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猫耳と王冠  作者: クーアウコ
第二部
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4話 廃墟の城

 行きとは違うルートを使いトロルの森に帰る途中の3人。



 グリムが唐突に話し始める。


「そういえば、このあたりにはヴォルグラスがいた廃墟の城があったな…エリック。私は今思い出したことがあるのだ。」


「何をだ?」


 エリックは、グリムの言葉に戸惑いを隠せない表情を浮かべた。


「ヴォルグラスの奴めは自分でもマインドメルトを試した、と言ったな。その残薬が、ひょっとしたらまだどこかに残ってるのでは?」






 グリムの一声で、廃墟の城へとやってきた。かつて強大な魔法使いヴォルグラスと死闘を繰り広げた、因縁の場所。

 城壁は崩れ落ち、蔦が絡みつき、所々に風雨に晒された跡が見られる。

 それでも、その威容は失われておらず、かつての栄華を物語っていた。



 やがて、王の間に到着した。

 そこは、かつてヴォルグラスが玉座に座っていた場所。


 しかし今は杖と転がっているドクロが入口を向いており、3人を迎えるかのようだった。

 ドクロは、ヴォルグラスのものだろうか。



 廃墟の城は思ったよりも広く、3人は手分けをしてマインドメルトを探すことになった。


「フロート、もし見つけたら大声で教えてくれ!」


「わかったわ」


 探索を開始してしばらくすると、エリックが声を上げた。


「王様!マインドメルトと書かれた紙が!」



 グリムは急いでエリックの元へ駆け寄った。その棚には、薬こそないがマインドメルトという紙が貼ってあった。


 グリムはラベルをまじまじと見つめた。


「確かにマインドメルトと書いてある……

 だが、見ろ。薬はどこにもない」


 代わりに小瓶があったと思われる場所だけ、円形に埃がなかった。

 その場所だけ、周囲の埃っぽさとは明らかに異質。

 まるで、そこに何かがあったことを示しているようだった。


 グリムは、その円形の跡をじっと見つめ、そしてゆっくりと手を伸ばし、その跡に触れてみた。

 しかし、何も感じない。

 ただ、微かな埃の感触が指先に残っただけだった。

 彼は、肩を落とした。

 やはり、マインドメルトは残っていなかったようだ。






 エリックは帰り道、グリムに言う。


「中身があって王様にも使えれば、今頃王様とフロートが身体交換して丸く収まったのかもしれないけどな」


「仮に効果があったとしても、さすがにアンミストに悪いだろう。それに私はその薬の副作用である魂と肉体の固着とやらをおこして、もう二度と使えないらしいからな」


「別に私はこの体に慣れちゃったし、二度と身体交換する気はないけどね。まあ、でも他にも身体交換させられた人がいてもおかしくないから、そういういい味では持っておくのも悪くないかもね。

 でも、二度と使えないってのは本当にそうかしら……」



「何?」


「あなた達……いえ、出どころはインクさんかしら。本に書いてある文章に騙されて、薬は一人1回しか使えないものと思い込んでいたらしいわね。実はまだ隠された効果があって、時間が立てばまた再使用できるとか後出ししても驚かないわよあたしは」


「フロート……」


 グリムがなにか言いかけるが、フロートが遮る。


「その本に直接なんて書いてあったか分からない以上、もう一度インクさんのところに行って何が書かれてるか1字1句ちゃんと確認すべきよ」


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