5-3 (王太子視点)
ルイとロイに、街で会うようになった。
理由はルイが、スタンピードが起こった時、
大聖堂で魔石で回復魔法を強化したからだ、
魔石で魔法を強化できるなど聞いた事もないし、
その威力は想像を絶する物だった。
奇跡と言っていい。
多くの人が命を失うはずだったのに、
それが余す事なく救われたのだ。
王太子として、お礼がしたかった、
そして、聞きたい事もいっぱいあった。
しかし、ルイはいつの間にか姿を消しており、
周りの者は、女神マリアの使いだったのだと、
信じる者までいる有様だ。
従者に調査をさせたが、子爵家にロイと言う
者はいるが、ルイと言う者はいないとの事だった。
子爵家は、フルーツケーキを発案したり、
クッキーやパンケーキなどで、
何かと貴族の中で有名な一家である。
とは言え、それが魔石とは全然結びつかない。
自分で調査しようと、2人に接近したが、
何の成果も得られなかった。
「また、ルイと会うおつもりですか」
従者のルーカスが話しかける。
「ああ、また街に現れたら、報告してくれ」
「しかし、魔石については、
何の情報もございません、
もうお会いする必要はないのでは?」
「まあ、そうなのだが、
魔石とは関係なく、単に会いたいと言うか」
そう言うと、ルーカスが溜息をつく。
「ルイの事が気になるのですか」
素直に頷く。
「ルイといると癒される、
裏の駆け引きも必要ないし、
無理な笑顔を作る必要もない
できるなら、ずっと傍にいて欲しいぐらいだ」
そう告げると、もう1人の従者リュカが話しかけてくる。
「会いたくてたまらない、まるで恋人のようですね」
その言葉にはははと笑う。
「ルイは男だよ、今まで男性を愛した事はない、
特別である事は認めるが、意味が違うよ」
リュカは、その答えが返ってくるのを、
予想していたかのように、頷く。
「まあ、ルイは平民のようですし、
例え女性であったとしても、
妃として迎えるのは不可能ですね」
「今のままでいい、
気兼ねない友人と言うのが、一番合っている」
その言葉に、従者二人はうなずき、
その後は、公務の話へと移っていった。




