凍てつく空間
4階に進むと、そこは凍えそうな程の冷気に、吹雪が舞っていた。
俺は【炎】・【制】・【循】を同時に発動する。
【炎】で、炎を。
【制】でコントロール。
【循】で体中に巡らせ、凍えそうな体を守る。
「ふぅ……何とか凍えることは無くなった……けど、この先には今までとは違う何かがいる」
『そうですね……この吹雪のせいで、こちらに悟られないよう妨害魔法がかけられています』
「へぇ……頭の良い鬼がいるのか」
『鬼とは多少……鬼であって鬼ではありません。 ですので、油断は禁物です』
「どゆこと?」
『わかりません。 あちらは妨害魔法を使い、こちらに悟られない様にしております。 素の力は今までの鬼の気配も感じますが、そうでない者も混ざっております』
「鬼であって鬼ではない者……ここで悩んでいても仕方がない。 進むしかないな」
俺はそう言い、吹雪の中へと歩を進めていく。
念のため、【身体強化】を発動させながら歩を進める。
進むにつれ、吹雪は激しさを増していく。
それと同時に体に循環させている【炎】を強くしていく。
+++++
10分程歩き続ける。
だが、何の反応もない。
鬼も現れない。
ただただこのフロアをグルグルと回っているようだ。
「どうやら俺は罠に嵌められているみたいだ」
『そのようですね』
「知っていたのなら何かアドバイスを言うのがジャズの仕事だろう?」
『いや、ただ単にグルグル回っている央雅様が面白くて観察しておりました』
「おい!」
『冗談です。 先ほどから央雅様が歩いている間、こちらも罠を仕掛けておりました』
「おぉっ! さすがは俺のブレーン!」
『では、自由気ままに走り回っていただけますと、自ずと結果が見えてきます』
「わかったよ……走り回ればいいんだな!」
俺はジャズの話を聞き、走り回り続ける。
+++++
ジャズに言われ、走り続ける事10分が経つ。
『お疲れさまでした』
「え? もういいのか?」
『はい。準備は整いました』
「いや、けど、俺はただ闇雲に走っていたただけだけど?」
『央雅が走り続けながら、自身に炎を循環させながら走り続けられておりましたね』
「あぁ、そうだな。この猛吹雪の中、【炎】をかけとかなきゃ凍え死んじまう」
『央雅様、次に、以前使われておりました【炎舞】をお使いになってください』
「いや、この状況だと炎舞は吹雪に掻き消されてしまうんじゃ?」
『大丈夫ですので、心配せず【炎舞】をお使いになってください』
「……わかった」
俺はジャズに言われた通り、膝を着き――
「【炎舞!!】」
すると、【炎舞】を発動したと同時に、波紋の様に広がって行く。
だが吹雪に阻まれ、炎の勢いも弱まり、消えると思った瞬間、炎の勢いが蘇りだしたのだ。
【炎舞】は範囲を広げ、炎の勢いを増しながら広がって行く。
「あれは?」
『央雅様が歩かれた所には【循】の痕跡は消えずに残ります。 それがマーキングとしての役割を担っており、【炎舞】を使用すると同時に、央雅様が歩かれた場所に炎が到着すると、更にそこから勢いよく炎が広がって行きます。 これは央雅様がお使いになられている【循】の作用を用いております。 【循】は体を巡らせるだけではなく、こういった形での使い方もできるのです』
「勉強になります」
ジャズは俺が知りもしない事を、すぐには教えず、経験させながら教えてくれる。
この教え方はガラハッドさんと同じだ。
答えを教えるのは簡単だ。
だが、答えを導き出すまでの過程を疎かにしてしまうと、その先の問題を解くことはできない。
だが、少ないアドバイスだが、そのアドバイスが閃きを与え、新たな発見を作り出す。
師匠達もこうしてガラハッドさんの教えにより強くなった。
だが、俺にはガラハッドさん、そしてジャズが居てくれたおかげで、短いスパンで地球へと帰還する事ができた。
さすがはガラハッドさんと同じ系列の【賢】を持つ者だわ。
炎舞は吹雪を超える勢いで広がって行き、一面白い世界だったのが、徐々に吹雪も止みだし、雪も溶け、視界がクリアになってくると新たな姿を現す。
吹雪は止み、全ての雪は溶け、眼前に見えるのは白い世界。
そして、その白い世界にピッタリな氷の城。
「【炎舞】でも溶けない程の強度……中にいるな」
『はい。 反応がございます。 その数……1体』
「1体っ⁈ 他のフロアとは違い、雑魚がいないんだな」
ギィィィ――
突如扉が開きだす。
だが何かが出てくる様子はない。
「……これは入って来いって事かしら?」
『口調がおねぇになっていますよ』
「こんな事初めての事だから、多少は動揺してるんだよ」
『せっかくのお誘いをお断りしたら失礼ですね』
「そのフリはやめろよ……はぁ……行くしかないよなぁ」
俺は歩を進め、氷の城の中へと入る。
だが何も起こらない。
「何も起こらないな」
『先程もお伝えしましたが、反応は1体しかありません』
「なんか怖いな」
+++++
歩き続けていると、見るからに重厚そうな扉に行き着く。
「ここだよな」
『はい。 今までとは異なる力を感じます』
「異なるって事はつまり――」
『1階から3階のボスと比べない方がよろしいかと』
「了解……鬼であって鬼ではない者……ねぇ」
俺は扉を両手で押し開ける。
やはり見た目通り、重厚な扉で、ゴゴゴォォォと音を立てながら開いていく。
「その扉を力づくで開けるのですね」
「えっ?」
扉を開き切ると、眼前に現れたのは、肌は青白く、それでいて澄み切った青い瞳……そして妖艶で、角の生えた女性が俺を見つめ、静かな笑みを浮かべていた。
お読みいただきありがとうございました。
やっと20話まできました。
今後もお読みいただけると嬉しいです。




