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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『遭遇』 その2

 フィーが言った言葉を思い出しながら考えていたショーナは、彼女が言った「ある言葉」に引っ掛かった。彼はそれを問う事にした。


「あのさ……フィー。さっきさ……、フィーのお父さん……『黒いドラゴンに支えられて帰ってきた』って言ったよね?」

「……えぇ」

「その『黒いドラゴン』って……どんなドラゴンだったか、覚えてたりするの?」


 ショーナの言葉を聞いたフィーは、暗い顔を逸らしたままうつむき、その問いに答える。


「……覚えてる。そのドラゴンは陸竜で……全身が甲殻で覆われていて、腕と足にある甲殻が、それぞれ一枚だけ赤く染まっていたの。

 私に気付いたそのドラゴンは、私に顔を向けて……その時に目が合ったの。赤い瞳を私に向けたそのドラゴンは、私を見て……少し……顔をしかめた様に見えた。

 そのドラゴンは私に何も言わなかったけど、私は……そのドラゴンの顔を見て……驚いたのを覚えてる」

「それは……どうして……?」

「そのドラゴンは……右目に傷を負って、そこから出血していたの。痛々しく右目を閉じて……左目だけで、私の事を見つめていた……。

 その時に気付いたの。そのドラゴンの……右のツノが……折れていた事に……」

(……んっ!? ちょっと待てよ……!?)


 ショーナはフィーの言葉にはっとし、何かに気付いて顔をしかめた。それを確かめる様に、ショーナはフィーに問う。


「フィー……。そのドラゴンって……まさか……!」

「……そう。聖竜サマも……よく知ってるドラゴンよ」


 そう言いながら、フィーは暗い表情のままショーナに目を向ける。そんな彼女に、ショーナは驚きながらしかめっ面を向け、


「まさか……ジャック隊長……なのか……!?」


 言葉に詰まりながら、そう彼女に聞いていた。当のフィーは再び目を逸らし、その問いに答える。


「……私はそう思ってる」

「…………」


 彼女の端的な答えを聞き、ショーナはため息混じりにうなると、暗い表情をして少しうつむき、黙り込んでしまった。その時彼は、ふと過去のフィーの言動を思い出し、今の話を内心で納得していた。


(そう……か……! 確かフィーは、初めて戦闘部隊に挨拶に行った時、ジャック隊長に……右目の傷の事を聞いていたっけ……。

 いきなり聞くから驚いたけど、フィーは……分かっていたのか……。『右目に傷のあるドラゴンが、父親に何があったのかを知っている』って……)


 彼はそう納得しつつも、新たに浮かんだ疑問に首をかしげる。


(……でも待てよ……? じゃあ、ジャック隊長はその時……フィーの事を見た訳だよな……。ジャック隊長は……フィーの事を、幼い頃から知っていた……って事か……?

 それに……。どうしてフィーの父親が、ジャック隊長に支えられて集落に帰ってきたんだ……? それも……傷だらけで……。

 もしかして……、フィーの両親って……戦闘部隊だった……とか……? いや、だとしても……、だとしてもだ。この集落は今、こんなにも平和で……。小さい時に闇の魔物が襲撃してきた時だって、誰かが重症を負ったなんて事は聞いてないし……。

 本当に何があったんだ……? もしフィーの両親が戦闘部隊だったとしたら、母親が帰ってこず、父親が傷だらけで……ってのは、相当な事があったハズだけど……。でも……、そんな話は聞いた事が無いし……)


 ショーナは顔をしかめながら、右手の指で顔を掻く。その時、とある事が頭をよぎった。


(もしかして……! ジャック隊長だけじゃなくて、ジョイ隊長やゼロ司令も……この事を知っていたんじゃ……!

 確か……ゼロ司令、挨拶の時に……フィーに声を掛けるの、一瞬迷っている様な感じだったし……。

 あっ……! じゃ、じゃあ……! 母さんも知ってて、オレに……)


 彼が黙り込んで長考していると、未だ暗い表情のままうつむいたフィーが、沈黙を破る様に口を開く。


「私、ジャック隊長はきっと……何か知ってると思ってる。……ジャック隊長だけじゃなくて、この集落のみんなが……私が知らない事を知ってて、それで……隠してると思うの。

 隠してるって言うか……。きっとみんなは……言えないんじゃないかって……」

「フィー……」

「だから私は……お父さんとお母さんに何があったのか、それを知りたい……。もう私も大きくなったし、もう……コドモじゃない。

 今は……ジコウの事で色々あって、それどころじゃないけど……。これが片付いて……落ち着いたら……、私は……調べてみたい。お父さんとお母さんの事……」


 暗い顔でそう言いながら、フィーはショーナへと目を向けた。それを聞いたショーナは、微笑んで彼女に返す。


「……オレも手伝うよ」

「えっ……?」


 彼の言葉に、フィーははっとして顔を向ける。


「何て言うか……、オレも気になるし……」

「聖竜サマ……」

「それに……、フィーの気持ちは……オレも少し分かるんだよね……。オレも……小さい頃から、自分の父親とは会った事が無いし……」

「……それ……知らなかった……」


 ショーナの境遇を初めて聞いたフィーは、少し寂しそうな顔をしてぽつりと呟いた。彼女はこれまで、ショーナは両親に恵まれた環境で育っていたものとばかり思っていたからだ。それは、彼が「長の子」として砦で過ごし、周囲のドラゴンから「聖竜様」と呼ばれ、親しまれていた事によるものでもあった。

 そんなフィーの気持ちを知ってか知らでか、ショーナは一呼吸置いてから彼女に微笑んで続ける。


「だからさ、落ち着いたら一緒に調べてみようよ、両親の事。……オレも、いつかは自分の父親の事、調べてみようと思っていたし……」

「……そうね……」


 彼の言葉を聞いたフィーは、微笑みながら鼻で小さくため息を吐き、相づちを打った。そして彼女は一呼吸置き、ショーナを見つめて声を掛ける。


「……ありがと、聖竜サマ。……話せて良かった」

「……オレもそう思うよ」


 ショーナの返事を聞くと、フィーは気まずそうに少しうつむき、目を逸らして彼に言う。


「その……何かごめんね、折角来てくれたのに、こんな話して……」

「いや、気にしないでよ。オレも……フィーの事、色々聞けて……良かったと思ってるし……」


 ショーナは少し照れくさそうに顔を逸らし、最後は少しぼそぼそと声にしていた。そんな彼に目を向けたフィーは、彼の顔が少し赤くなっているのを見て、微笑みながら呆れ気味に口にする。


「……聖竜サマって……本当に真面目よね……」

「……そういう性分なんだよ……。昔からね……」


 相変わらず照れくさそうに顔を逸らしながら、ショーナは目だけをフィーに向けて言葉を返した。そう言葉を交えた彼らは、互いに一度目を逸らすと鼻で小さくため息を吐き、一旦間を開けた。そして気を取り直した彼らは再び顔を向け合うと、フィーから先に口を開いたのだった。


「……さぁ、もう寝ましょ? 明日も色々やる事あるんだし」

「……そうだね」


 二頭は言葉少なに会話を終え、互いに向かい合う様に顔を下ろして丸くなる。


「おやすみ、聖竜サマ」

「……おやすみ、フィー」


 微笑んで挨拶をした二頭。ショーナの返事を聞いたフィーは、自身の尻尾を壁にある魔石にかざし、部屋の明かりを消す。小窓から星明りが射し込む中、二頭は眠りに就いた。




 翌朝――


「ふあぁぁぁぁ~~~~…………おわっ!!」


 部屋の小窓から入る朝日で目を覚ましたショーナは、大きくあくびをしていた。しかし彼は、起きてすぐ目に飛び込んできた光景に驚き、大きな声を出しながら思わず顔を引いてしまう。

 彼が目にしたのは、自身の目の前に迫るフィーの顔だった。彼女はショーナの側に立ち、彼の顔に触れんばかりの近さまで顔を近付けて、微笑みながら彼の事を見つめていたのだ。

 目を覚ました彼に、フィーは一言挨拶をする。


「おはよ、聖竜サマ」

「えっ!? あ……、お……おはよう、フィー……」


 ショーナは顔を赤くし、動揺しながら挨拶を返すと、


(び……びっくりした……!)


 声に出さない様に、少し顔を引きつらせながら目を見開いていた。そんな彼を見て、フィーはにやりと流し目を向けつつ言う。


「聖竜サマって、かわいい顔して寝るのね」

「い……いや……! 誰だって寝顔はかわいいものでしょ……!」


 動揺して返すショーナに、フィーは「ふっ」と鼻から一息吹き出して笑うと、


「そんなに驚かなくたっていいでしょ? ドラゴン好きなくせに」


 そう言いながら、振り返って食料を保管してある容器へと歩く。彼女の背中を見ながら、ショーナはまだ赤みの残る顔を右手の指で掻いていた。

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