11話 当日2
「な、何を言ってるんですかエリックさん?僕は男ですよ」
「インク本人が女とは限らない。実は男で、少年のアンタに化けた…というのは冗談だ」
「なんだ冗談ですか…何を言い出すかと思いましたよ」
少年はホッとした様子だった。
「アンタはマインドメルトの検証のために、ヴォルグラスの居た廃墟のマインドメルトを拝借して実験した。あの城には薬があった跡があったからな。
だが身体交換したは良いが、何らかの理由で3分以内に薬を再度飲めず、うまく元の体に戻れなかった。
薬の知識にボロが出ることを恐れ困り果てたアンタらは居留守を使った。
急用などと言ったが何日経っても戻らないのも、ボロが出ることを恐れ理由を曖昧にしていたからだ」
「な、何を言ってるんですか?」
「初見で俺がエリックだと名指しできたのもそれが理由だ。更にアンタは高価な本を何の躊躇もなく俺に渡してくれた。アンタの正体はインクさんだ」
少年は諦めたようにため息をついた。
「やれやれ。……仮に私がインクだとして、それでエリック、君は何を得ようというのか。
証拠も何も無い、ただの妄言だろう?それに私は悪いことは何もしていないよ」
「マインドメルトの残薬が欲しい。それでグリムとフロートが納得するならそれでいい」
「……しかたないね」
少年は胸ポケットからマインドメルトの残薬を取り出した。
「ほら、謎解きのご褒美だ」
そこに…
「もーらい!!」
木の陰からゴブリンのフロートが飛び出してきて、マインドメルトの残薬を強奪した。




