第一章エピローグ
陽が昇る直前に、エレーナは髪と目の色を変え『ミア・ブロンズ』として【転移】を使い王都へと戻った。
馬を元の場所に戻し、バーダリーをその辺に放り、クレアを自室のベッドに寝かせる。
流石に疲れたという本音は隠しきれない。
クレアの寝る自分のベッドに寝ることはできない。空いた場所に顔を埋めるように、病人を看病していたら寝落ちてしまった、というような体勢で意識を手放す。
明日は学園も休もう。昼まで寝よう。最後にミアが思ったのは、そんなことだった。
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朝日に顔を照らされ目覚めたクレア・プレトリアの意識は曖昧だった。
普段ならば寝つきも寝起きもスパッとする彼女だが、どうも意識を失う前のことがハッキリしない。
まず彼女は自分がどこにいるのか、と辺りを見渡す。
寮の部屋――生徒の個室は共通のつくりなため、自分の部屋か他人の部屋かを判断するのに時間を要したが、どうやら後者のようだ。
自分の足元でベッドに突っ伏すミアの姿を見つける。
そして思い出した。自分たちは奉仕活動中、路地裏に現れた大男に襲われ――
「ッ、ミア!」
起きてミアの肩を掴む。
感触は本物だ。夢ではない。自分たちは何かがどうこうなって結果的にこうして寮に戻っている。
「んぅ……」
「っ……生きてるー……」
記憶が曖昧だ。
ミアはあの大男に壁に叩きつけられていたし、自分は首を絞められていた。
あの場にいなかったバーダリーがどうなったのか、あの大男がどうなったのか、『何も分からない』という状況がクレアを不安にさせた。
「ミア、ミア!」
「ぁ……うるさい……」
「起きて!」
何度も肩を揺さぶって、ようやくミアを起こすことができた。
欠伸をし、恨めしい目でクレアを見つめるミア。しかしその目には、どこか安心したような感情も見受けられる。
「ミア大丈夫!?ここは!? アイツどうなったの!?」
「あうあうあうるるさい」
ぐわんぐわんとされるがままなミア。眠気のあまり抵抗する気が失せている。
「私たち、アイツに襲われて……」
「んぁ……もう、大丈夫……」
「えっ?」
「全部…………終わった、から……寝かせて」
ミアは気絶するように眠った。
元々朝に弱い彼女は、クレアは知らないがまだ2~3時間ほどしか眠れていない。
一の刻を告げる鐘が鳴っても、彼女は起きようとしなかった。
「…………」
クレアは目覚めたばかりだというのに、どっと疲れたような感覚に襲われた。
既に登校しなければいけない時間だが、どうしてかそんな元気が湧いてこないのだ。
彼女のとった選択は、ミアと共に寝ることだった。
長い間眠っていたのにまだ寝れるのは、クレアにとって初めてのことだった。
「あ、ミア。ほら。ミアも横にならないと」
体勢からして、一晩中自分を看病していたものと思っていたクレアは、ベッドにミアを引き上げる。
添い寝する形となったが、同性同士なので気にしない。
「ん……」
「本当はいけないけど、今日くらいいっか。おやすみ、ミア」
誰もが見惚れるような愛らしい寝顔を見ながら、クレアはひとまず何も気にしなくていいのだと決め、目を閉じた。
第一章はここまでです
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