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1話「異世界召喚された者」


 「うわぁぁぁあああ!!!いいいいつまで追いかけてくるんだよおおぉぉぉぉ!!!」

 「にゃ、にゃぁ…にゃあにゃにゃ…にゃーにゃー…」

 「いやごめん!猫語はちょっと分からないんだけど!けど絶対置いてなんか行くもんか!だからもう少しだけ、頑張ってくれ!」

 「…。」


 目を赤く光らせたドラゴンに追いかけられている。

 羽が生えた傷だらけの猫を抱え、とにかく全力で走っている。





――――1日前。




 心地よい風に、木々の隙間から差す太陽の暖かさで目を覚ました。

 「こんなにゆっくり寝たのいつぶりだろう〜!んん〜気持ちい…い…なぁ……はへ!?」


 辺りを見渡すとなぜか大自然の中にいる。

 空を見上げると見た目は猫そのものだが、明らかに違う。天使のような羽が生えている動物が飛んでいるのだ。


 「いやいやいやいやぁ…疲れてるのかな〜バイトいっぱい働いたし疲れてるんだようんうん。猫って空飛ばないし羽も生えてない、これは夢だよね。」


 こんなにも綺麗なら覚めるまで辺りを冒険してみようと歩いてみる。

 小鳥たちのさえずり、色とりどりの花が風に揺れて、角が生えてるうさぎが滝行をしていた。

 見たこともない世界に心の底から感動していた。


 「…すごくきれいな場所だなぁ。家族と一緒に来たいなぁ〜。」


 また歩き出すと前方に立派な木が見えてきた。

 しかし根元に弱っている猫が丸まっていた。

 僕に気が付くと、精一杯威嚇をしてくるが弱々しい声と立っているのがやっとな姿をみて居ても立っても居られなかった。


 「っ!きみさっきの!大丈夫?どうしよう、ちょっと待っててッ!」


 急いで汲んできた水をゆっくり飲ませてあげ、近くの木に生っていた林檎を石で小さく割って食べさせてみた。

 落ち着いたようでまた丸くなって寝てしまった。

 1匹だけにするのは心配だったのでまた目が覚めるまで側で見守る事にした。



 陽は沈み、星がとても綺麗に輝いている。

 よくよく見ると昔実家で飼ってた猫によく似ていて、懐かしくなり膝の上に乗せて撫でていた。



 「にゃ…にゃ…にゃにゃにゃあ?」

 「んー?どうしたの?」

 「みゃ、みゃー。慌てちゃうとミャル語忘れちゃうみゃ…えっと…これで聞こえるかみゃ?」

 「え、き、キミが喋ってるんだ…これは驚いた…。そ、それより、もう大丈夫?かなり辛そうだったけど、何かあったの?」

 「だいぶ楽になったみゃ。ありがとみゃ。…突然ドラゴンに追われて逃げてきたみゃ。なんでここに居るのかも分からないみゃ…ここはどこみゃ?」

 「僕も何故かこの世界に居たから、ここがどこかなにもわからない…。役に立てなくてごめんね。」

 「気にしなくていいみゃ!みゃー…少しでも遠くへ逃げないと危ないみゃ。」

 「そっか…。」

 「キミのおかげで元気になったみゃ。本当にありがとみゃ。迷惑はかけられないみゃ、もう行くみゃ。」

 「…よし、決めた。キミを安全なところまで送り届けるよ!僕も出来れば町に行って寝泊まりさせてもらえたらと思ってたから、いいかな?」

 「そんな……心強いみゃ。ありがとみゃ。」

 「とりあえずもう夜だから明日の朝に出かけよう。さぁもう少し寝てていいよ。」


 軽くお辞儀してまた膝の上で丸く眠りについたのを見て、少し休む事にするとあっという間に眠りについた。

 そして陽は昇り早速出発の準備を始めていると、空からこちらに向かってドラゴンが降りてきている。


 「あいつみゃ!あいつに追われてるみゃ!」

 「あれが…!なんできみを追いかけてくるんだろう…とりあえず逃げなきゃ!」


 トオルは全力で走っているが距離は縮んでいく一方だった。


 「うわぁぁぁあああ!!!いいいいつまで追いかけてくるんだよおおぉぉぉぉ!!!」

 「にゃ、にゃぁ…にゃあにゃにゃ…にゃーにゃー…」

 「いやごめん!猫語はちょっと分からないんだけど!けど絶対置いてなんか行くもんか!だからもう少しだけ、頑張ってくれ!」

 (…優しい心…あったかい人みゃ…。)



 しかし、気付いた頃には既に1メートルまで接近して青い炎を纏った尻尾を振り上げていた。

 「避けても間に合わない」、そう声が聞こえた時には遅かった。

 目の前で猫が僕の腕から抜け出し、その尻尾に吹き飛ばされた。

 ドラゴンは人間には興味がないのか、トオルに見向きもせず空へ飛んで行った。


 ほんの数秒の出来事だった。

 呆気に取られていたが急いで猫の元へ駆け寄ると無残な姿に変わっていて息もか細くなっていた。


 胸に突き刺さっている"尖ったモノ"を抜くと余計に血が止まらなくなった。

 血の匂いにつられて、オオカミのような獣が群れをなし涎を垂らしながらゆっくりと近づいてくる。

 猫を抱え後退りをするが獣もゆっくりと近づいてくる。

 今にも飛び襲ってきてもおかしくないような状況で、大樹が壁となり逃げ場がなくなった。



 「僕のせいで…こんなに傷付いた子を放って逃げられない。どうしたら、、、この蔓登れそうだ。上に逃げるしかない。」

 ほんの少し隙を見せた瞬間、獣が襲いかかってトオルの左足に牙を突き立てた。


 「う"っ!こん、な所で…死んで、たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」


 蔓にしがみつきながら右足で獣の顔を蹴り下に突き落とす。

 だがその衝撃によって左足は牙で引き裂かれ大量の血液は下に流れている。



 「これは…流石にまず、いなぁ…助けてもらった、のに…ごめん、ね…」






 「ーー雷撃(サンダーボルト)ッ!」


 雷鳴と共に辺り一面にいた獣は一掃された。


 「…ふぅ。1、2、3、、、14匹かぁ。最近多くな…って、、え!?ちょっと大丈夫ですか?酷い怪我ね……彼に癒しを、エンジェルフェザー」


 暖かい光に包まれると一枚の羽根が足に触れると、引き裂かれたはずの足は元通りに戻った。


 「す、すごい………あ、あの!!お願いします、助けて下さいッ!この子も、すごく血が止まらなくて、意識も朦朧としてて、だから、でもあのッ」

 「そんな慌てなくても言いたい事わかったわ。ちょっと見せてもらっていいかしら。…………んー、珍しい動物ね。見たことない種族だけど、、ってこの魔物達の傷じゃない?かなり酷い怪我だわ。ここじゃ全部治療はできない。」

 「っ?!この子助からないんですか?!お願いします、助けてください、お願いします。」

 「あわわ、勘違いさせちゃってごめんなさい。この子は大丈夫よ。応急処置だけど治癒魔法かければ命に別状はないから、安心して。」

 「…ありがとうございます。すみません、、えっと…。」

 「そっか、私はメルガよ。この先にある村の当主をしています。気軽にメルって呼んでね!よろしく。」

 「僕は八雲トオルです。よろしく、あの…め、メル…さん。」

 「うふふ。トオルの猫ちゃんなんだけど、この胸の傷がすごく深いの。何か普通とは違う力が感じるから私の治癒魔法だけでは完治はできない。私のお家によく効く薬とかいっぱいあるから、取りに行くより村まで一緒に来てもらっていいかな?」

 「本当に、、ありがとう。初対面なのにこんなにいっぱい助けてもらって…」

 「何言ってるの、人助けはいくらしたって良いじゃない。私、正義のヒーローとか大っ好きなんだ。さぁ、ここで話してても時間がもったいないわ。早速だけど行きましょう。」



 歩くこと数十分。

 そこは小さな村だが家がたくさんあり、武器や武具、お洒落な服のお店もある。広場の中心に大きなステージがあり、演劇かなにかを披露するような立派な建物だ。


 「メルバート様お帰りなさいませ。」

 「メルバート様!メルバート様!」

 メルは村人たちから慕われているようだ。歩くたびに野菜や服などを貰っているため、なかなか家までたどり着けない。


 「なんだかす、すごいね。みんなメルさんの事好きなんだね!いい村なんだって一目でわかったよ。」

 「えぇ、そうね。"プロセニュアム村"は大好きで大切な場所。…さぁここよ私のお家よ。」

 「さ、さすが当主様の家…。」

 「そんなことないわ。教会でもあるから大きいだけなのよ。…入って入って!ようこそ、メルのお家へ!」



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