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猫耳と王冠  作者: クーアウコ
第二部
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13話 交流会

「離し…なさい!!」


 フロートは再びグリムの顔を右手で殴る。

 その拍子でマインドメルトの小瓶が割れた。


「あ…」


 マインドメルトはあっという間に気化し、赤い霧となり向かい風により自分たちがやってきた森の方へと飛んでいった。


 そこに追いかけてきたエリックが来た。


「エリックー!!霧を避けろ!!それから引き返して、皆に伝えてくれ!!霧を避けろと!!」


 とてつもなく嫌な予感がしたグリムはとっさにそうエリックに声をかける。

しかし手遅れのようで霧に触れ、エリックは一瞬のうちに気を失い、地面に倒れた。


 ふとフロートの方を見ると、悶え苦しんでいた。


「クカカ……カ……マインド……が……メルト……スル……」


「おい、お主…大丈夫か!?」


 大丈夫じゃないのは一目見れば分かる。

 ひとまずフロートをおいて、森の方へ駆け出した。


 人格を入れ替える薬…それを、不特定多数が一斉に飲んでしまったら…不特定多数が交流してしまったらどうなるのか。

 グリムはその答えをまだ知らなかった。








 森に戻ろうすると、追いかけてきた少年と遭遇した。

 少年は霧を吸い込まずに済んだのか、無事でいる。


「少年か!!マインドメルトを不特定多数が吸い込んだらどうなる!!」


「さ、さぁ……そんな事考えたことも……」


「わからぬならいい!!この先に苦しんでいるエリックとフロートがいる!!見てやってほしい!!」



 そう少年に告げ別れた。グリムが森に帰ると、フロート達のようにトロルと猫耳族、そして人間が見境なく苦しんでいた。

 やがて皆、意識を失った。

 恐怖したアンミストがやってきて、グリムにしがみついた。


「グ、グリムちゃん…皆が突然苦しみだしたの……ボク、怖い……!!」


 そして赤い霧が生き物のように形を変え、人の形となっていた。


「なんだこの塊は…」


 グリムとアンミストは得体のしれない赤い塊に恐怖していた。


『知りたいか?』


 その赤い煙は、脳内に直接語りかけてきた。


『我が何者か答えられれば、そこの倒れている者たちを開放する事を考えてやろう』


「き、貴様がなにかしたからこうなったのか?」


『我は何もしておらぬ…だが原因は我にあるとも言えよう』


「貴様の正体は……そう、マインドメルトだ!!」


『当然の回答だが、それではつまらぬ。マインドメルトはただのきっかけであって我ではない。5分やろう。我は「はい」「いいえ」「どちらでもない」で答える。見事当ててみせよ。回答は一人1回。お前たち両方が失敗すればこの者たちの意識はいただく』


「そんな……」


 グリムとアンミストは真っ青になった。眼の前で倒れている大勢の人々が自分の回答一つで死んでしまう。


 だが二人は、その赤い霧のルールに従うしか無かった。


「お、お前は男だ」


『どちらでもない』


「お前は人間だ」


『どちらでもない』


「お、お前は悪魔だ」


『どちらでもない』


「お前は動物だ」


『どちらでもない』





 ……ことごとくの質問を「どちらでもない」と答える得体のしれない物体にグリムはますます戦慄した。


「き、貴様は真面目に質問に答える気があるのか」


『これでも大真面目にやってるんだがな』


「何者であるか…その回答は用意されてるのか?私が何を言っても首を横に振るつもりだろう…!?」


『そんな無慈悲なことはせぬ』


「では…貴様は何なのだ!?」


『だから、それを当ててみよ』


 傲岸不遜なその態度。グリムはなんとしてもその鼻を明かしてやりたくなった。


「貴様は…生きている存在か?」


『どちらでもない』


「幽霊なのか?」


『どちらでもない』


 刻一刻と時間は迫っている。

 もうすぐ5分が経過してしまう。


「何者でもあって、何者でもない…分からぬ」


「グリムちゃん…ボク、分かったかも」

 アンミストがグリムの前に立つ。


「アンミスト…」


「グリムちゃんには分からなくてもボクには分かる…」


(私に分からなくて、アンミストには分かるだと…)





「そう、あなたの正体は…神。人であって人ではない、上位の存在。

 常にどちらでもないと答えたのはそれが原因。

 ボクはグリムちゃんと違って神を信じているから、ピンときた」


 グリムは驚き竦み上がった。


「ま、まさか……」


 ところがこの回答に対して赤い霧は……


『50点だな』


「うう…半分正解ってこと?」


『もう一人の答えはどうなんだ?』


 赤い霧はグリムに答えを急かす。









「……どこかの文献で読んだことがある。

 様々な人の知性を蓄積すると、優れた知性が登場する、と。

 だがお前は神に近い存在ではあっても神そのものではない」


『ほお。なかなか良いぞ。続けろ』


「お前は様々な人間である」


『そのとおりだ』


「お前にも分からないことがある」


『そうだな』


「だがお前は完璧に近い知識を身に着けている」


『その通りだ』


「人であって人ではない、人を超えた存在…お前の正体は『集合知』」

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