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猫耳と王冠  作者: クーアウコ
第二部
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6話 教会

「やはり猫耳族とトロルは交流を持つべきだ」


トロルの森に入るなりそのようなことを口にしたグリムに対して、エリックは耳を疑った。


「何故だ王様…。アンタ里に入る時に言ってたじゃないか。

 美醜の差だの交易品が似通っているだの……。メリットがない、意味がないとも言っていた」


「あの里はとても心地よかった。それにだな…我々トロル族もそろそろ変わる時が来ているのかもしれない。意味など後からついてくるものだ。まずは交流してみる。そこから何かが生まれるかもしれん」


「王様……アンミストの身体に影響されたか……?」


「確かに影響されたのかもしれん。あの里……とくにあの教会は、なぜかとても心地よかったのだ。しばらくその場から離れられないくらいに」







 グリムはエリックと別れトロルの森に帰るなり、アンミストにこの話をし教会の荘厳な雰囲気を褒めた。


「信心深くもない私が、何故か祈りを捧げる気になれたほどだ。

 あの場所は素晴らしい。

 是非ともこの地にも建てたい」


 しかしアンミストからは意外な返答が帰ってきた。


「グリムちゃん、その教会ってマタタビ教会のことだよね」


「またたび教会?」


「マタタビの神は、猫耳族がまだ小さく他の種族から迫害されていた時代に、猫耳族を助けるために天から降りてきたんだよ。

 それで猫耳族にマタタビを与え、その力で心身を癒し、団結力を高めたんだ。

 そしてマタタビの力で他の種族を退け、猫耳族の平和を守ったとも伝えられてるよ。

 猫耳族は、毎年マタタビの花が咲く季節に盛大な祭りをするんだ。

 祭りでは、マタタビの葉で作られたお酒が振る舞われ、猫耳族は歌い踊りながらマタタビの神を讃えるんだよ。面白そうでしょ」


「それはさぞかし楽しそうな光景だろうな…」


「でしょ?ここで種明かし。マタタビは植物の一種で、庭にも植えてあるはずだよ。

 その匂いを嗅ぐとうっとりしちゃうの。

 本物のお酒ほど害はないんだけどね。

 でも教会依存症の人とかもいて少しばかり問題になってるんだ。

 粉末状にしたものも、そこらへんの店で売られてるよ」


「なんだと?

 わ、私は酒に釣られたようなものなのか……」


 グリムは、てっきり猫耳族の文化に触れて感銘を受けたのだと思っていた。

 しかし実際は、ただマタタビの匂いに誘われただけだった。


「別に悪いことじゃないよ。猫耳族の間では一般的なものだし」


 アンミストは苦笑いしながらフォローした。


「しかし…」


 グリムはまだ納得できなかった。

 本当にただの匂いに釣られただけなのか。

 他に何か理由はなかったのか。






後日、グリムの部下が埋められている墓の前に数本、マタタビの植物が植えられることとなった。

グリムとアンミストは時々そこに入り浸り、恍惚とした表情で墓に祈りを捧げ、また互いにじゃれ合うのだった。

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