10話 当日
グリムは、猫耳族との交流を円滑に進めるため、様々な準備に取り掛かった。
まずは、交流会の準備を進めた。今回は、トロル族と猫耳族がより自然な形で交流できるよう、会場を野外に設けることにした。
木漏れ日が差し込むトロルの森の中に、両族の文化や歴史を紹介する展示スペースや、特産品や技術を紹介するブースが設けられた。また、両族が共に食事を楽しめるようテーブルを用意し、特産品を使った料理を提供する屋台なども用意された。
さらに、交流会を盛り上げるための様々なイベントも企画された。両族の伝統芸能を披露するステージや、子供たちが一緒に遊べる遊具コーナーなどが盛り込まれた。
着々と準備が進む中、グリムは猫耳族との交流が待ち遠しくてならなかった。
交流会当日。
晴天に恵まれた会場は、多くの人々で賑わっていた。トロル族と猫耳族の人々が入り混じり、互いに興味津々だった。
アンミスト以外にも人間の通訳が3名居て、忙しなく両者の通訳をしていた。
エリックも来ていて、展示されている武器や防具に興味津々だ。
グリムは、開会式で挨拶を行い、猫耳族との交流に対する期待を述べた。
「本日、猫耳族とトロル族の交流会が開催されることを大変喜ばしく思う。
長年……私たちは互いを隔絶し、理解しようとしなかった。
しかしこれからは互いの文化や歴史を学び合い、理解を深めることでより良い関係を築いていけると信じている。
この交流会が、両族の友好を深めるための第一歩となることを願っている。」
その言葉に、会場からは大きな拍手が沸き起こった。
「アンミストお姉ちゃんがトロルの王様ってどういう事?」
前に里に訪れたときの少年レオが近づいてきて、グリムにその疑問をぶつけた。
グリムは素直に白状した。アンミストとは身体交換をしていること、そしてそのアンミストは今会場で通訳をして双方のコミュニケーションを円滑に保つ作業をしていること。
イマイチ納得いかない顔でレオはアンミストのところに行く。
交流会では、両族の歴史や文化、特産品、技術などについて様々な発表や展示が行われた。
猫耳族からは、薬草に関する知識や自然と共生する文化などが紹介された。トロル族からは、鍛冶技術や独自の文化などが紹介された。
会場には、インクの屋敷で会った例の少年も来ていた。
少年を見つけたエリック。
「アンタ……インクさんは大丈夫なのか?」
「えぇ、一度帰ってこられ、今日の交流会…特に猫耳族に伝わる薬草やその調合を見てきて欲しいと言われたので、僕がこうして来ている次第です」
「…アンタ……実はインクさんだろ」




