薄く、硬い壁
「くっ⁈」
振り下ろされた拳は俺に直撃し、勢いよく俺は吹っ飛び、壁にメリ込む。
だが、俺の意識は飛ぶことなくなんとかなった。
だが、ガードした俺の腕の骨は粉々になったみたいだ。
しかし、俺の拳は雪花さんに届いたはず……当たった瞬間硬い何かに阻まれた気がした。
『どうやら、雪花様の表面に目では捉えれない氷の層が張られています』
「それが俺の拳を防いだのか? そんなので俺の拳を防ぐことが可能なのかよ? それに、ジャズ、お前が何で気付かなかった?」
『申し訳ございません。どうやら、雪花様には強力な隠蔽魔法が使用されているみたいで、気付くのが遅れました』
「そうか……ジャズが気付かない程の隠蔽魔法か……」
「どうしたのですか? あなたがこんな事で死なない事位分かっています。 さっさと出てきなさい」
俺が生きていると分かっていても追撃してこない辺り、まだ鬼になり切れていないのだろうと思った。
「ジャズ、俺の考えは読めたか?」
『はい。 可能です』
「OK」
俺は壁から剥がれ、雪花さんの下へと歩き出す。
「その手はもう使えませんね。 ここから消え、もう二度とここに来ないと誓えば、生かして返してあげましょう」
「それはそれはお気遣いいただきましてありがとうございます。ですが、それは受け入れる訳にはいきません」
「……そんなに死に急いでいいのですか? 人間の寿命は短いのです……それにあなたは見た感じ15歳ぐらいでしょう……まだやり残している事が沢山おありなのではありませんの?」
「はい……俺にはやらなければいけない事が山ほどあります」
「なら、ここは諦めて――」
「今度の俺は諦めるという言葉を消し去ったんです。 ですから、俺の行く道を塞ぐ者は、何人たりとも、俺を止める事はできません」
「今回? まぁ、その気概は褒めてあげましょう……しかし、今、現状を理解できない者は所詮そこまで……その腕で私に勝とうなどありえません。 その腕で戦いを続けていても私には届きはしませんわ」
「その覆われた氷のおかげですか?」
「あら? 気付いていらしゃったのですね……私の【薄霜堅氷】に……そう私は常に目では捉える事も、感づかれる事も無い氷の膜を全身に張り続けていますの。 私の氷は一切不純物が無い純度100%の氷を生成する事ができ、私を覆う氷はダイヤモンド程の強度を持ち合わせます。 ですので、私の【薄霜堅氷】を壊さない限り、あなたが勝つ確率は0なのです。 ふふふ」
「はぁ、そうですか……で、あるからに、あなたのその氷を壊したら、俺が勝つ確率が0から100になると」
「はぁ? 話しを聞いていたのかしら? まぁ、もし壊せたとしても、そのぶっ壊れた両腕じゃどうにもならないと思うけど~」
雪花さんの顔が歪んでいく。
まるで虫けらを見るかのような歪んだ笑みを見せながら……それと共に、角も歪に伸びていく。
その顔は前にも嫌って程見たことがある。
俺は雪花さんに向け、ぶっ壊れた両腕を上げる。
「どうしたのかしら? ぶっ壊れた両腕を私に見せて……あぁ、そうゆう事! やっと降参する――」
「【回復】」
「えっ⁈」
俺は一瞬でぶっ壊れた両腕を回復させる。
その状況を見ていた雪花さんは驚いている様子が見える。
「さて、第2ラウンドと行きますか~!」
「だ、第2ラウンド⁈」
「えぇ、腕も治った事ですし、続ける他ないと思いますが?」
「わ、私の話を聞いていたのですか⁈ ここで降参しなければ、あなたを殺すって言ったのですよ⁈」
「何でですか?」
「な、何でですかだって⁈ あなたは先程まで、両手がぶっ壊れていた状態でしたのよ! ですけど、両腕が治ったからと言って、私に勝てるかと言ったら、また同じ事の繰り返しになります! だから今の内に――」
「雪花さんは優しいんですね」
「なっ⁈」
「だって、さっきから俺の事を心配してくれているじゃないですか! でも心配しなくて大丈夫です。 この戦い、俺が勝ちますから」
「なっ⁈ そんな大それた事を抜かす程、あなたは大馬鹿なのですか⁈」
「大馬鹿なのは否定しません……ですが、この戦いは俺が勝ちますよ」
俺がそう言うと、先程以上の殺気を俺に向ける雪花さん。
「これ以上何を言っても無意味でしょう……ならあなた望み通り、戦いの続きをしましょう……そして、殺してやります」
「いやいや、俺はこんな所で死にませんし、今度こそ、家族に看取られて、ぽっくり逝く時が俺の死ぬ時なんで」
「はぁ……イライラする……あなたのへ理屈は聞き飽きましたあああああ!!」
物凄い速さで迫ってくる雪花さん。
雪花さんの両腕は先程以上の大きさの拳で、俺を殺しに来る。
「【身体強化2】」
「何っ⁈」
俺は雪花さんの両腕を俺の両腕で受け止める。
「な、何で私の拳を受け止めて――」
「今度は俺の番ですねっと!!」
「きゃあっ⁈」
大きな氷でできた拳をバキバキッと音を音を立てながら、俺の握力で握り潰しながら上へと持ち上げる。
「な、なんで⁈ 私を持ち上げる事なんてできないはず⁈ どこにそんな力を⁈ くっ、下ろせっ!!」
「嫌ですよ。 それにその拳は邪魔なんで壊させてもらいます」
パリィィィィ―――ンッ!!!
「なっ⁈」
「驚いている場合ですか?」
「へっ?」
俺は【炎】・【制】・【創】を一段階ずつ引き上げる。
炎を両拳に纏い、雪花さんを覆う氷を壊せる程の温度の上昇、そして、雪花さんを超える程の大きさの拳を作り出す。
「獣謳無尽流 一ノ型 【炎殴】」
+++++
突然外から大きな力の反応が現れた。
遠離ではないのはすぐに分かった。
遠離は絶対にここには来ない、いえ、来れない。
あの子は自分の手で縁優様を殺す事ができないから。
「やっぱり、自分の手を汚さず、赤の他人にやらせると思ったわ」
まぁ、遠離が寄越した者は、この吹雪によって阻まれ、死を迎えるでしょう。
そう思っていたのにも関わらず、突然もの凄い勢いで炎が燃え広がり、私が施していた術が消え去った。
そして、私がいる場所が見つかってしまった。
しかし驚きよりも、ここに来た者の姿を見た瞬間興味が勝った。
「あれ? 人間? ふふふ……あはははは! 遠離の奴、とうとう頭がおかしくなったのかしら? たかが人間が……たかが人間がここまで来れるはずがない……いったいどうやってここまで……それに、私の術を破ったのは紛れもなくあの人間……」
しかし驚きよりも、ここに来た者の姿を見た瞬間興味が勝った。
私は扉を開くと、その者は迷うことなく入ってきた。
「迷うことなく入ってくるのね……怖いもの知らずなのか……もしくは頭のおかしな人間……どちらでもない……」
私は増々あの人間に興味が湧く。
私がいる部屋の扉を人間如きが開けられない様、質量を増やし、そして強固に固める事にした。
「ふふふ……入れるものなら入ってみなさい。 私に悔しがる顔を見せなさいな」
すると、人間は扉の前で、数秒止まり、扉に手を置く。
「ふふふ……さぁ、歪に歪む顔を私に見せ――」
ゴォォォと音を立てながら扉を開いていく。
ウソでしょ⁈
私以外にこの扉を開けられる者はいないはず。
いえ、いたとしても、絶対にお前なんかじゃないはず。
『いつか、私以外にも雪花の想像を超える者は現れるよ』
突然、頭の中に縁優様が私に言った言葉が流れた。
いやいや、そんはずはない。
しかし、認めないと思っていても、私は間抜けにもあの人間を認める言葉を言ってしまう。
「その扉を力づくで開けるのですね」
言い終えてから気付くあり様……だって正直驚いたんだもん。




