32話 趣味
グリムは我を忘れて、ヴォルグラスに襲い掛かった。
怒りは頂点に達し、髪と尻尾はその象徴のように大きく膨れ上がる。
「ヴォルグラス貴様ぁあああ!」
彼は血走った目でヴォルグラスに襲い掛かり、ナイフを乱れ打ちした。
老人は彼の攻撃を嘲笑うように、ただ立っていた。
次の瞬間老人は鋭い眼光でグリムを睨みつけ、掌から生み出した氷の槍を勢いよく投げつけ、両手のナイフを砕いた。
武器を破壊され動揺を隠しきれないグリム。
老人は冷酷な笑みを浮かべながら、"魔法の青い鎧"に酷似している青い球体をグリムに連射した。
老人の放った球体に当たり続け、彼は部屋の中を縦横無尽にふっ飛ばされる。
最後にグリムの部下の部屋の扉に叩きつけられ、反動で扉が閉まった。
彼が腰に下げていた袋が落ち、中から王家の指輪が転がり落ちる。
「邪魔じゃよグリムくん。君など相手にならん。せっかくアンミストくんがかばってくれたんじゃ。そこで待ってろ。ワシはかわいいこどもの願いは尊重してやる主義でのう。まずは……」
老人はエリックの方を向いた。
「エリックくん。君からだ」
ヴォルグラスは手から3cmほどの氷柱を作り出し、エリックの左下腿に刺した。
「ぐっ……」
焼けるような痛みで顔をしかめる。
「エリックくん、君はワシのつくった可愛い子どもではないが、ワシの楽しみを台無しにした借りがある。たっぷりいたぶってから殺してやろう」
エリックは両足に無数の氷柱を受け続けた。




