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胡蝶の夢  作者: 木の枝
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明かり

 家に帰り着いた私は、「ただいま」と帰宅を知らせるのもそこそこに、自室に閉じこもり、購入したアロマライトの梱包を解いた。緩衝材の中から現れた、鮮やかな色ガラスが、蛍光灯の光を受けて光沢を放つ。明かりのせいか、それとも場所の雰囲気のせいか、店で見た時と、少し印象が違う気がする。明りに透かすようにして、じっくりと鑑賞する。ああ、それでもやはり奇麗だ。店では気付かなかったが、アロマライトの模様である蝶は、その翅の部分が、他とは違うガラスでできているようだ。どんな加工が施されているのか、見る角度によって色を変えた。


 しばらくの間見入ってから、そっとアロマライトを勉強机の上に置いた。コードをコンセントにつなぎ、アロマオイルを入れる受け皿に、アロマオイルを垂らす。水やお湯が必要なものもあるが、これはなくて良いようだ。スイッチを入れ、蛍光灯の明かりを消す。電球の柔らかな黄味がかった光で、アロマライトの色ガラスが、自ら発光しているかのように、ぼんやりと薄闇の中で浮かび上がった。椅子に座って眺めると、蝶の翅がうっすらと虹色になっていることに気付いた。しかも、その色はゆっくりと、時間とともに、その色合いを変える。ほとんど白に近い色になったと思えば、少しずつ赤みが増し、完全な赤になる前に黄色が増え出して、次には緑、それから青へ。ごく淡い色の変化。その変化するさまに、魅入られたように凝視する。―――――どんな加工をすれば、こんな風になるのだろう。


 ふわりと広がるオイルの香りが鼻腔をくすぐる。気分を前向きにさせる効果のある、オレンジスイートの香りだ。アロマを始めたのは、本当につい最近のことなので、これしか持っていないのだが、これを買った時の私は、いったい何を考えてこれにしたのだろうか。気分を前向きにして、不安を取り除く、といった効果は、今の私には必要ないと思う。単に香りが気に入っただけ、なのだろうか。


 取り留めのない思考が始まる。それはだんだんとさしてきた眠気のせいか。


 そういえば、これを使った後は、見たい夢が見れる、と言っていた。見たい夢、と言われても意外と思い付かないものだと思う。ただ、今は退屈しているから―――――せめて夢の中だけでも、非日常とやらを体験できないだろうか?


 その思考を最後に、私の意識は途切れた。


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