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馬車に乗り込むと。
「本当に行くのですか?お嬢様」
と御者がおずおずと尋ねてくる。
そんなに、この外出が重大なのかしら?
そう思いながら。
「お願い」
と一言だけ言う。
すると滑るように馬車は動きだし、
久しぶりの馬車に、気分は高揚していた。
お茶会の出席で、馬車に乗った事はあるが、
前世の記憶を思い出してから乗るのは初めて。
ガタゴトと車輪が回る音を聞きながら、
お姫様気分~と、楽しんでいた。
最初は元々の記憶で、見慣れた風景が広がる。
石造りかレンガで作られた、重厚な建物がいくつも並ぶ、
おそらく高級住宅街なのだろう、
一軒一軒が、小さなお城なのでは?と
思わせる程の敷地を持っている。
門から少し覗く庭は、綺麗に整理され、
ガーデン巡りをするだけでも、楽しめそうだ。
そうだ、これもつけないと。
高級そうな作りの箱から取り出したのは、
魔石が入ったペンダント。
ペンダントには”性 偽”と刻印されている。
これで女の私は、見た目通り男にしか、
周りの人に思われないはず。
今日はこのペンダントの効果の確認も兼ねている。
魔石は重要視されていないので、
魔石で性別を偽ると言う概念がない。
性別を偽る魔法もないので、誰も魔石の効果や、
魔法だと疑ったりはしないはず。
つまりかなり高確率で、性別をだませるはず!
そう思いながら、ペンダントを首にかける。
どんどん馬車が進むと、
真っ白な壁と、格子状の木が美しい家々が並ぶ。
お花を飾るのが普通らしく、2階の窓際には
プランターから花が溢れんばかり咲いており、
街並みをさらに華やかにしてる。
とうとう、フェデリアの人生でも、
足を踏み入れた事がない街へ来たのね!
正真正銘初めての景色に、胸は高鳴る。
ずっと来たかった、憧れの街!
頭にある地図を思い返しながら、
その風景に魅入っていた。




