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パパに許可をもらって、厨房に足を運ぶ。
悲しいかな、貴族令嬢は料理などはしない、
例えお菓子といえど、自分で作る事はできないだろう。
そう思いながら、厨房の扉をノックする。
「はい」
そういいながら、扉がバンと開けられ、
迷惑そうな顔が覗く。
その顔に少し気おされながらも、何とか言葉を紡ぐ。
「ごめんなさい、料理長と話がしたいのだけど・・・」
「これは、フェデリアお嬢様!失礼致しました!!!」
料理人はあわてて、料理長を呼びに行ってくれる。
しばらくして、ガタイの大きい料理長が、
のっそりと姿を現した。
「旦那様から、お話は伺っています。
しかし、いかんせん忙しいもので・・・
もし、娘のリタでよろしければ、
少しは料理の心得があるので、
お役に立てるかと思いますが・・・・」
「ぜひ、お願いするわ」
そう言うと、おずおずとした、
左右に三つ編みをした13歳ぐらいの少女が、
姿を現した。
こんな小さな子供が働いているんだ・・・
この国には小学校がない、当然、中学や高校も、
裕福な家庭は、家庭教師を呼び、勉強できるが、
ろくに文字の読み書きもできない人が大半なのだ。
義務教育まではいけなくても、
せめて、読み書き、計算ぐらいはと思うが、
この世界では、紙がほとんど流通していない。
当然ペン・インクなどと言う物も、
一部の人間しか使わないもの。
本もかなり貴重な物なので、
簡単に勉強しましょうとは言えない環境だ。
「レシピを書いてきたの、
この通りに作って欲しいのだけど、できるかしら?」
文字が読めるか不安になりつつも、
メモを渡すと、まじまじと、メモを見始めた。
「はい、材料はそろっているのでできると思います」
メモを読めた事に驚いて、リタをみると、
頬を赤くして、もじもじとしている。
「文字が読めるの?」
「はい、食材だけですが、何が入っているか
書いてある箱を見て覚えました」
「そう・・・・」
「ただ、これは読めません」
そう言われた文字を目で追う。
「これは”まぜる”と読むのよ」
そう言って、ボールに入った物を混ぜるジェスチャー
をする。
他にも、細かい事を指示して、後はリタに
任せる事にした。