ヘタレで頑固。だけどちょっと憎めない私の父の話。
――山芋を入れるとな、これがまた美味くなるんだよ。それが私の父がお好み焼きを作る際の口癖だった。
昭和の二〇年代に生まれた頑固な親父。好き嫌いが多く、野菜嫌いな父にとって、お好み焼きとは唯一のバランス栄養食だった。
私が小学生の頃。そんな父がある夏の晩、お好み焼きを作ると唐突に言い出した。
電子レンジの使い方もマトモに知らない亭主関白な男が、料理をすると言って腕まくりをする。私と母は、己の目と耳を疑った。
しかしいざ台所に立たせてみると、父は意外にも手馴れている様子だった。手際よく材料を切り、小麦粉を入れてシャカシャカと混ぜる姿はとても様になっている。話を聞いてみれば、どうやら父は幼い頃、縁日の屋台で小遣い稼ぎをしていたらしい。
お好み焼きに山芋を入れるとふんわりする、それに具が無くてもボリュームが出るんだよ。父は得意気にお好み焼きをヘラで返す。だがその直後、お好み焼きはホットプレートの上でグシャリと不細工な形に崩れてしまった。
そういうこともある、人生とはそういうものだ。と良く分からない言い訳をしながら冷蔵庫を開け、自分だけ缶ビールを開けてグイッと呷る。肝心なところで下手をこくのが実に私の父らしく、母と顔を見交わせて笑い合った。
そうして皿の上には、お好み焼きらしき物が乗せられた。女性の顔がトレードマークのソースに鰹節、それにマヨネーズ。青のりも忘れてはならない。それらで彩れば見た目はともかく、味は屋台で食べるそれに近いものだった。
どうだ、美味いだろと自慢げに訊いてくるので、私は素直に美味しいよと答える。父はぶっきらぼうにそうか、とわずかに口角を上げ、鉄板の熱でぬるくなったビールを満足そうに飲んでいた。
そうして十数年の月日が経った。
時代が変わっても、食の習慣というのは続いていくものらしい。今では私がお好み焼きを作る番になった。
あの時、父が言っていた良く分からない人生の教訓も、今では何となく分かるようになった。
昔よりも入れる具の種類は増えたが、山芋は必ず入れるようにしている。父は食が細くなってしまったが、代わりに孫がよく食べる。口の周りにまでソースを塗りながら、私の作るお好み焼きを美味しいと頬張っている。
父はそんな孫たちの顔をニヤニヤと見ているが、次はどんなウンチクを語ろうかと画策していることだろう。それが何だか私はおかしく思いながら、缶ビールを片手に次のお好み焼きに取り掛かった。
※バリバリの関東人なのでちゃんとした作り方は家族全員分からないのでごめんなさい。
※ちなみに私はモチとチーズが好きです。あとめんたい。
みなさんも好きな具材やオススメがあったら感想とかで是非教えてください。
(ぶっちゃけコレ書いた理由はそれが一番知りたかったというw)