駆け出し冒険者の下調べ
主人公の発言が「」
心の声が()
主人公以外の発言は『』
スライムです、ファンタジーのお約束です。
(強くはないけど弱いとも言って無かった、死亡例もある…と)
どんな状況でしょう?窒息?溶解?
油断は出来ません、冒険者は自己責任。
自分の命は自分で守るのです。
まずは準備です、下調べと装備の調達。
冒険者ギルドでスライムを調べるのです。
お姉さんは他の人の受付中…他の窓口も大盛況。
困りました…どうしましょう、邪魔にならないよう壁際に寄りギルドの中を見渡します。
『どうかしたのかい?』
横から声をかけられます。
視線を送ると男の人が居ました。
いつから居たのでしょう、そもそも私?周囲をキョロキョロ。
『いやいや、君で合ってるよ』
笑いながら男の人が言います、ちょっと恥ずかしい。
改めて見ます、革製の鎧?プロテクター?を着けた男の人。
青い髪で目付きが鋭く頬に傷がある、ヤンキー?
思わずちょっと距離を取ります、近づき過ぎるのは少し怖い。
「えっと……ちょっと知りたい事がありまして」
『どんな事だい?良ければ力になるよ』
見た目に反してフレンドリー、言葉遣いも柔らかめです。
「スライムの事を知りたくて、その…昇格試験の」
『スライム?あぁ、試験か…なら単独討伐だなぁ』
知ってるのかな?柔らかヤンキーさん。
『試験なら手伝うのもダメか、すまないな』
「いえ…ありがとうございます、それでスライムの特徴だけでも調べてみようと思いまして」
『スライム自体に大した脅威は無いよ、寝てるときに口や鼻を塞がれて死んだ話はあるけどね』
ここでまさかの死亡例。
「気を付ける事とか倒すコツとかはありませんか?」
『んー…打撃はほとんど効果が無いな、魔法や核を斬るなり突くなりかな?たまに粘液飛ばしてくるけど汚れるくらいだし』
(予想は出来たけどやっぱり打撃耐性、魔法かぁ…。)
『動きも速くはないから落ち着いてやれば倒せると思うよ、そう言えば君の職業は何だい?』
「ええと、癒術師です」
固まるヤンキーさん、そう言えば名前聞いてないや。
『……そうか、癒術師か…魔法の方は?』
「お湯が沸かせます、お水も出せます……風と土は駄目でした…」
『そうか、うーん……』
悩んでくれるヤンキーさん、実はいい人でした。
『一応火は扱える、しかしなぁ……』
「何か問題があるんですか?」
『いや…火は効くんだよ、でもたまに爆発するんだよ』
「爆発……」
ばーんでしょうか、それともどかーんでしょうか?
「大きな脅威は無いんじゃ……」
『あぁ…すまんすまん爆発と言っても大した事無いんだ、破裂の方が正しいか』
破裂…一気にレベルが落ちた気がする。
「どのくらいの規模…とかわかりますか?」
『怪我するほどじゃないんだ、ただ粘液が周囲にばらまかれる』
「粘液が……」
『火魔法を飛ばせれば遠くからいけると思うが、成り立てだろうから難しいかな?』
「頑張っても手に維持するのが精一杯です」
『だろうな……』
「たまに……なんですよね?」
『ああ…奴らが食ってる物次第らしいから早々無いはずだ』
(早々無いのなら多分大丈夫…だよね?)
「危険が無いなら挑戦してみます、ありがとうございました」
『…そうか、気を付けてな』
ヤンキーさんが背を向ける。
「……あのっ」
『ん?』
顔だけこちらを向く。
「私、リンといいます…今日はありがとうございました」
『…キリーだ…試験頑張れよ』
「はいっ」
去っていくヤンキーさん、じゃなくキリーさん。
(いい人だったなぁ)
男の人は怖い、そんな認識が少し改まりました。
創作は難しい、機能が使いこなせない。