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プロローグ



 夢を見ているんだろうか。

 何も無い空間。見渡す限り闇が続いている。



 「不気味だな…。どうなっているんだこの場所は。部屋で寝てたはずなのに…。」



 なにも触れることは出来ないが地に足がついている感覚はある。



 「んー…探検したら何か起こるかもしれない!」



 歩き出した瞬間、激しい揺れと爆発音に僕は転びそうになりながら小手を翳す。



 「うわぁ!!ちょ、今度はなんだよッ」



 揺れと爆発音は瞬間的なものですぐ収まったが、視界に入りきらない大きい鉄の扉が突如現れた。

 果てしなく上に続いてどこまであるかは目視できない。



 「今の原因はこれか?さっきまで何もなかったのに…それにしても、デカすぎじゃないか」



 扉には鎖が何重も張り巡らされており、壊さない限り開けることはできないだろう。

 それにどこへ通じるのかも分からない。

 化け物が閉じ込められてるのかもしれない。


 …根拠はないが、これは "()()()()()()()()" そう思った。



 扉から離れようと一歩後退すると、遠くから声が聞こえる。

 同時に鼓動と息が速くなり、恐る恐る振り向いてみると子供だろうか?小さな人影が立っている。

 その子供と目が合った瞬間、僕はベッドから飛び起きるように目を覚ました。



 「はぁ…はぁ…はぁ…やっぱり夢じゃん…はぁ…はぁ…いやいや僕が何したって言うんだよ…」



 呼吸は乱れ、滝のように流れる汗を拭いながら夢で会った子供の言葉を思い出していた。



   "…、なん…その…は。……るな!!

        絶対に許さない。殺す、殺す。"



 記憶が曖昧ですべてを思い出せた訳ではないが、僕に対する凄まじい憎悪を感じた。



 僕は至って普通の家庭で育って、普通の男子高校生で、勉強も普通、運動も普通。

 彼女は…まだ居ないけど、ザ・普通!素敵な普通生活!!最高じゃないか!

 特別なにかがなくたってみんなが笑顔で過ごせるならきっとそれが幸せと思ってる。



 「…なのにさっきの夢はなんなんだよ…あの子供…誰かわからないけど、胸の奥がゾワっとすると言うか…当分子供には近寄らない方がいいかもしれないなぁ…あはは…。」



 不気味さが忘れられなかった。

 あの光景を"夢"と簡単に片付けていいのだろうか…。

 震える手を見つめ頭を悩ませてる所にドアを軽く叩く音がした。


 「…いま開ける」


 ドアを開けるとタコ踊りのような寝癖に目はほぼ開いてない妹が立っていた。



 「ふわぁ〜。おにいちゃんどうしたのぉ〜?よるなんだからぁ…ちゃんと…おふとんにはいって…ねないとだめだよぉ…」


 「あぁ悪い。起こしちゃったか。何でもないよ大丈夫。

それよりヒナコぉ〜、ははっ、寝坊したらそのタコ頭で学校に行かなきゃならないぞぉ〜!」


 「…もぉー!いじわるなおにいちゃん。ねるもん!…おやすみなさぁ〜い」


 「おやすみ。……………いつもありがとな」



 体を左右に揺らしながら隣の部屋に入る妹を見届ける。

 妹のヒナコのおかげで落ち着いたみたい。

 まだ深夜2時、少し眠っておこうとベッドに横になる。



 ヒナコは優しくてしっかり者だけど、寝起きはからきし悪い!

 本人はまったく覚えてないみたいだけど。


 ヒナコとは喧嘩もしたことがなく、ご近所では仲良し兄妹とちょっと有名みたいだ。

 父さん母さんも優しくて愛情をたくさんかけて育ててくれた。



 …実は、僕はこの家に養子として迎えてもらっている。

 つまり誰とも血は繋がっていない。


 八雲家に迎えてもらった事、本当に感謝してる。

 感謝だけじゃ足りないぐらい幸せな日々をもらってる。


 高校を卒業したら実家の神社を継ぎたくて最近は手伝いもし始めている。

 まだ慣れないけど父さんの手伝いが出来るのが嬉しいんだ。


 一つだけ気になるのは、僕の本当の両親のこと。

 名前も顔も知らない、写真も残っていない。


 いまどこで何してるのか

 生きてるのかすら父さんたちは教えてくれない。


 どうして僕を捨てたのか、責めてるわけじゃなくてただ、理由が知りたいだけなんだけど…。



 「親のこと考えても分からないんだ、ヒナコにまた心配かけないようにもう寝るかぁ〜」


 大きなあくびをしてから目を閉じた。






  "―――――よし、繋がったッ! 我が力となれ!"





 脳内に直接男の声が響く。

 目を開けるとゲームで見る魔法陣が部屋全体に広がっている。



 「か、体が重いッ…うご…けない?クソォォォ!」



 もしかして夢でみたあの子供の仕業か?

 上から押さえつけられてるみたいに、体を自由に動かすことができず魔法陣の色が青から赤に変わると同時に

体がゆっくりと沈んでいく。


 足掻いてみるもベッドから落ちる事しか変化はなく、ただ黙って沈む様を見ているしか出来なかった。




 「…父さん…母さん……ヒナコ……ちくしょう…」







 同日、早朝

 ヒナコはいつも通りに起床するが何か家の様子が変だと気付き、兄の部屋に飛び込んだ。


 そこには呆然と立ち尽くしている父と泣き崩れて会話もできない母がいた。



 父から淡々とした口調でいまの状況を教えてもらった。



 「え?…お父さん何言ってるの、、意味分かんないよ…」







 兄、八雲トオルが()()()()だと言うことを。


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