鬼の住処
歩を進めると、徐々に明るくなっていく。
やはりどことなく社会などに出てくる城を彷彿とさせる作りである。
「このダンジョンはもしかして、城がダンジョンかしたのか?」
『名残がありますので、恐らくマナの影響により、ダンジョン化したのでしょう』
周囲を見渡して気付いたのだが、中は埃や汚れなどが一切なく、綺麗な状態を保っている。
だが異様な雰囲気が感じられる。
『敵反応を確認』
歩を進めていると、ジャズから注意が入る。
遠くから黒く蠢く何かがこちらに近づいて来るのを確認する。
「あれはゴブリンか?」
赤黒い肌をしたゴブリンが現れる。
『こちらはゴブリンではございません。 餓鬼とういうモンスターみたいです』
「餓鬼? まぁ、日本風にアレンジされた感じか?」
『その様ですね。 しかも数が多いです』
「そうみたいだね……見ただけで結構な数だよな」
『およそ100体います』
おぉ、100体か……いいんじゃないか?
肩慣らしにはちょうどいい。
俺は魔力練り始める。
「【身体強化:01】」
「グギャアアアアアアアアアアア――」
腹の出た餓鬼がけたたましく叫び出す。
そして、それと同時に、すごい勢いで一斉に俺に向かってくる。
俺は拳を握り、両足を広げ、腰を低く構え、両目を閉じる。
「ふぅぅぅ―――」
「グギャアアアアアアアアアアア―――」
ゆっくりと目を開けると、すぐそこまで餓鬼が迫っていた。
だが俺には焦りはない。
俺には餓鬼の動きがスローモーションに見えているからだ。
パァンッ
「グギャッ⁈」
乾いた音が辺り一面に響き渡る。
餓鬼は、隣にいた仲間の頭が無い事に気付く。
だが気付いてるからどうだって話だ。
パァン、パァン、パァン―――
俺は自身の拳を餓鬼の頭目がけてぶつけていく。
餓鬼の頭は風船の様にはじけ飛んでいく。
「さて、お前達で、どれ位レベルが上がるかな?」
俺の顔を見る餓鬼たちの顔に困惑さが見て取れる。
餓鬼たちは異変に気付き、その場に止まりだす。
だが、俺は容赦なく叩き潰していく。
+++++
「どうした? 来ないのか?」
「グギャ……」
餓鬼と対峙しだして30分ぐらいだろうか?
餓鬼を倒せど倒せどわんさか出てくる。
まぁそのおかげで俺のレベルも5上がり、レベルが10までになった。
餓鬼たちがいる奥の方を見ると、ゲートが存在していた。
そこからわんさか餓鬼が溢れているとジャズから聞く。
だが、俺にとってレベルが上がるのであればありがたいので、壊さずに餓鬼たちを倒していたが、これ以上はレベルが上がらないと踏んだ俺は、そろそろ壊して先へと向かおうと考えだしていた。
俺が一歩踏み出すと、餓鬼たちは少しずつ怯えが見え始める。
「さっきまでの勢いはどうした? 俺を食い殺そうと躍起になっていたじゃないか」
「グゥギィィ⁈」
俺が煽るような口調で、餓鬼たちに言葉を投げかけると、苦虫を噛んだ様な表情になる。
俺の言葉を理解しているみたいだ。
それだけこいつらには知力はあるんだなと考えていると、状況が一変しだす。
「グオオオオオオオオオオ―――」
肌がピリつく様な威圧を感じると同時に、雄叫びが響き始める。
「グギャギャアアアアア―――」
周りの餓鬼たちもその雄叫びを聞くと、威勢を取り戻し始める。
ゲートの奥からドスンッっと重い音を立てながらこちらに現れたのは、餓鬼とは比べるまでもなくがっしりとした体形と、推定約4mあるかという大きさの鬼が現れる。
餓鬼たちは自分達が踏まれないよう、その大きな鬼に道を作る。
「あっちの世界だとオーガに近いのか?」
『こちらの世界では重鬼と呼ぶみたいです』
「名前の通りな感じだな……」
見た目大きいが、果たして名前の通り、動きが鈍いのかな?
もしくは―――
「グオオオオオオオオオオ―――」
そんな失礼な考えを見透かされたのか、メチャクチャ殺意の籠った雄叫び上げる重鬼。
それと同時に俺に襲い掛かってくる。
「おっ! 意外と早い」
思っていた以上に動きが早い。
見た目で判断は良くないわな。
ドゴォ
俺がいた所に大きな拳が床に食い込む。
「まぁ、当たらないと意味がないんだけど」
「グオッ⁈」
俺は【インビシブル】を発動させ一旦距離を取る。
まぁ、重鬼の能力は把握した。
今のレベルならこいつも余裕だ。
重鬼は俺の姿を探していて、周りをキョロキョロと見渡している。
おっと、周りにいる餓鬼にどこにいるのか探させ始めたぞ。
まぁ、今の俺の状態では中々見つける事はできないであろう。
「フンガフンガ……グギャグギャ!」
「グオッ⁈」
お?
1匹の餓鬼が、俺がいる場所を指さしている。
どうやら俺の匂いを嗅ぎ付けたみたいだ。
「なかなか優秀なのがいるじゃないの」
俺はインビシブルを解除し、姿を露わにする。
「グオオオオオオオオオオ―――!!」
「グギャギャギャギャアアア―――!!」
俺が現れた瞬間、周囲の餓鬼は俺に向かってくる。
ファーストアタック同様の手順だ。
その光景を見た重鬼も俺もと言わんばかりに向かってくる。
「どうやらこの餓鬼たち諸共ぺしゃんこにするみたいだな」
こいつらには仲間を思う気持ちなどさらさらないのだろう。
「こいつらの社会も人間の社会と同じって事か……」
俺は床に手を置き、魔力を放出する。
「【炎舞】」
「グギャアアアアアアアアアアア―――⁈」
俺を中心に炎が波のように広がっていき、餓鬼たちを燃やし尽くす。
「グオッ⁈」
餓鬼たち諸共ぺしゃんこにしようと企んでいた重鬼は、餓鬼たちが燃えている姿を見て、急ブレーキをかけ、その場に止まる。
「ゲートからは仲間が出てくる気配はない……一騎打ちといこうじゃないか」
「グゥッ⁈」
あんなにたくさんいた部下たちが燃えてしまい、戸惑いを隠せずにいる重鬼。
「力には自信があるんだろ? お前の得意なスタイルで勝負してやるよ」
俺は重鬼の傍まで歩く。
「グオオオオオオオオオオ―――」
重鬼は俺に向け拳を振り下ろす。
ドゴオオオ―――!!!
「グゥハハハ―――」
「おい、まだ終わってはいないぞ」
「グオッ⁈」
俺をぺしゃんこにして倒してと思った重鬼は、気色の悪い笑い声をあげていたが、俺の声を聞き、笑いを止める。
「よっと!」
「グオオッ⁈」
ドゴォォォ――ン!!!
俺は振り下ろした重鬼の拳を、自身の手で受け止め、重鬼の拳を掴み、勢いよく投げ飛ばす。
「グオッ⁈」
重鬼は投げられた事に戸惑いを隠せずにいるのが伺えた。
それと同時に恐怖を感じた怯えを見せ始める。
「もぅこれ以上、ここにいるのは時間の無駄だな」
「グ、グオオ―――」
「うるさい」
バシュッ
「オ?」
俺は一瞬で重鬼の頭を捥ぎ取る。
重鬼は一瞬の事で、自身の頭を捥ぎ取られた事にも気付かず、死を迎えたのであった。




