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「よろしかったのですか?フェデリア様」
ロイが馬車の中で語りかけてくる。
「いいのよ」
そう言って、性別を偽るネックレスを外す。
ロイには、漢字の事は伝えてある、
研究にも立ち合う事もある為、
その力を使ったと気づいたのだろう。
あのまま、大聖堂にいたら、
英雄になれて、多額の報酬がもらえたかもしれない、
しかし、お金には困っていないし、
名誉など与えられれば、逆に話せない事が多くて困る。
それに、何より、王太子とヒロインの出会いを、
邪魔したくはなかった。
お似合いだったな、あの二人・・・・
物語のヒーローとヒロインという立ち位置からか、
庶民とは明らかに違うオーラを感じる。
日本で言うと、芸能人みたいな?
モブですらない私は去るのが一番だ。
「ロイありがとう」
「何がですか?」
「いえ、夜遅くに連れ出してしまったから」
「そんな事、気になさる必要はございません、
それよりも、フェデリア様こそ、
マリア様だと、改めて認識致しました」
そんなロイに、ふふふと笑う。
ロイは、私が何かするたび、
女神だといって大袈裟に褒める。
そんな大層な事はしていない、
これは、ほんの罪滅ぼし。
モンスターが襲う事を知りながら、
何もしなかった事に対する、贖罪なのだ。
「流石に眠いわ」
「寝てしまわれてもいいのですよ」
「そうね」
そう言って馬車の中で横になる。
子爵家の馬車は、上位貴族に気を使い、
外見も大した事はないし、
内部も質素な作りだが、
座席などは、王家の物とも引けを取らない程の、
上質な物を使っている。
そんなふわふわの座席に横たわり、
多くの人が助かった事に、
心から満足して、眠りにつく。
転生して良かった・・・・
そして、そのまま意識を手放した。




