少し過去編
二日に一回は更新したいと思います。
あと文字数もっと多いとか少ない方がいいとかあれば対応致します。まだ結構ストックあるので。
「おはようございます」
澄んだ声が事務所に響いた、声がした方を振りかえると容姿の整った女性が立っていた。
「・・・」
「おはよう、今日初日の初島さんだね」
見とれていたが副店長の挨拶で我に返り千田も挨拶をする。
「あ、ぉはようございます」
上手く声が出なかった、なんか緊張しているのかもしれない。
そんな千田を置いて副店長は話しを進める。
「基本、アルバイトの担当になるのがこちらの千田君ね」
「あ、はい!千田です、今日からよろしくお願い致します。」
気を取り直して、元気に挨拶をしながらもう一度初島さんをよく見る。
何度見てもすごい綺麗な人だなぁ、二次元の可愛い絵を見る以外でこんなに気持ちが動くなんて思わなかったなぁ・・・
でも、三次元の人はダメだ、いつか居なくなってしまうから。と心の中で思う。
そう、思い出すのは中学生の時の記憶。十年以上が経ち顔も思い出せないが、
「また来週会おうね」の言葉やあの出来事はずっと、ずっと、心に残っている。
★
「千田―、お前べっちゅー(別の中学)に彼女いるって本当?」
目の前の中学生の男の子は僕に問いかける。
「うん!いるよ、小学校の時に仲良くなってね」
僕はそう目の前の男の子に返す。
「最近の中学生はませてるなー」
「お前も中学生だろ」
と、他愛もない二人は笑いあう。
「でだ、彼女とキスとはしたの?」
「し、してないよ!」
唐突に来た質問に僕はびっくりして、顔を真っ赤にしながら答える。
「えーなんだよ、もしかして最近付き合ったとか?」
「今が中2の7月だから、もうちょっとで一年かな」
言われてみれば確かに、一年経ってもキスしたことないのは、遅いのかも知れない。
実際、今の中学生事情がわからんから何とも言えないが。
でも恋愛ってやっぱり自分達のペースでいいと思うけどな。
「一年経ってもそれはやばいって!あ、でもべっちゅーだとあんま会えないのか」
男の子はからかい半分に焦らせてくる。
ただ、そう、彼女とは電車で乗り換えを挟まないといけない距離で自転車だと2時間ほど、中学生にはちょっと遠い距離で中々会えないのは事実だ。
「会えるのは数か月に一回ぐらい、前会ったのは春休みの終わりの頃だね」
「へぇー、でもどうやって連絡とってるん?お前携帯無いでしょ」
「向こうは携帯持ってるから、第三土曜日の午前中に公衆電話からかけてるよ」
「なにそれ漫画っぽいてか家電は?、はぁーもう、話聞いてたらおなか一杯になってきたわ」
「家電は親に聞かれたくないから使わん。彼女いいだろー、しかも今週の金曜会えるんだ」
「あー、もういいよ、それより大健闘スタブラの話しようぜ」
「おーいいね」
僕と男の子はその場を後にする。
金曜日の午後、僕は人一人が入れそうな祠?がある神社にいた。学校は午前中授業で終了し、
暑い中ずっと僕は待っている。待ってる時間は凄く長く感じるのは本当だなぁと思っていると。
「久しぶり!」
ずっと、ずっと待っていた彼女の声が聞こえた。
「久しぶり」
彼女をみながら僕は挨拶を返す、彼女を見た瞬間から頭の中には待っていた事なんてもうどっかにいっており、どうでもいい事を考える。
・・・いつも数か月に一回しか会えないから、最初の挨拶は決まって久しぶりなんだよなぁ、バリエーションとか増やした方が面白いか、、、
「元気にしてた? それと今他の事を考えてたでしょ」
・・・彼女にはばれていたみたいだった。
おかしいななんでばれるんだろ。やっぱ女のカンってやつなのかな・・・かなわないなぁ
もういっそ聞いてみるか。
「元気にはしてたよ、それよりなんで他の事考えてたってわかるの?」
「話すとき基本相手の目を見て話すから、何かを考えてるときは反応悪くなって、全然違う方見てるよ」
「え、まじ?」
「まじ、まじ」
等と他愛もない事で盛り上がりつつ、待ってる時から思ってた事を口にだした。
「流石に七月暑いから、どっか涼しいところ行こうよ」
先に来てずっと外で待ってたけど、マジで暑い、いや熱い。少しでも早くクーラーのある所に逃げたいと思っていたが、この待ち合わせ場所が彼女に一番近い場所だからここで待っていた。
「りょ!どこいく?」
彼女は元気にそう答えた。
「行きたいところは?」
「特にないよ」
「僕も無い」
「じゃあ。よく行くショッピングモールのフードコートでもいこっか」
「ん、わかった、ついてく」
二人はそのまま近くのショッピングモールへの道を辿りながら、この数か月の話を楽しくしていた。
「それでさー、さっ ちゃんがさー」
道すがら話している中で僕はずっと聞き手に回っていたが彼女は話すことが尽きず楽しそうにしていた。
それを眺めているだけで幸せな気持ちになりつつ、そうこうしている内に目的地のショッピングモールに到着していた。
「あ、私見たいのあったんだ」
「見たいの?映画?」
そう聞くと彼女は首を横に振る。
「ううん、ウィンドウショッピングってやつよ」
「ウィンドウショッピング?」
「ほしい物を探すの!そしていつか買ってもらう」
「そうだね、僕はまだ買ってあげれないから、欲しい物選んで覚えておいて」
中学生の僕じゃ、月のお小遣いはたかが知れているしそれも公衆電話やこうやって会うために無くなってしまう。
彼女もそれをわかっていてくれて、欲しいから買ってなんて強請ったりはしない。
「ふふふー」
買う事が出来なくても、楽しそうに横を歩いてる彼女を見ると一緒にいるだけでこっちも楽しく、幸せになってくる。
僕は彼女を見ながらいつか一緒に居るだけで楽しくさせてあげられる人になりたいなと内心思いつつ、
買い物・食事、一緒にいるこの瞬間が凄く楽しんでいた。
一通り買い物も終わり、フードコートで駄弁っていると、
「もうこんな時間なんだね」
彼女が携帯の時計を見ながら言う。時計は午後4時過ぎを指していた。
中学生の僕らは門限が6時頃な為、もうそろそろ帰る時間だ。
「そうだね、一緒に居ると時が経つのが早いね」
「うん、ほんとにね」
「そしたら来週のお話しよっか」
そう、今日二人で集まったのには理由があった、それは、来週の祭りの予定を決める事!
電話で決めてもよかったが、やっぱり会って待ち合わせ場所とかを決めようってね。
「うん、でもそろそろいい時間だから歩きながらはなそっか」
「いいよー」
席を立ち帰り道、二人が別れる場所へ歩き始めた。
「一応、午後1時から祭り始まるけどどーする?」
僕は彼女に問いかける。
彼女は少し悩む仕草をして答える。
「着替えたいから、もうちょっと後がいいなー」
「着替え?」
「うん、着替え」
「そっか時間かかるもんね女性の着替え」
「なんか、勘違いしてそうだから言うけど、浴衣のね」
「あー」
ここで僕の察しが悪かったことに気づきちょっと恥ずかしくなって顔を背けた。
まぁ、少し浴衣姿も可愛いだろうなって思ったのもあるけど。
背けていると横から彼女がニコニコしながらこちらを見ている視線を感じる。
「無駄に察し悪いときあるよね」
「うるせー、察しが悪くてすみませんでした。」
「ふふっ」
傍から見てもあまあまにイチャイチャしていると、いつも別れる交差点にたどり着いた。
「あっという間に着いちゃったね」
彼女はそう言った。
「本当にね、まぁでもまた来週会えるし」
僕は来週を楽しみにし笑顔で言葉を返した。
「そうだね」
彼女は言った。
「また、来週会おうね!」
そう言った。