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大聖堂に到着し、怪我人がいる場所に
足を踏み入れる。
大きな大聖堂が、狭く思える程、
大量の怪我人が、そこにはひしめき合っていた。
血の匂いと、うめき声で、
くらくらしそうになる。
これが・・・現実・・・・・
食べ物を渡してしまうと、
何もできずに、その光景を呆然と眺める。
回復魔法の使い手が、
重症者から回復魔法をかけているが、
その魔法はお世辞にも強いとはいえず、
ここにいる人達の大半は助からないと、
容易に予想がついた。
現在の日本のような外科治療の知識もない、
薬草と回復魔法だけの世界。
人々が出入りするのを邪魔しないよう、
大聖堂の端で、壁にもたれながら見守る。
本当に、何で転生したのだろう・・・
この事が起こる事は分かっていた、
でも何もできなかった、いや、しなかった。
すると、王太子の到着が告げられ、
大聖堂は一気にざわめく。
王太子は今までモンスターと戦っていたのだろう、
その鎧はモンスターの返り血で、赤く汚れている。
あれが王太子か・・・
笑顔ならさぞ素敵だろうと思わせる、
整った顔だちだが、
今は焦りと苦しみが、顔に表れている。
そうしてるうちにも、どんどん人が死んで、
大聖堂から運び出され、
そして、また新しい怪我人が運ばれてくる。
しばらく、王太子が采配を振るうのを眺めていると、
再び大きな歓声が上がった。
聖女の集団!
回復魔法を使える女性が集団を作り、
聖女として人々を助けている事は知っていた、
流石はプロフェッショナル、
悲惨な現状に戸惑う事もなく、
てきぱきと治療を行っていく。
あっ!
そこにネット小説に書かれた人物を見つけ、
息を飲んだ。
ヒロインだ!
ヒロインは真剣な目で、回復魔法をかけていく。
聖女の集団のおかげで、少しだけ好転した、
しかしあくまで少しだけだ、
あまりにも怪我人が多すぎる。
見ているしかできない私の耳に、
聖女の集団のリーダーの会話が飛び込んでくる。
「王太子様、この数だと、もう重傷者は救えません、
残酷ではございますが、助けられる者に限り、
回復魔法をかけようと思います」
「駄目!」
私は思わず大声で叫び、王太子を始め、
複数人の視線を感じていた。




