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竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


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『行方不明者』 その8

 ひとしきり大笑いして満足したエイラは、落ち着きを取り戻していた。彼女は満面の笑みをショーナに向けて口を開く。


「フフ……。それにしても、ショーナは忘れちゃったんですか?」

「えっ……? 何を……?」

「フフ……。ショーナはフィーと出会って、もう十年経つんですよ?」

「それは……覚えてるけど……」


 エイラの言葉に、少し恥ずかしそうに答えるショーナ。


「それに、『フィーを守る』って言って、もう五年ですよ?」

「それは……その……」

「フフ……。この調子だと、百年経っても告白してないんじゃないですか?」

「いや、さすがにそれは……」


 満面の笑みで言葉を重ねるエイラに、ショーナは気まずそうに右手の指で顔を掻き、答えていた。


「フフ……。母さん、ショーナがフィーの事『好き』って知った時、もっとぐいぐい行くものとばかり思っていたんですけど……」

「ぐ、『ぐいぐい』って……」

「だって……好きなんでしょう? フィーの事」

「そ、それは……」


 ショーナは赤面し、気まずそうに目を逸らすと、その続きを口にした。


「だ、だって……。恋愛って……オレだけの都合じゃないし……。相手がいる事だから、オレの気持ちだけで進む事じゃ……」

「じゃあ、フィーの気持ちを聞いてみればいいじゃないですか」

「えっ……!?」

「ショーナは聞いた事があるんですか? フィーの気持ち」

「い、いや……それは……」


 エイラの唐突な問いに、ショーナは動揺して目を泳がせながら言葉に詰まってしまった。当のエイラは相変わらず満面の笑みを向け、彼に言葉を掛ける。


「フフ……。無いんでしょう? 聞いた事」

「…………」

「……でも、聞くまでも無さそうですけどね。フフ……」

「か、母さん……!」

「だって、見てれば分かるじゃないですか。あなた達が、もう両思……」

「母さんっ!!」


 ショーナは恥ずかしさのあまり、目をぎゅっとつぶってエイラの言葉を大声で遮っていた。そんなショーナを見て、エイラは……


「フフ……フフフフ……。アハハハハハハッ!」


 またも腹を抱えて大笑いしだしてしまった。それを見たショーナは、真っ赤になった顔を右手で押さえて、顔を逸らしながら大きくため息を吐いた。


(オ……オレだってさ……。いつかはちゃんと……フィーに言わないといけないと思ってるけどさ……)


 ショーナがそんな事を考えていた時だった。エイラが笑いながら途切れ途切れに声を掛けた。


「ショーナは……ドラ……フィーの事……大好きなのに…………。そんなに……恥ずかしがる……事なんて……。お腹痛い……」

「…………」

「かあさんは……もっとはやく…………こくはくするものと……ばかり……。お……おなかいたい……」

「…………」


 エイラの言葉にショーナは何も返す事が出来ず、まだ赤い顔を右手で押さえたまま、苦々しい表情をしながら横目で彼女の事を見ていた。


(『告白』……か……。それは……分かってるんだけど……)


 そう思いながら鼻で小さくため息を吐き、ショーナはゆっくりと右手を下ろす。


(フィーの事は好きだけど、オレが告白して……もし拒絶されたら……。今の関係が壊れてしまうんじゃないかと思うと……。それが……怖い……)


 ショーナは恐れていた。この集落で同い年の異性はフィーだけであり、幼馴染みとして一緒に過ごしてきた彼女が、もし万が一にも自身の事を拒絶したらと思うと、とても告白など口に出来なかったのだ。

 彼がそんな事を考えている間に、エイラは落ち着きだしていた。彼女は満面の笑みを向け、再び口を開く。


「母さん、孫の顔は簡単に見れると思っていたんですけどね。フフ……」

「か、母さん……」

「それに……」


 気まずそうに一言返したショーナだったが、ここでエイラは言葉を区切ると表情を一変し、今にも泣き出しそうな顔をして、右手で涙を拭う仕草をしながら悲しそうに言う。


雲孫(うんそん)が見れると……楽しみにしていたんですが……」


 エイラはそう言うと、涙を拭う仕草はそのままに再び表情を一変し、微笑んでショーナに目を向けてから、舌を出して自身の口角をぺろりと舐めた。そんなエイラを見たショーナは、苦笑いをしながら右手の指で顔を掻き、


(母さん……、ウソ泣きにはまってるのかな……)


 そう思ってから、エイラに問い掛ける。


「え~っと……、うん……そん……?」


 ショーナの問いを耳にしたエイラは、右手を下ろして満面の笑みを向けると、その問いに答える。


「フフ……。雲孫は、『孫の孫の孫の孫』の事ですよ、ショーナ」

「えっ……? ま……何? 今、孫って何回言った……?」


 エイラの言葉に、ショーナは少し困惑気味に問い直していた。


「フフ……。そもそも、ショーナは子孫の言い方、どこまで知ってます?」

「えっ……? う~ん……それは…………。子、孫、ひ孫、玄孫(やしゃご)……かな」

「フフ……。珍しく勉強不足ですね、ショーナ」


 満面の笑みで言うエイラに、ショーナは未だ困惑気味な顔をし、その顔を右手の指で掻きつつ思う。


(ま、まぁ……そもそも人間の時は、ひ孫だってなかなか……。玄孫なんて見れるかどうかだし……。

 歴史とか好きだったら、そういう言葉も知ってるかもしれないけど、オレは……歴史ってあんまり興味無かったしなぁ……)


 そんな事を思っていると、エイラが先の話しの続きを口にしだした。


「玄孫の次は来孫(らいそん)、その次は昆孫(こんそん)、その次は仍孫(じょうそん)、そして……雲孫です。

 雲孫が見れるドラゴンって、なかなかいないんですよ」


 満面の笑みで言ったエイラの言葉に、ショーナは少し顔をしかめて考える。


(雲孫……か。まぁ、この世界のドラゴンって十歳でオトナになるし、寿命は二百歳だし……。順調に子孫が残せれば雲孫を見る事は出来るだろうけど、パートナーだって見付けないといけないし、簡単ではないだろうなぁ……)


 そう思っていたものの、ここでふと「ある事」に気付いたショーナは、苦笑いをして右手の指で顔を掻く。


(でも、そうなると……母さん含めて九世代の家族になるのか……。凄い大家族になるな……)


 ショーナがそんな事を考えているとはつゆ知らず、エイラは満面の笑みを向けて口を開いた。


「だからほら! ショーナも早くフィーとくっついて、子作りしちゃいましょうよ! ショーナだって、自分のコドモは欲しいでしょう?」

「ちょ、ちょっと母さん……!」

「ショーナのコドモがパートナーを見付けて、それで子作りすれば……、ショーナにも孫が出来るんですし!」

「か……母さん! 話が先走りすぎだよ! そんな先の事……」

「あら! 『そんな先』じゃないですよ? だって、ショーナはフィーと出会って、もう十年になるんですし。あっという間ですよ」

「…………」


 少し赤い顔をしながら受け答えをしていたショーナは、最後にうなりながらため息を吐いて右手の指で顔を掻く。そして少し間を空け、彼は気を取り直して話し出した。


「それにしても……。母さんってさ……好きだよね、恋愛話……」

「フフ……。まぁ、ショーナに関してはそうですね」

「オレに関しては……? 母さんの子だから……?」

「フフ……」


 ショーナの問いにエイラが答える事は無く、彼女はただ満面の笑みで静かに笑うだけだった。彼はその事を特段気にする事は無かったが、ここ数日の事を思い出して彼女に問う。


「でも、ここ最近色々あったのに、よく……そんなに……恋愛話とかで大笑い出来るよね、母さんって……」

「フフ……。ほら、よく言うじゃないですか」

「『それはそれ、これはこれ』……って?」

「フフ……。ショーナもよく分かっているじゃないですか」

「まぁ……母さん、よくそう言うからね……」


 ショーナは少し呆れながら苦笑いをし、彼女に返していた。

 ここでショーナは一呼吸置くと、今一度気を取り直して、改めて話し出す。


「じゃあ、オレはそろそろフィーのうちに行くからさ。……フィー、多分待ってると思うから」

「フフ……。分かりました」


 エイラの相づちを聞いたショーナは、ここで先手を打つ事にし、苦笑いしながら言う。


「あ……それと……。『出来パ』は無いからね? 変な期待しないでよ?」

「あら……。それは……残念ですねぇ……」

(……やっぱり、最後に言う気だったんだな、母さん……)


 エイラが笑いながら答えた事で、ショーナは彼女の胸の内を察し、苦笑いしながら右手の指で顔を掻いた。そして鼻で小さくため息を吐いてから右手を下ろすと、彼女に微笑んで一言言う。


「じゃあ、行ってきます」

「フフ……。行ってらっしゃい、ショーナ」


 挨拶を終えたショーナはエイラの部屋を後にし、急ぎ足で砦を出ると、フィーの家へと走った。

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