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Fly Daddy Again  作者: 正導日明
17/22

代償の重さ

「陰陽連は外鬼と手を組み、次々と城へと入り込み、城を壊すと共に、私たちの仲間を探し

回りました」

「探し回る?」


遠離さんはニコッと笑みを見せる。


「結界が解け、奴らが侵入した瞬間、避難場所に仕掛けてあった式神と私達が瞬時に入れ替わり、難を逃れました」

「陰陽連と外鬼達が来ることを知っていたのですか?」

「いいえ……ですが、縁優様はこの時がいずれ来るだろうと、既に手を考えておりました。 ですので、私達は仲間と共に避難場所から奴らの状況を見ていました」

「じゃぁ、みんな助かったんですね」

「私達は助かりました……しかし、奴らは次の手を使い、私達を脅してきました」

「まだ終わらないんですね」

「はい……奴らは、自身が使うための妖怪を何人か確保し、人質にとっていたのです」


一杯食わされた腹いせに、取った行動が人質を取る事か……汚い連中だ。


「縁優様はその状況を見おられました、……そして、単独で城へと飛び立ち、救いに向かう事を選んだのです」

「やっぱり……耐えられなかったんですね」

「妖怪は妖怪でも、まだ子どもでした」

「子ども? もしかして――」

「はい……既に子どもたちの親妖怪は奴らの力のために殺されたのでしょう……子どもたちは小さすぎるため、後の事を考え、育てるため、生かしておいたのでしょう」

「惨すぎる……」


そりゃ~、耐える事なんかできないだろう……俺も子を持つ親……人質に取られているとなれば助けに行くに決まっている。


「縁優様が城へと着くと、奴らは成熟した妖怪を渡せと言ってきました。しかし、縁優様は受け入れませんでした。 逆に、今回は目を瞑る……子どもたちを解放し消えろと言いました。 縁優様なりの情けだったのでしょう……ここまで落ちてしまった連中でも、元は仲間……よく思われていなかったとしても……まだ人としての心が残っているのだと思いたかったのでしょう……しかし、その縁優様の考えをあざ笑うかの様に奴らは縁優様に対し、汚い言葉を投げかけてきました。 今まで、積りに積もった縁優様への恨み、妬み、嫉み……

この状況が分からない程、お前は大馬鹿だなどと……人質を取っているこっちの方が有利だと言わんばかりに、縁優様の頭がとうとうおかしくなったと言い出す始末……しかし、奴らは自分達が強くなり過信していたのです。 ここが誰の城なのかということも忘れる程に」

「何か策を考えてあったんですか?」

「はい。 縁優様は人気もなく、道は険しく、立地も良くないこの場所にわざわざ建てられました。それには確かな理由がありました。 この地には龍脈が流れており、龍脈は悪鬼にとっては都合の悪い力なのです」

「悪鬼達はその事を知らずにこの城に入り込んだんですか?」

「龍脈は縁優様が長年研究して見つけた力です。 縁優様以外の陰陽師には、ただ単に気が強い場所にでしか認識されなかったと思います。 それに縁優様以外は龍脈の力を使えません。 悪鬼達もこの力の存在には気付いてはいませんでした」

「なるほど……その龍脈の力を使い、人質に捕らわれた子どもたちを救い出したんですね」

「はい。 縁優様は龍脈を開き、外鬼達を弱らせました。 あ、ちなみになのですが、この城に来た陰陽師達は全員悪鬼の力を手に入れていたため、弱らせる事にも成功しました」

「そう……なんですね」


でも、俺には腑に落ちない事があった。

龍脈のおかげで、子どもたちも助かった。

悪鬼達も、陰陽連の連中も弱らせたのにも関わらず、なぜ縁優さんはこの様な姿になってしまったんだ?

普通、ここまで来たらハッピーエンドで、めでたしめでたしで締めくくるのだろうが、縁優さんがこの様な姿なのが気になり、まだこの話は終わりではないだろうと考えた俺は、視線を縁優さんへと移す。


「ふぅ……」

「大丈夫ですか?」


遠離さんはだいぶ話疲れたのか、深いため息を吐く。

気の重い話を俺に話してくれた……本当なら話したくもない思い出……けれども話を聞かなければ、遠離さんが俺に何をお願いしたいのか明確にならないし、頼みを聞こうか悩んでしまう……だから、えんは包み隠さず話してくれている事に俺は気付いているし、遠離さんが心を痛めている事にも気付いている。


「お気遣いありがとうございます。 しかし、もう少しでこの話も終わります。 もう少々お付き合いください」

「大丈夫です……話を最後まで聞きます……ですから、そんな顔をしないでください」


遠離さんは思いつめた顔をし、俺を見る目がだいぶ弱くなっている。

過去の苦い記憶を喋るだけでも辛いというのに、俺が、この話を聞き終えた後の事も気にしているにちがいない。

俺が願いを聞き入れてくれるのか……不安で不安で仕方がない……潰れてしまいそうな思いでいっぱいな心境だろう。


「失礼しました……縁優様にかかり、弱り切った奴らは、死ぬ間際、縁優様に一矢報いるため、この地に溢れ出ていた濁気を1つに集め、この地域ごと、悪鬼達が蔓延る地獄へと変えようとしました」

「最後まで爪痕を残そうと、必死になって抗おうとしたんですね」

「はい。 しかし、縁優様は龍脈を使い、それすらも浄化しました」

「それもですか? 縁優さんがこの様な状態になったのは陰陽連の最後の悪あがき、濁気が原因ではなかったんですか?」

「そうでもあり、そうでもないのです」

「ど、どういうことですか?」

「ふと疑問に感じませんか?」

「何をですか?」

「この短期間で、様々な者達が力を手にしました……果たしてそれが本当に偶然だったのか?」

「何を言いたいんです?」


遠離さんは俺をジッと見つめ、その後縁優さんの方を見つめる。

すると、縁優さんの亡骸に違和感を感じる。


「うん? なんだ、あれは? 穴?」


そう、よく見ると、縁優さんの心臓部分に無理やり閉じた様な穴の痕跡があった。

閉じた穴は禍々しさを感じるドス黒い色をしている。


「縁優様は全ての濁気を浄化しようと集中しており、もっとも無防備な状態でした……そして、その時を待っていたかの如く、黒い雷が縁優様の胸を後ろから貫いたのです」


俺はもう一度縁優さんの胸を見ると、穴の周りには焼け爛れた様な跡がある。


「縁優様は濁気をあと少しで完全に浄化しきるところでした……しかし、何者かの手により、胸に穴を開けられ、制御ができなくなり、抑えていた濁気が暴走を始めました……そして、胸に穴の開いた状態では、濁気の暴走は止められないと考えた縁優様は……自身の体に濁気を取り込む事にしたのです」


ここまで全て順調に進んでいたのに、誰かは知らんが邪魔をしやがった。

ふざけるのも大概にしろと怒りが込み上げてくる。


「縁優様は濁気を取り込み終えると、この場所に赴き、自分はもう長くないと悟ると、自身の身を生贄とし、死してなおも濁気を抑え込みながら浄化ができるよう施し、この世を去られました」


すごい人だ……最後の最後まで一人で成し遂げ、仲間を守り抜いた……これほどの人はそうはいないと思うと共に、もし、縁優さんの後ろを任せられる人がいたらこの様な結末にはならなかったんじゃないかと残念に思ってしまった。


「しかし、ここ最近、縁優様の力が弱まった事で、濁気が漏れ出し、この城は魔導城、今風に言えばダンジョンへと変貌してしまい、悪鬼達が蔓延りだしたのです」

「そこへ、ちょうど俺が来た事で、蔓延っていた悪鬼達を倒した事で、俺に頼みたい事ができたと」

「はい。 おかげで、手間を省くことができました。 そこでお願いがございます」

「俺に悪鬼達を倒してほしいんですね」

「はい……央雅様には大変申し訳なく――」

「いいですよ。 やります、悪鬼退治」

「え……よろしいのですか?」


遠離さんは断られるのかと思ったのか、呆気にとられた顔を見せる。

もともと、レベルを上げるのが目的だったんだ。

ここに住んでいる人がいるとは思わなかったから、逆に、許可をいただけるのであれば気にせずレベル上げができる。

お互いにwinwinな関係でいられるではないか!


「それともう1つお願いを聞いていただけますか?」

「なんでしょう? 自分ができる範囲で構わないのなら大丈夫ですよ」

「ありがとうございます……濁気が無くなれば、縁優様の長きに渡るお勤めも終わりを迎えます……ですが、このままの状態というのもあまりにも心苦しく……しかし、濁気で汚染された縁優様をそのままにしとけば、何が起こるか分かりません。 どうか央雅様の手で縁優様を清めていただき、安らかに眠りにつける様、手伝っていただけないでしょうか?」


こんな願いを断れるはずがない。

俺は縁優の方を見つめ、遠離さんの願いを叶えるため頑張りますと誓うと共に、レベル上げをする自分をお許しくださいと心の中で伝える。


『ははは』


突然頭の中に、優しい笑い声が聞こえた。

ジャズが笑ったのか?


『私は笑ってはいませんが?』

「え、ちがうのか? 笑い声が聞こえた様な気がしたんだけど……?」

「? どうされましたか、央雅様?」


遠離さんが心配そうな顔で俺を見ている。

早くOKだと返答しなければ!


「あ、いえ何でもないです。 あ、返答が遅くなりました。 俺にできる事があればやらせてください。誠心誠意、頑張らせていただきます!」

「ありがとうございます……ありがとう……」


遠離さんは笑みを見せ、俺に感謝を伝えると、お辞儀をし再度感謝を伝えてくる。

お辞儀をした遠離さんは下を向いたまま、なかなか顔を上げないでいた。

下を向き続ける遠離さんに対し、かける言葉が見つからず、ただただ、遠離さんが顔を上げるまで、静かに天井を見つめていた。


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