して下さい。

 ジコウさんが自らの意思で友好派に移られたのであれば、わたくしはそれを尊重します。しかし……何か理由があって集落を離れ、友好派にも移らずにさ迷っていたのであれば……、ジコウさんに接触し、その理由を……ジコウさんに確認する必要があると、わたくしは思っています。

 ですから、今はまず……ジコウさんを見付ける事に繋がる情報だけを選んで下さい、ショーナ様」

「……はい」


 優しく説くフォーロに、ショーナも微笑んで相づちを打っていた。そうして彼は一呼吸置き、今一度地図へと顔を向け、友好派周辺に目をやり一通り確認すると、それを見ながらフォーロに問う。


「書庫長、友好派の周辺って……どうなってるんですか? 東側の林と野原は、オレ達も自分の目で見てきたんですけど、集落の南北と西側って……。

 南北は……少しだけ東から林が繋がっていますけど、西側は野原とだけ書かれているので……。やっぱり……何も無いんですか?」

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