表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fly Daddy Again  作者: 正導日明
7/22

イレギュラー

『お……さ…』


う、う~ん誰かが俺を呼んでいる……

あれ?

体が動かない?


『央雅様起きてください』

「え、え、あれ?」

『ようやく起きてくださいましたね』

「あ、あぁ……俺気を失っていたのか?」

『はい。その様です』

「あれ、何でか体が動かないんだけど」

『それはご自身の目で確かめられた方がよいかと……』


あれ?

なんでこんなに視線が低いんだ?

周囲を確認するとここは森の中?

このじめっとした温かさは7月ぐらいか?

陽の高さから見ると時間はおよそ18時過ぎ?


「おい、これはなんだ⁈」

『気が付くと央雅様はこの様な状態でした』

「マジかよ」


俺は首だけを残し、残りは土の中に埋もれていた。


「な、なんで俺は土の中に埋もれてるんだ? いや、待てよ……まさか?」


俺は自分の記憶を思い返してみる。

いや、それはありえない⁈

だって俺は地球が崩壊する1年前に戻るのが精一杯だったはず!


「いや、その前に、この状況をなんとかしないとな」

『それがよろしいかと』

「しかし、これはどうやって……あ、今の俺なら――」


俺は土に埋もれている体に力を入れる。


「うん、いけるな……ふんっ!」


力を籠めて腕を引き出すと、簡単に土から腕が抜け出す。

それからは簡単だ。

状況さえ理解すればあっという間に土から抜け出せた。


「ふぅ……体中汚れまくってるな……おまけに体中痣だらけだ」

『央雅様が意識を戻される前から体中痣だらけでした』

「仕方がないさ……俺の記憶が確かなら……とにかく歩くか」


記憶を確かに歩く俺は、あっという間に森を抜け出す。

抜け出した先は小高い丘から見下ろす街並みが聳え立っていた。


『どうやら戻ってこれたみたいですね』

「あぁ……そうだな……地球に戻ってこれた……」

『どうなされましたか? せっかく地球に戻ってこれたというのに、浮かない顔をされておりますが?』

「ジャズ……俺達は地球が崩壊する1年前に戻るはずだったよな?」

『はい、左様でございます』

「たしかに俺達は地球に戻ってこれた……けど、ここは俺達が予定していた時代じゃない」

『なっ⁈』


俺がそう言うと、ジャズは驚く。

無理もない。

俺がそう言えば驚くのは当たり前だ。


「俺が土に埋もれていた状況……この街並みを見て、確信に変わったよ。ここは俺達が当初計画していた時代ではないってことが……」

『で、ではこの時代は? 我々はいったいどの時代に戻ってきたというのですか?』

「俺達が戻ってきた時代は……意識を戻した時の俺の状況……俺がまだ15歳……高校受験を控えていた頃だ」

『ま、まさか⁈ そ、そんなにも過去へと遡って……しかし、そんな事は――』

「ジャズが驚くのも無理はないよ……まさか17年も前に戻る事ができるなんて考えもしないさ」


地球が崩壊する1年前に戻るはずが、まさか17年前に戻る事になるとは俺もジャズも予想だにしていなかった。

俺はその場に座り、小高い丘から街を見下ろす。


「これは大きなチャンスだ」


予期せぬ大幅な過去への戻りに対し、俺は歓喜した。


「1年しか時間がなかったのが、まさかの17年……これなら何とかなる……いや――」

『央雅様が計画していた以上の事ができますね』


俺は広げられた手を空へ掲げる。


「あぁ……今度こそ……」


掲げられた手の平をギュッと、力強く握る。


「今度こそ救ってみせる」


俺は己に言い聞かせるように誓うのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ