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43.交わらない線

 のんきな声とは裏腹に、その表情は厳しい。


 セリウスの方を一瞥し、次いでリタとステファンに視線を送った後、エヴァンスは足早に彼らのもとに歩み寄る。


 走ることはなく、しかし急くようなその足取りには、状況を急ぎ整理したいという意図が見て取れる。


 「説明しろ」 、とエヴァンスは簡潔に求め、リタは頷きながら端的に、かつ正確にお嬢様の身に起こった出来事を話して聞かせた。


 リーザス卿という軍の関係者が来たこと、連行する際の書状に関してお嬢様が珍しく食い下がったこと、ヴァネッサのこと、薬草園が毒草を育てていると言われていること。ナイトシェードという聞いたことのない名前の植物のこと。


「困ったことになりましたね」


 状況があらかた把握ができたため、一旦は落ち着いたのだろう。


 セリウスが水色の相貌を鋭く細める。


 エヴァンスはその顔を見て両肩を竦めた。さっきまで、まるで人を射殺せそうな殺気を放っていた男が、何を言っているんだかという表情だ。


「どうにかお嬢様を助けることはできませんか?」


 リタの懇願はもっともだったが、エヴァンスは腕を組みながら答える。


「俺たちは二人とも、既に退役して軍を離れている以上、直接介入することはできない。それに貴族だからと圧力をかければ後々面倒くさいことになる」


 唯一期待をしていたエヴァンスのその言葉に、リタは裏切られたような心持ちになり、ふらりと足元をふらつかせた。その肩を隣のステファンがそっと押しとどめる。


「お嬢様は無罪です。そんなことをする方ではありません」


「それは俺もよくわかってるよ」


 エヴァンスが同意を示すものの、顔には深い疲れが浮かんでいる。


 アルヴィスを取り巻く現状がわかっているとしても、依然として四面楚歌の状況には変わりがなく、誰もがその手詰まり感に絶望的な表情を浮かべていた。


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