7話 交流
後日、グリムは猫耳の里と交流・貿易が出来ないか外交文書を送った。
文書はギルドを通してエリックが届けてくれたようだ。
猫耳族の長老たちは、突然のトロル族からの申し出に戸惑いを隠せなかったようで、何故これまで交流がなかったのに急に交流を持ちたいのか、詳しく話を聞きたいとの事。
グリムは指定された日時に、トロル2人とアンミストを連れ、再び猫耳の里へと赴く事となった。
猫耳族の長老たちが集まる教会に入ると、多くの猫耳たちが神妙な面持ちでグリムたちを出迎えた。中央には、特に威厳を放つ数人の猫耳が座っている。彼らが長老たちであろう。
グリムは長老たちに挨拶をすませたが、長老たちから当然の疑問があがった。
「待ってくれ。お主がトロル族の長だと申すか?そこの二人のトロルではなく?」
「ああ、私がグリム・スヴェン・フォレスだ」
長老たちは、目の前にいる猫耳の生えた少女が本当にトロル族の長であることに、驚きを隠せない様子だった。
「しかし……お主は、どう見てもトロルには見えんが……」
長老たちの言葉に、グリムは苦笑いを浮かべた。
グリムは自身の過去について語った。
「私はもともと、普通のトロルだった。悪趣味な魔法使いの悪戯で、姿を変えられてしまった。それからひと悶着あり、王の座に戻ってくることが出来た」
教会がざわつく。
「詳しい話が聞きたいなら後にしよう。今は、皆様との交流・貿易についてお話したい」
グリムは、自身の過去について詳しく話すことを後回しにし、まずは今回の訪問目的である、猫耳族との交流・貿易について話し始めた。
「私は、猫耳族と交流することで、互いの文化や特産品を交換し、新たな発見や技術を生み出すことができるのではないかと考えている。また、交流を通じて互いの理解を深めることで、長年の隔たりを解消できるのではないかという期待も抱いている」
グリムの言葉に、長老たちは興味を示した。
別の長老が問いかけた。
「具体的に、どのような交流を考えているのか聞かせてほしい」
グリムは答えた。
「まずは、互いの文化や歴史について学び合うことから始めたいと思う。
そして、特産品や技術の交換を通じて、互いの生活を豊かにできればと考えている。」
「なるほど……文化交流とは、具体的にどのようなことを考えているのですか?」
グリムは、事前に考えていた計画を説明した。
「まずは、お互いの国の歴史や文化について学び合うための交流会を開催したいと考えている。
猫耳族の歴史や文化について我がトロル族に教えると共に、トロル族の歴史や文化について猫耳族に教えたいと思ってている。
また、お互いの国の特産品や技術を紹介する展示会を開催することも考えている。
猫耳族の優れた薬草の知識や、トロル族の鍛冶技術などを共有することで、互いの生活を豊かにできるのではないかと考えている。」
グリムの言葉に、長老たちは満足そうな表情を浮かべ、述べた。
「それでは、具体的な交流計画について、今後詳細を詰めていくために、近いうちに会議を開こう」
グリムがまくし立てる。
「会議には、両国の代表者だけでなく、各分野の専門家にも参加していただきたいと考えている。
例えば、歴史学者、薬草の専門家、鍛冶職人などだ。
様々な分野の専門家が集まることで、より多角的な視点から交流計画を検討できるのではないかと思う。」
長老の一人が、今後の進め方について確認した。
「それでは、会議の準備を進めさせてもらおう。
詳細が決まり次第、改めてご連絡する。」
グリムは、長老たちに深々と頭を下げた。
「本日はありがとう。これから、猫耳族とトロル族の交流が深まるよう、精一杯努力するつもりだ」
グリムの言葉に、長老たちは満足そうな表情を浮かべた。
「我々も、今回の交流が成功することを心から願っている。」
こうして、猫耳族とトロル族の交流は、具体的な計画段階へと進むことになった。
帰り道、二人のトロルは通訳のアンミストに伝えてもらった内容にはしゃぐ。
「グリムちゃん、お疲れ様。ええと、『交流会ですか!面白そうですね!猫耳族の文化について、色々教えてもらいたいです!』『展示会も楽しみです!トロル族の鍛冶技術を、猫耳族に披露できる機会があれば嬉しいです!』って言ってるよ」




