次の行い
「お見苦しい所をお見せしてしまいすいません」
「いえ、お気になさらず」
遠離さんは立ち直り、俺に謝ってきたが、何も悪い事をしていないのだから謝る必要はないし、むしろここまでよく頑張ったなと称えたいぐらいだ。
「それで、俺は好きな時にここに来て、濁気を駆除していけばいいんですよね?」
「はい。 央雅様はまだ学生です。 学生の本分を疎かにするのは――」
「あ、大丈夫です。 俺意外と学業はしっかりやってる方なんで! それに、出席日数も足りてるんで、あとは高校受験に合格するだけですから」
「しかし――」
「まぁ、遠離さんが心配するのも分かります。けど、遠離さんに心配はかけたくはないんで、学校が終わった後と、土日にここに来て濁気を駆除していきたいと思います」
「それなら私も安心します。央雅様……」
「なんです?」
また心配そうな顔をする遠離さん。
「私が言うのもおこがましいとは思いますが、どうかご無理はなさらないでください」
遠離さんは俺の事を心配してくれていた。
「俺は大丈夫です。 むしろ、ここに来るなと言われるんじゃないかと心配でした。 俺に機会をくれてありがとうございます。それに、自分で言うのもなんですが、こう見えて結構頑丈にできてるんで、心配しないでください」
俺は胸を張り、アピールをする。
「……」
あれ?
何の反応もない……どうしようか?
「ふふふ」
「えっ?」
俺がどうしようか悩んでいると、遠離さんが笑ってくれた。
「ふふふ。 わかりました。 央雅様を信じさせていただきます。 ですがご無理はなさらないでくださいね」
「わかりました。 遠離さんに心配をかけない様、程々に頑張らせていただきます」
俺はそう言うと、縁優さんの方を向く。
なんとなく縁優さんが微笑んでいる様に見えた。
その後、遠離さんと別れた俺は、まだレベル上げをしたかったので、違う階へと移動していた。
遠離さんは長い話になってしまったのだから、今日はもうお帰りになった方がいいと言ってくれたが、俺はまだ時間と余力が残っているから、濁気の除去作業に入りたいと言い、許可をいただいた。
それと同時に、遠離さんから、各階への通行許可もいただいた。
これで俺はいつでもここに出入りが可能になった。
俺は2階に移動する。
早速、目の前に最初に見た餓鬼の色違いが現れた。
「最初とは色が違うだけか?」
色は赤色をしている。
赤い餓鬼は俺に気付くと仲間を連れ、こちらに向かってくる。
『あの餓鬼は朱餓鬼と言って、炎を使い攻撃をしてきます』
「最初の鬼たちとは違い、魔法を使用してくるんだな」
各階ごとに異なる鬼たちがいるみたいだ。
だがこいつらは俺の相手にはならない。
俺は【身体強化】を使い、朱餓鬼を一掃する。
「さぁ、今日はレベル20まで上げるつまりだから、ジャンジャンかかってくる来るといい」
「ギィ⁈」
朱餓鬼は怯えを隠せず、後退りしていく。
俺はそんなの関係ないと言わんばかりに倒しまくる。
+++++
狩りまくっている内に、いつの間にか2時間が経過していたが、当初の目的であったレベルが20に達したのだ。
それと同時に、モンスターを狩りまくっていたら、ゲートを見つける。
だが、何も出てくる気配がないので、ゲートを破壊しようとした瞬間、ゲートから威力のある火球が俺に向け飛んできた。
俺は避けずに手で払いのける。
「グゥゥゥゥゥ――」
ゲートから現れたのは、口からユラユラと火を出し、重鬼程大きくはないが、まぁまぁの体格の赤い鬼が現れる。
「グゥアア――」
「うるさい」
「グアッ?」
俺は重鬼同様に軽く首をチョンパする。
「叫び声が耳障りなんだよ。 自分を誇示したいのは分かるけどさ、吠えると余計に弱く見えるぞ」
俺は首を投げ捨て、ゲートを破壊する。
おかげでレベルが上がり、予定していたレベルを超える事ができた。
『央雅様、そろそろお帰りになられた方がよろしいかと』
「お、もうそんな時間か?」
ジャズに指摘され、俺は帰る事にする。
まぁ、当初の目標はクリアしたし、今日は予期せぬ出来事もあった……その事についてもジャズとも話し合わなければならないしな。
こうして慌ただしいダンジョン1日目の探検を終わりにした。
+++++
じいちゃん家の真上に着き、ジャズに家の中の様子を伺っているもらう。
ばあちゃんは夕飯の用意をし、じいちゃんは体を動かしていた。
「じいちゃんのあの運動は何なんだろうか? ヨガではないし、太極拳か?」
俺は慎重に窓を開け、俺の代わりに寝ている【影の分身】を解除する。
『おばあ様が今こちらに向かっております』
「お、ベストタイミングだ」
ガチャッ
ばあちゃんが部屋に入ってくる。
「央雅、調子はどう?」
「う、う~ん……まだ体が重いかなぁ?」
「あらそう……夕飯は食べれそう?」
「うん、大丈夫。 食べれるよ」
「わかった。 用意してあるから準備ができたら下に降りてきなさい」
「うん、わかった」
ばあちゃんは笑みを見せ、部屋を出て行く。
「さぁ、まずはご飯を食べて、明日の事を考えよう!」
下に行くと、じいちゃんはもう既に一杯やっていた。
「おう、央雅! 調子はどうだ?」
「うん、まだ体が重いかな?」
「そうか……あまり無理はするなよ」
「え、あ、うん」
俺は一瞬焦る。
俺を見るじいちゃんの眼が一瞬鋭くなったからだ。
俺は体調が悪く、今日一日寝ている事になっているのにも関わらず、無理はするなよと言われた……寝ているだけの奴に言う言葉であろうか?
いや、ただ単に気を遣ってくれただけであろうと俺は深く考えない様にした。
「ほら、ずっと突っ立ってないで、温かい内に食べなさい」
「あ、はい!」
俺は急いで座る。
「いただきます」
「はい、どうぞ」
俺は一心不乱にばあちゃんが作ってくれたご飯を食べていく。
「そんなに急いで食べると消火に悪いわよ」
「うん、大丈夫だよ。 この煮物おいしいね」
「あら、そう。 ちゃんと煮込んだ甲斐があったわね」
「煮物だけじゃなく全部おいしいよ」
「ふふふ、ほら、そんな急いで食べなくてもご飯は逃げないから、ゆっくり食べなさい」
「うん、わかった」
お昼を抜いていたとしても、ばあちゃんの作ったご飯は本当に美味しい。
ばあちゃんが作ってくれたご飯をもう一度食べれる事に感謝だ!
+++++
「ふぅ~、お腹いっぱいだ! ごちそうさまでした」
「えらい食べたなぁ……まぁ、成長期の男はこんなもんか?」
「そんなもんよ~男の子なんて」
「そうかぁ……まぁ、そうなんだなぁ」
じいちゃんは俺の食べっぷりに納得がいかない様子だ。
次からは自重しよ……いや、たぶん無理だ。
とにかく今はこの場から移動しよっと!
「ご、ごちそうさまでした! 俺、もう寝るね」
「お、おう、そうか」
「寝る前にちゃんと歯を磨くのよ」
「うん、わかってる」
俺は急いで歯を磨き、部屋へと戻る。
「ふぅ……食った食った! さて、今日の成果を見ますかねぇ」
愛千 央雅(男)
レベル:21
Job:瞬神の末裔/Lv.1
HP:2532/2532
MP:124/124
力:89
魔力:69
体力:85
精神:58
運:52
すばやさ:77
SP残高:98ポイント
スキル
JAZ【賢】:03 ・ 身体強化:05 ・ 炎:03 ・ 鳴:03 ・陸:03 ・ 海:03 ・ 空:03 ・ 癒:03 ・ 制:03 ・ 循:03 ・ 創:03
〇万能:02
〇旅人:01
〇時空移動:01
「おぉ……良い感じで成長している」
『この調子でいけば、当初予定していた数値よりも早く成し遂げられそうですね』
「そうだな……その分次の段階への時間ができる」
『そうですね。 予定していた時間が大幅に変わった事で、できる事が多くなりました。 様々なイレギュラーに対応し、様々な観点からも対処できる様、準備ができるのはとても心強いと思います』
「あぁ、そうだな……それで、俺が頼んでいた事は調べてくれたかい?」
『はい。 既に調査済みです』
「候補は?」
『候補はお一人でございます』
「そうか……抗った人は1人か」
『はい。 現状はまだですが、後に吞まれます』
「一度会ってみようか……会って見て、交渉しよう」
『承知いたしました』
「強くなる術は手に入れた……目標とするレベルに達したら次は、活動するにあたっての資金を手に入れるぞ」
『現時点ででレベル35になるには、およそ今週中には達成可能です』
「わかった……これだけの企業がある中で、最後まで抗った強い精神を持った人は、いったいどんな眼をしているのか楽しみだ。うん?」
枕元にランプがチカチカと点滅していた。
俺は枕元に置いてあった携帯に手を取り、画面を開く。
着信52件
メール22件
「うげっ⁈ 何だこれ?」
携帯には夥しい程の着信があり、そしてメールも立て続けに着ていた。
「気持ちが悪いな……誰だよ」
俺は着信履歴を見ると、ほとんど同じ名前の奴らからだった。
メールを見ても着信履歴と同じ名前の奴らばかりだった。
【おい、お前今どこにいるんだ⁈】
【何で電話に出ないんだ⁈】
【学校を休んだ事を後悔させてやるよ!!!】
【誰かにチクってみろ? チクって後悔すんのはテメェだからな!!】
「うわぁ……こいつは酷いなぁ……」
様々な言葉で俺を脅すメールのオンパレードが書かれていた。
「昔の俺って結構根気強かったんだなぁ」
『見るからに自分勝手さが垣間見えますね』
「現に奴らは自分勝手という言葉を大きく上回っていたよ……やりたい事を本能がままにやる奴らだった……まだ獣の方が理知的だと思うぐらいに……まぁ、俺をいじめていた長である 番条 誉帆 が権力を持っていたからな……後ろ盾が居れば怖い物なんて無いに等しいんでないか? 何かあっても揉み消してくれるんだからな」
『自身が強くなったと錯覚しているのでしょう。 自身が強いのではなく、その力を築いた者が大きいのであって……しかし、その大きな者が力の使い方を正しく教えていないのか、それか教えが行き届いていなかったのか……もしくは――』
「間違った力の使い方を教えられたんだろ。 表向きはどうであれ、まぁ、正しい使い方を教えてもらっとしても、あいつは絶対に正しい事には使わんよ……いや、自分が常に正しいと思っている奴だ……正否なんて在って無い様なもんさ」
『どうされますか?』
「この先の未来に支障はあるのか?」
『これと言って何も』
「そうかぁ……まぁ、今週は会わないからいいとして、あいつらが一線を超えさえしなければ、耐えようかと思うけど……」
昔の俺なら何とか耐えたが、果たして今の俺に耐えられるだろうか?
力が無かった昔の俺……今は力を持った俺……昔あいつらにやられた事を思い出したら込み上げてくる怒りが顔を出す。
けど――
「力の使い方をドーノコーノと話したばかりだ。 むやみやたらと使うのは控えよう」
今は感情をコントロールし、やるべき事をやろう。
だが、未来に支障が無くなる期間に入ったその時、俺は過去を清算すると決めた。




