表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜好きのオレ、ドラゴンの世界に転生して聖竜になる。  作者: 岩田 巳尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/125

『行方不明者』 その6

「ジコウの前世については、今は置いておくとして……。そもそも、ジコウの『戦う理由』が、『ドラゴンを倒す事』じゃなかったら……?」

「えっ……? だって……」

「さっきのフィーの話もそうだけど、オレ達は……『ジコウの前世は人間だった』と仮定した話を、そのまま引きずって色々と考えてたんだよ。

 だから、ジコウの『戦う理由』も、『ドラゴンを倒す事』って思い込んでいた。……いや、思い込んでいたというより、そうである様に話が進んでいた。

 でも、その『戦う理由』が違った時……」

「……! 『行動理由が変わる』……って、言いたいの……!?」

「あぁ……!」


 フィーは目を丸くして驚いていたが、ショーナは目に力を込めて返事をしていた。そして彼は続ける。


「ジコウの言っていた『戦う理由』が変わったら、行動の根本から見直さないといけなくなる。

 ジコウは多分……友好派に向かったとは思う。これまでの事から、そこは堅いハズだ。ただ……『ドラゴンを倒す為』って考えが違った時、それを考え直さないといけない」

「でも……じゃあ……」


 ショーナの説明を聞き、フィーは戸惑って言葉に詰まってしまった。ただ、それはショーナも同じだった。彼もそれ以上、その先まで考えが至らなかったのだ。


「……オレにも……分からない……。あいつの言う『戦う理由』は……見当も付かないし……。そもそも、何に対して戦うのかも分からないし……。

 ただ、一つだけはっきりしたのは……、あいつは『友好派のドラゴンを倒そうと考えている訳じゃない』って事だと思う。もしそうなら……さっきオレが言った様に、幼いドラゴンから狙った方がいい。その方が安全に、より多く……倒す事が出来ると……オレは思う……」


 最後は顔をしかめ、不快感をあらわにして言ったショーナ。その言葉を最後に、部屋は静寂に包まれた。互いに何を口にすべきなのか思い付かず、両者は気まずそうにうつむいて黙り込んでしまった。

 そこでショーナはふと、右手に持っていた木の実に目をやり、それを手にしている事を思い出した。彼は何気無くそれを口へと運び、半分程かじる。すると……


(うわっ! あっま……!)


 目を見開いて、右手に持った木の実を見つめる。


(書物で『甘い』って事は知ってたけど、こんなに甘いなんて……)


 初めて口にする木の実の味に、ショーナは驚いていた。そんな彼を目にし、フィーが一言問い掛ける。


「どうかしたの?」

「えっ? あ、いや……。結構甘いな……って」

「そう? 美味しいでしょ、それ」


 木の実を飲み込み、フィーの問いに苦笑いをしながら答えたショーナ。微笑んで返すフィーの言葉に、ふと思った事を彼女に問う。


「フィーってさ……。普段、どんな食事してるの?」

「えっ?」

「いや、野営訓練の時にも聞いたけど、その時は……魚の話で聞けなかったからさ。普段、何食べてるのかと思って」

「何って……、その木の実だけど?」

「えっ……? これ……?」


 ショーナは目を丸くして、食べかけの木の実を前に出して質問していた。


「そう、それ」

「……他には?」

「たまに……湖で魚を獲って食べるけど、普段はその木の実だけ。……だって美味しいし」

(すっごい偏食だなぁ……)


 フィーの答えを聞き、ショーナは苦笑いをしながら左手の指で顔を掻く。


(まぁ、フィーって幼い頃に両親がいなくなってるから、食べ物も……好きな物だけ食べる様になっちゃったんだろうな……。栄養バランスとか大丈夫なのかな……)


 そう思いつつ、残りの半分を口へと放る。


(そういえば……。この木の実の甘い香り……、どこかで……)


 木の実を噛み締めながら、顔と目を少し上へと向けて考えるショーナ。その疑問はすぐに答えが見付かり、彼は内心で驚いた。


(そっ……そうだ! この香り……フィーだ! フィーっていつも、かすかに甘い香りがしていたけど……、もしかしてそれって……この木の実のせい……!?)


 木の実を飲み込んだショーナは、少し顔を引きつらせて斜め下へと顔を向け、右手の指で顔を掻きながら、更に考えを巡らせた。


(まぁ、食べ物が匂いに出るって事はあるらしいし、さっきの話だと……フィーって、この木の実ばっかり食べてるらしいし……。有り得るかも……)


 ショーナがそんな事を考えているとはつゆ知らず、フィーは彼の様子を見て少し表情を曇らせると、首をかしげて問い掛ける。


「……やっぱり、口に合わなかった?」

「えっ……!? いや、そうじゃないよ……。ちょっと考え事……」

「……聖竜サマって、いっつも何か考えてるわね。……疲れないの?」

「……疲れる」


 呆れながら問うフィーに、苦笑いをして答えたショーナ。


「じゃあ、考えなければいいのに。……前にも言ったけど」

「そういう性分なんだよ。……昔からね。……前にも言ったけど」


 互いに分かり切った言葉を交わした二頭は、微笑んで見つめ合っていた。そして、同時に「ふっ」と一息鼻から吹き出して笑うと、両者は微笑んだまま今後の事について話を始める。


「それで? 細かくて考え事が多い聖竜サマは、明日……どうするの? 集落から出られないから、捜索には行けないわよ? それとも、ジャック隊長の『お願い』を無視して、捜索に行くつもり?」

「いや、捜索には行かないよ。ジャック隊長は……オレ達の事を信じてくれている。頭まで下げられたのに、()を通す様な事をすれば……ジャック隊長に失礼だ。

 ジャック隊長が『礼節』を大切にするなら、オレもそうする。……ジャック隊長の気持ちを無下には出来ないよ」


 ショーナの返答を聞き、フィーは微笑みながら目を閉じて、再び鼻から一息吹き出して笑うと、少し上目遣いにショーナを見て一言呟く。


「……聖竜サマって、本当に真面目よね」

「……繰り返しになるけど、そういう性分なんだよ。……昔からね」


 フィーの呟きにショーナは微笑んで返すと、先の話の続きを口にする。


「それで、明日の事だけど……。オレは書庫に行こうと思ってる。ちょっと確認したい事があるからね」

「いつ行くの?」

「う~ん……。まぁ、昼過ぎでいいかなって思ってる。ゼロ司令が戻るまでは……ジコウの事は分からないし、明後日以降の事も決められないし……。それに……明日のいつ、ゼロ司令が戻るかも分からないし……。

 昼過ぎに書庫に行って、それからジャック隊長の所に行って、諸々(もろもろ)の話を聞こうと思う」

「じゃあ、私も行く」

「えっ……!?」


 思い掛けないフィーの言葉に、ショーナは目を丸くして驚いていた。彼は一呼吸置き、フィーを気遣って言う。


「一緒に行くならジャック隊長の所だけでいいよ。書庫はオレの都合だしさ……。フィーは休んでて……」

「ほっとけないでしょ? 聖竜サマ、『隊長』なんだし。……それに退屈だし」

「…………」


 自身の言葉を遮り、端的にはっきりと訴えたフィーの言葉を聞き、ショーナは苦笑いをしてため息混じりにうなる。そして、苦笑いしたまま右手の指で顔を掻き、フィーに付け足す。


「捜索に出る訳じゃないから、『隊長』ってのは……そんなに気にしなくても……」

「……だとしても、退屈なのは変わらないでしょ?」

「それは……まぁ……」


 押しの強いフィーの言葉に、ショーナは言葉に詰まりながら相づちを打ち、


(でも……、昔からフィーって……書庫でも退屈してる様な……)


 そう思いながら鼻で小さくため息を吐くと、渋々承諾する事に。


「じゃあ……、書庫にも一緒に行こう。その後に……ジャック隊長に話を聞きに行く。

 明日は昼過ぎに、書庫前に集合しよう。それでいい?」

「えぇ」


 フィーが微笑んで快諾したのを見て、ショーナは苦笑いしながら安堵し、再び鼻で小さくため息を吐いた。

 これで話すべき事を話し終えたと思ったショーナは、ここで切り上げる事にし、ゆっくり立ち上がりながらフィーに声を掛ける。


「よし……。じゃあ、そろそろオレは帰るから……。また明日、書庫前で……」


 ショーナがそう言い切るのを待たずにフィーは声を発し、彼を呼び止める。


「ねぇ、聖竜サマ」

「ん?」

「折角だし……。今日、泊まっていかない?」

「えっ!?」


 にやりとして言うフィーの言葉に、ショーナは顔を真っ赤にして固まってしまう。


(な……何となく言ってくるだろうとは思っていたけど、やっぱり言ってきたか……)


 少し動揺しながらも、以前とは違ってショーナには考える余裕があった。それは、砦にフィーを泊めて一緒に寝たという経験があっての事だった。


「それは……その……」

「…………」

「フィーが……そう言うなら……」


 ショーナは気まずそうに目を逸らし、右手の指で顔を掻きながら小声で答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ