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ロイは、元々隣国の諜報機関の兵士で、
この国の事を探っていた。
その事が、裏の世界でバレ、
機密事項は話せず、書けないように呪いをかけ、
奴隷の身分に落とされた。
ほとんど、役に立たない奴隷は処分される。
すぐ殺されるとふんだのだろう。
そうすれば、直接手を下したと、
隣国から目をつけられる事もなく、
穏便に事が済む。
しかし、ロイは私が救ってしまった。
ロイが言えず、書けずの事は、
両国の機密の事で、
その状態を解除するのは、奴隷印を消すしかなかった。
奴隷印の解除は強力で、
ほとんどの呪いも、同時に解除されるからだ。
そして、その両国の情報から、
私が狙われている事、ドラゴンの魔石を渡さないと、
隣国が攻め込み、戦争が起こる事を教えてくれた。
「戦争を回避してくれた事は分かった、
しかし、ドラゴンの魔石は、
もう隣国に渡ってしまったが?」
私とロイは微笑む。
「私が性別を偽っていたのは、
覚えていらっしゃいますか?」
ロイの話を聞いて、ネット小説の中にあった、
ドラゴンの魔石が隣国に渡るのは、
どうしても避けられない事だと分かった。
だったら・・・
「偽物か!?」
私はロイに促されて、立ち上がる、
セレディウス様もそれに続く。
王宮の宝物庫に入り、
大量の品であふれかえっている中から、
大きな青いガラスのような石を出す。
「これが、本物のドラゴンの魔石です」
「では、ルチアナ王女が持ち帰ったのは・・・」
「私が用意した、ドラゴンの魔石と
思い込ませる効果を持った、単なる魔石です」
「君は・・・・」
「まあ、隣国との関係の中で、
我が国にドラゴンの魔石がある事は、
大きな声では言えませんが、
この事を知る我が国の貴族は、
セレディウス様が王になる事に、
反対する者はございませんわ」
セレディウス様は、私を抱きしめる。
「君を王妃にする、そして世界で一番幸せな
女性にすると誓う」
「もう幸せですわ」
セレディウス様を抱きしめながら思う。
大きくストーリーを変えてしまったけど、
この人と、この国の人が幸せになれるのなら、
そんな物語も決して悪くはない。
物語に登場しないはずの子爵令嬢は、
幸せな気持ちで、王太子の胸に顔をうずめた。




