ただただロッテリアの旧絶品チーズバーガーを食べたい話
その日はインターンの帰り道、地獄としか言いようのないグループワークを終えた私は星空を見上げて亡くなった祖父母への手土産を考えていた。部活帰り週末のご褒美に偶に買って帰っていた絶品チーズバーガー。2人はよく「可口的‼︎」と言いながらささやかな贅沢を頬張っていた。そんな晩餐で締めるのも何だか私というちっぽけな1人の人間を写し描いたような気がして粋に感じた。
「すみませーん、クーポン番号100、ドリンクはオレンジジュースで下さい。」
「830円になります。(ちっ、ロッテリアに来てまでクーポン使う乞食野郎が)」
頼むのは会員限定の絶品チーズバーガー+ポテトL+ドリンクLのクーポン。たったの一食に最低賃金の約7割を使うことに背徳感と共に背筋をかける妙な快感を覚えることもロッテリアで食事する楽しみだった。出来上がったセットを受け取り狙うはインキャの永遠の友達、角席。伽藍としている都内でも有数の田舎のロッテリアだが角席に限って言えば、誰にもこの至福の時を邪魔させない覚悟を持った歴戦の戦士たちが独占しており取り、勝ち取れる時は滅多にない。だが、この日は午前は閻魔、午後には仏が私を見守っていたようだ。4つの角席のうち一つが空いていたのだ...!!瞬間、角席残りの三つに座る魔法使い(30代)、賢者(40代)、大賢者(60代)が私の眼を見て問いかけているように感じた。
(こちら側に来る覚悟をお前は持っているのか?)
鋭い眼光に対して私は...
(陽属性など昔に捨てたわ!!)
という意思を持って怯えた眼光を彼らに向けた。満足したのか彼等はそそくさと目線を逸らしていったため遂に(本日)最期の晩餐へと私は辿り着くことができた。今日の閻魔の試練と仏の試練での苦労を頭に思い描きながら開けた袋の中に居たのはユダだった。
頭の中で猫がダンスを踊り出した私は困惑の中、本物の絶品チーズバーガーはどこに行った!?と問いかけてみるもののドロリとした白い衣を纏ったユダから返事はない。まさかと思いユダに接吻をしてみると、強烈な生臭さが私の口内を駆け巡ったのだ。
(ど、毒を盛られた!!?!?!)
周りに悟られないよう咀嚼をしながら手元のスマフォにて絶品チーズバーガーを検索。すると、見覚えのない白い液体、チーズソースが追加されているではないか...!ドロリと伸びるチーズにまるで高級店で食べているようなハンバーグ、ふんわり柔らかでもっちりした食感のバンズという究極のシンプルを追求した絶品チーズバーガーの見る陰もない。まさに堕天。天国と私が考えていたものはただの魔王城であったのだ。仏は魔神であり魔法使いや賢者たちは既に魔王直属の配下だったのだろう。私はレジスタンス(旧絶品チーズバーガー派)と志を共にするものだとバレないように細心の注意を払いながら死に物狂いで毒を胃へと掻き込み自宅へと駆けて行った。
もう私の天国は存在しない、どうかレジスタンスよ私達に旧絶品チーズバーガーを取り戻し、ついでに値段を下げてくれ。