表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫耳と王冠  作者: クーアウコ
第一部
18/52

18話 100%

 魔法書収集家インクの家から出たエリックは、待機していたグリムと家の門の前で合流した。すっかり時が過ぎ夕暮れとなっていた。

 アンミストは観光や買い物をしたいということで何処かに行ってしまった、とのことだ。

 エリックは丁度よかった、とグリムに屋敷であったことをすべて伝え小瓶を渡した。


 グリムは小瓶を光に透かして角度を変えながら、液体の色や粘度を注意深く観察した。

 彼は中の液体を観察しながら怪訝な表情で言う。


「なるほど、エルカという町に被害者が……とりあえずそこを目指すとしよう。

 それと、エリック……お前がこの小瓶を持ってきてくれたのは嬉しいが、インクという者が言っていたようにこの小瓶は使えないのではないか?こんな物を持っていても……」


「いや、大丈夫だ。

 アンミストは、100%この提案を受けるはずだ。

 王様、アンタからアンミストに提案してみてくれ」


 どういうことだ、とグリムは訝しげにエリックを見る。





 その後アンミストと合流し、薬の価格や効能などインクに受けた説明をした上で提案するもーー


「嫌ですよ。そんなの。グリムちゃんだけずるい。しかもボクはずーっとグリムちゃんの体のまま?ひどいですね。なんでボクが飲むと思ったんですか」


 アンミストは即答した。1秒も間を置かずに、だ。

 グリムが恨めしげにエリックを睨む。


「エリック貴様……あれだけ自信たっぷりに言ってたのに……」


 ーーおかしい。この提案はどう考えても100%通るはずだ……


 エリックがアンミストに食い下がる。


「何故だアンミスト。あんたは……」


「エリックさん。何かあなたはボクの声のせいで勘違いをしてるようですけど……」


 アンミストはエリックの眼前へにじり寄り、目を細めて笑みを浮かべ、言った。


「ボクは、()()()()ですよ?言いましたよね。忘れちゃいましたか?」


 エリックがアンミストにまだ言葉を向けようとした瞬間、けたたましい足音が響き渡った。

 血相を変えたトロルが、息を切らしながらこちらに向かってくる。

 彼はトロルの姿をしたアンミストに、必死で何かを訴えていた。

 トロル語はエリックとグリムにはちんぷんかんぷんだったが、二人の表情から事態の深刻さが伝わってきた。

 トロルの言葉を聞きながらアンミストは眉をひそめ、真剣な表情で頷いた。

 アンミストの瞳には、一抹の不安と決意が入り混じっていた。

 グリムがアンミストを凝視して、唾をごくりと飲み込んでこう呟いた。


「……本当にトロル語を話せるの……か……」






 グリムが言うには顔も覚えはなく、またそのトロルもアンミストを見ても無反応だったことから、グリム王の森の住民ではないらしい。

 トロルは去っていき、アンミストは真剣な顔で去っていったトロルの方角を見つめた。

 その後アンミストは、グリムに静かに告げた。


「グリムちゃん……あのね。あなたの森に……火をつけた人がいるって……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ