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Fly Daddy Again  作者: 正導日明
16/22

歪みの形

「外鬼は人間だけではなく、妖怪までも狙い出しました」


ある意味想像はしていたが、当たってほしくはなかった。

しかし、それはつまり――


「そうして、外鬼は妖怪がもっとも集まっているここを狙い始めました」

「悪鬼と言い、外鬼といい、それよりも鬼の欲っていうのは終わりがない……まるで人間が悪鬼となって鬼を助けているみたいだ」

「はい……鬼は人間の欲を糧に成長していきました……鬼が人間を襲う理由がよくわかります。 まるで表裏一体……こうして大量の外鬼が続々と縁優様の城へと攻めに来たのです……ですが――」

「ですが?」

「ですが、妖怪を食い、力を付けた外鬼達がこぞって集まっても、縁優様には敵いませんでした。 それも完膚なきまでに」

「す、すごい……」


てっきりピンチなのかと思っていたら、一蹴しちまうとか、縁優様は怪物かと考えてしまった。

もしかしたら師匠達と同等の力を持っているかもしれない。

そう思ったら鳥肌が立った。


「縁優様は妖怪を取り込んだ外鬼さえも倒す程、余裕がございました。 しかし、そんな姿を見た周囲の陰陽師達は、悪鬼達、いえ、それ以上に縁優様を恐れだしたのです。 縁優様はただ、ただ皆と仲良く過ごすため必死になって頑張っていたというのに……」


自分よりも強い者、優秀な者を良く思わないのも人間の欲の1つでもある。

そういった人の思いというのは気付かないのか、はたまた、気付いてはいるが、現実を直視したくないのだろうと思えた。

こんな酷い時代に、助け合えない事に、俺の心は酷く落ち込んだ。


「縁優様は助けてくれと言われればすぐ駆け付け続けました。 人々は縁優様を慕い、悪鬼に怯えない生活が続いていくと、徐々に陰陽師、陰陽連は縁優様への態度を変えてきました」


おぉ!

これは心を入れ替えるパターン――


「とうとう縁優様が邪魔だと思い、陰陽連を辞めさせ出すのです」


違うのかよ!

ここはそうじゃないだろう!

縁優さんの頑張りを見て、そこは俺もとか、私も頑張ろうとか、あぁなりたいとか思うのが普通なんじゃないのか?

この世界は腐りきっている……あ、こっちの世界も変わらない様なもんか……

俺は縁優さんの方を見る。

何故だか胸に痛みが生じた。


「縁優様は陰陽連に属してなくとも、悪鬼退治を止めませんでした……身を粉にして無償で人、妖怪のために働き続けました。 しかし、陰陽連の連中は、縁優様の行動が目障りになってきました。 そうして、とうとうその時がやってきました……縁優様がいない隙を見計らい、陰陽連、そして……」


遠離さんの顔が曇る……そして、空気も一瞬で重くなる。


「そして、外鬼たちを従え、縁優様の城へと攻めて来たのです」


陰陽連は人々を守る事が仕事なのに、人々を苦しめる悪鬼たちと手を組むとかもう終わっている。

これも縁優さんが持つ力に対し、恨み、妬み、嫉み、そう言った感情が積りに積り、とうとう超えてはいけない一線へと突き動かしたのかもしれない。

そして、縁優さんが居ないのを見計らい、一番縁優さんが大事にしている人達を狙い、縁優さんの動揺を誘おうって魂胆だろうな。

そうでもしなきゃ縁優さんに勝つ事なんてできやしないだろう。


「しかし、縁優様はこの状況を想定していました。 敵意剝き出しでこの城に来る者がいれば、強力な結界を張る様にしていたのです」

「さすがですね」

「はい。 縁優様はそう言った状況が来るかもしれないと考えていました……いえ、縁優様は悪鬼達が攻め入ってくる事だけを願っていました。 しかし、ここ最近、陰陽連の動きが怪しく、もしもの事を考え、結界のプログラムを組み換えたのです」

「ほっとしました……このまま簡単に攻め入れられて終わってしまうのかと――」

「はい、簡単に攻め入れられてしまいました」

「はい? い、今何て?」

「簡単に攻め入れられてしまいましたとお伝えしました」


遠離さんは表情を変えず、淡々と攻め入れられるたと言う。

俺は何を言っているのか、正直理解するまでに数秒時間がかかった。

だって、ちゃんと縁優さんの結界は発動した。

縁優さんを超える者はいないって遠離さんは言っていた。

なら何故……まさか⁈

俺の心臓音が高鳴り、耳鳴りが聞こえだす。


「お気づきの通り、縁優様の結界を破壊した者が現れたのです」

「破壊って⁈ い、いたんですか⁈ 縁優さんの結界を壊す程の手練れが⁈ だ、だって、さっきは――」

「はい……いないとお伝えしました。 しかし、もし、何の情報もなく、前触れもなく、突如最強だと思われていた縁優様と同等の、いえ、怪物が現れたとしたら?」


とんでもねぇ……心がずっと休まんねぇ……

しかし、どうしたら縁優さんを超える陰陽師……いや、人とは言っていない……遠離さんは怪物と言っていた。

外鬼が相手にならないのに怪物とは大それた事は言わないはず……以前からいたとしたら、縁優さんだって警戒をするはず……だとしたら、急遽作られた可能性が高い……だが、そんなすぐに縁優さんと同等の力を手に入れられるだろうか?


「もし、鬼血の副作用に耐えた外鬼を喰らったとしたら? ましてや、妖怪を食い、さらに力を付け、進化した外鬼を喰らう者が現れたら?」


俺は遠離さんの言葉を聞き、そんな事……でも、妖怪を食い、さらに力を付けた外鬼だとしても、縁優さんには敵わないと言っていた……完膚なきまでに……なら誰が食らう……待てよ? 陰陽連は外鬼達と手を組んで……いがみ合っていた者同士が手を組む……お互いの関係が変わる程の事が起きた? ……って……まさか――


「人は一度一線を越えてしまえば、簡単に罪悪感は薄く、そして消え失せていってしまいます……ましてや、成果がでれば、なお欲は加速していくものです」

「そ、そん、な……それでも、だって、人を守――」

「秘密裏に計画していたんでしょう……縁優様に気付かれてしまう前に、辞めさせ、そして孤立させ、情報を遮断し、この時を待っていたのでしょう……陰陽連の連中は」


俺はすぐに悟る……陰陽師が外鬼を喰らったんだと……


新たな鬼が産まれたんだと……


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