6-9 (王太子視点)
ドラゴンが現れたと、辺境伯から情報が入った、
あわてて、騎士団を編成して現地へ向かう。
スタンピードが起こったばかりだが、
原因を考えると、ドラゴンがやってきた為、
モンスター達が大移動したと考えると、
しっくりくる。
ドラゴンはモンスターの中でも、
最強に強い存在だ。
しかし、騎士団の面々を見渡し、
この面々なら、十分戦えると予測を立てる。
しかし、これは奇跡と言っていい。
なぜなら、騎士団の騎士は、
最前線でスタンピードのモンスターと戦い、
多くの者が大怪我を負ったからだ。
この中の3分の1は、フェデリアの魔石がなければ、
命を失っていたのは確実だ。
例え生き延びたとしても、怪我が原因で、
まともにドラゴンと対峙できなかっただろう。
しかも、そんな奇跡の魔石を、
さらにいくつかフェデリアは用意してくれたのだ。
それらは、一緒に来てくれる回復魔法師に
手渡しており、その事が騎士達の
気分を高めてくれている。
フェデリアには本当に感謝しかない。
なぜ、これ程の魔石を用意できたのか、
聞いてみたが、古代の文字を使っているという事で、
この文字が悪用されれば、大災害になるので、
伝えるのは慎重になっているとの事だった。
大きな力を手にして、名誉を得ようとするのではなく、
国や民の事を考えてくれている人柄に、ますます
惹かれていく。
男と思い込んでいた時は、本当に王太子の座を
失う覚悟もしていた。
まさか自分が恋で、ここまで心が揺れるとは
思ってもいなかった。
今は女性だと知り、更に愛おしさが溢れて仕方がない。
フェデリアに安心して暮らしてもらう為にも、
ドラゴンは必ず討伐しないと。
ドラゴンさえ倒してしまえば、ドラゴンの魔石が手に入る。
ドラゴンの魔石は、魔力が無くなるまで、
モンスターの襲来を少なくする効果があるので、
国はかなり安泰するだろう。
これが山場だ。
お守りにと言ってくれたブレスレット、
必ず左手に着けてくれと言われ、
今も私の左手で輝いている。
魔石もついているようだが、
どんな効果があるのかは分からない。
そして、単なるお守りとして、
身に着けていたブレスレットが、
ドラゴンの攻撃が当たりそうになった時、
いきなり発動して、バリアを作ってくれた。
そして、そのバリアができた時、
ドラゴンが怯み、一気に攻撃できたのだ。
あのブレスレットがなければ、
確実に左手は失われていただろうし、
ドラゴンに攻撃するタイミングも、
もっと難しいものとなったはずだ。
フェデリアの護衛騎士が、
「フェデリア様こそマリア様」
と言っているのをよく聞くが、
その言葉が本当に身に染みて分かった。
フェデリアこそ私の為にある存在なのだ、
そして、フェデリアにとって、
私こそ必要とされる存在でありたい。
お菓子作りでの国の発展、
魔石作りだけではない、
フェデリア自身に惹かれているのだと断言できる。
心から愛している。
一生を賭けて、愛しぬいてみせる。




