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猫耳と王冠  作者: クーアウコ
第二部
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12話 防衛機制

 エリックはハッとし、フロートを追いかける。


「王様ー!!フロートを捕まえてくれ!!マインドメルトを取られた!!」


 会場に居たグリムがエリックの方を見て、とっさに状況を察する。


 グリムはフロートを追いかけ始めた。


 ゴブリンや猫耳族とただの人間の瞬発力の差は明らかで、エリックはどんどんおいていかれる。


「何故だ!!何故アンタは……グリムと身体交換すればいいだろう!!」


「冗談じゃないわ、あなたもルールは聞いてたでしょう!?マインドメルトは一人1回よ!!そんな無駄なことに付き合ってられないわ」


「じゃあどうする気……だ……」


 そこから先のフロートの発言をエリックが聞くことは出来なかった。




 グリムは森の中、フロートを追いかけ、とうとう川のほとりまで追い詰めた。


「はぁ……はぁ……返せ……!」


「冗談じゃないわ!!誰があなた達に渡すもんですか。

 あなたたちだって叶えたい願いの一つや二つあるでしょう!?

  あたしにとってはこれがそうなのよ!!この小瓶で私は人生をやり直すの!!


「お前はトロルの森での暮らしを気に入ってたんじゃないのか!?」


「それこれとは話が別よ!!

 確かにあの森の暮らしはそれなりに気に入っていたけど、

 猫耳の体とどちらがいいかと言われたら断然猫耳の方よ!

 ふわふわしたピョコピョコ動く猫耳。

 光を吸い込むような、それでいて潤んだ可愛らしいまん丸の瞳。

 思わず頬ずりしたくなる、しなやかでやわらかいお腹。

 肉球のプニプニ感がたまらない、思わず押したくなるふにふにの手と足!

 気まぐれに揺れる、愛らしいくるんと丸まる可愛らしい尻尾!!

 小さくて可愛いのに、生物として完璧なネオテニー。

 猫耳のあなた達はあたしにとって理想なのよ!!

 あたしは酸っぱいブドウをしてただけなのよ!!


 トロルの森での生活も、まあ悪くはなかった。

 自然に囲まれて、動物たちと触れ合って、

 心穏やかに過ごせたのは確かよ。

 でもね、グリム。

 あそこで暮らしているうちに、

 どんどん自分の醜さが際立って見えてきたの。

 あなたたちの無邪気で愛らしい姿を見るたびに、自分の姿とのあまりの違いに絶望的な気持ちになったわ。

 ああ、私はなんて醜いんだろう。

 なんて可愛げがないんだろうって。

 そう考えるうちに、森の動物達の私を見る目も変わった気がした。

『また来たよ、あの化け物』

『気持ち悪い』

『あんな顔、見たことない』

 そんな声が聞こえてくるような気がして、

 毎日針で刺されるような痛みに耐えていたわ。

 それが辛くて、悲しくて、

 毎日泣いて過ごしたわ。


 手に入らないから要らないと言い、欲しくないふりをする!!

 手に入らないから!!要らないと言い、欲しくないふりをする!!!!

 そんな生活、私にはもう耐えられない。

 やっぱり私は、おしゃれがしたい。

 それに猫耳の可愛い姿で、みんなにチヤホヤされたい。

 あなたには分からないだろうけどね」



グリムは愕然とした。


 ――そんな事を考えながら暮らしてたのか…――


「いや、分かるさ……私も似たようなことをやろうとした」


「じゃあ、あたしの気持ちも」


「その時、友が止めてくれたんだ……わたしも、それに倣いたい!!」


グリムはフロートに飛びかかった。


フロートは思わず左手でグリムの顔を殴る。


「来ないで……!!」


 殴られたグリムはやり返さず、フロートの両手を押さえつける。

 フロートの右手に握られた小瓶の中身がたぷたぷと揺れ動く。


「その時彼女は言った!!やれることを全部やってからにして、今のボクたちにできることを考えて、と。」


フロートに馬乗りになり、グリムは続ける。


「お主にも言うぞ。やれることを全部やってからにするのだ!!嫌がる人間に薬を無理やり飲ませて体を奪うのは止めるのだ!!」



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