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モブですらない登場しない人物に転生しましたが、 王太子様が私に夢中みたいです!?  作者: あいら


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3-5

「おじさん、この人達は?」



小太りで、少しガラの悪そうな男の人に、

話しかける。


その見かけによらず、とても愛想のいい、

笑顔で答えてくれた。



「おや、お坊ちゃん、奴隷をお求めで?

 しかし、親御さんと相談してからの方が、

 いいと思うよ、またおいで」



奴隷と聞いて、頭がガンと殴られたような思いがする、


奴隷が存在するんだ・・・


市に並んでいる男女を見る、

中には病気なのだろうか、座りたいのを、

必死に我慢して立っている人もいた。



しばらく、何も言えないで、

奴隷の人達を見ていると、

恐らく初めて奴隷を見たと感じたのだろう、

男が話しかけてきた。



「この奴隷達はもう処分品だよ」


「処分って・・・」



思わず聞き返して、すぐに意味が分かる。

殺してしまうって事だ。



「奴隷について聞きたいかい」



何も考えず、うなずく。



「奴隷になるのは、犯罪者か、貧民か、

 戦争で負けたか、まあそんな所だ」



無言で話を促す。



「普通、男は鉱山で働かされ、

 女は娼館に売られる。


 しかし、こうやってどちらも買い手がつかなかった

 者達が、市場で売られ、

 それでも、買い手がつかなかったら、処分されるのさ」



よくよく奴隷達を見ると、確かに、病気や怪我など、

普通の状態ではない事が分かる。


そうやって奴隷を眺めていると、

何とか立っていた奴隷が、その場に倒れこんだ。



「もうこいつは駄目か、おい!処分してしまえ」



そう男が言うと、裏の荷馬車から、

数人の男が現れ、倒れた人を連れていった。



今、目の前の光景に、呆然となる。



魔法が存在し、モンスターが跋扈する世界、

日本と違う事は分かっているが、

私にとって衝撃的すぎた。



「まあ、この奴隷達にとってみれば、

 処分された方が幸せだろうよ、

 こんな奴隷を買うのは、人の苦しい顔

 を見て喜ぶ変態ぐらいだろうからね」



そんな言葉が、耳の左から右へと流れていく。



そんな時、1人の奴隷と目が合った。

綺麗な青い瞳、体は鍛えられ、

ろくに食べていないのが分かるほどやつれているが、

それでも、筋肉の凄さが分かる。



しばらく、その奴隷を眺める。



「この奴隷が気になるのかい?

 しかし、止めた方がいいよ、

 この奴隷は呪いがかけられている。

 

 そのせいで、口がきけず、両手が動かない、

 買った所で、維持費がかかるだけ、

 まったく何の役にも立たない」



奴隷商人にとって、商品となるのは、

鉱山や娼館に売れる人で、

この市場に来ているのは、一応決まりだからと、

説明していた。



「この人頂戴」


「おいおい、話聞いていたかい?」



私はうなずきながら答える、



「呪いで、口がきけず、腕が動かないんでしょう?」


「そうだ、何の役にも立たない、

 解呪はまず無理だろうし、損しかないよ」


「大丈夫」



それからも男は、食費もかかるし、

トイレも世話をしなくてはいけない、

それも分かっているのかと、こんこんと諭してきた。



それでも、私の意志が固いと分かると、

はあ、とため息をつき、

ぽつりと言った。



「お金は持っているのかい」


「少しは」



銀行には王からもらったお金や、

お店の売り上げの一部など、かなりのお金がある、

しかし、今日は街の散策なので、

そこまで大金は持っていなかった。



「財布を見せてごらん」



男に言われ、素直に財布の中身を見せる。



「金貨がある・・・これでいい」



そう言って、金貨を一枚財布から取り出す。



「本当にいいんだね」


「うん」


「じゃあ、契約するよ」



私はうなずく、



元々奴隷は、奴隷印が押されているが、

雇い主がいる場合、その雇い主に逆らわない、

魔法の印をさらにかける。


中には犯罪者も販売するので、

この魔法はかなり強力で、

特殊な契約となっている。



様々な注意や契約に関する事を教えてもらい、

その通りに、私の血を契約に加える。


男が特殊な鏝を使い、購入する事にした奴隷の

胸元に刻印を刻む。


奴隷は、口がきけない為、

声には出せないが、顔をしかめているため、

苦痛があるのだろう。



「さあ、これでこの奴隷は坊ちゃんの物だよ」


「ありがとう」



奴隷の男は、手の拘束を解かれ、

自分の身に起こった事に呆然となっているようだった。


市で売られる奴隷は、処分が当然、

買われるのは、ほぼ奇跡に近い事と聞いたから、

仕方ないのかもしれない。



「歩ける?ついてきて」



奴隷に話しかけると、はっとした顔をして、

ゆったりと歩き始める。


私は頷いて、先を歩き始める。



市を歩くと、奴隷印がある人間が歩いているのが

珍しいのか、嫌な顔をして、じろじろと見られる。


これは、クッキー屋は諦めて、

早く屋敷に帰った方が良さそうね。


奴隷がついて来ているのを確認しながら、

馬車までの最短距離を歩いた。

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