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どんぐり池 4

「どどどどど、どうしたんだい? りすくん!」


 グレイはあわててりすくんのうでをつかみます。小さな手のひらは、右も左もまっかっかです。


「どこかけがをしてるのかい!?」


 あわてふためくグレイをじっと見つめていたりすくんは、ぷっとふきだしました。そのままおなかをかかえて笑っています。やわらかそうな、おなかのまっしろな毛まで赤くそまってしまいます。


「え? どうしたっていうんだい?」


 グレイにはわけがわかりません。


「ごめんごめん! グレイがあんまりよく寝てたからさ、ちょっといたずらをしちゃったんだよ。ごめんね、だけど……」


 そこまで言うと、りすくんはまた大笑いです。


「そんな顔で、あは……あはは」

「顔?」


 グレイは鏡のようにぴかぴかの「どんぐり池」に、自分の顔を映してみました。

 するとそこには、目のまわりや口のまわり、それとほっぺたに、赤いお化粧をした自分の顔が映っているのでした。

 ふりかえると、りすくんのまわりには黒いヤマゴボウの実がたくさん転がっています。実のまわりには、まっかな汁が……。


「こいつめぇ……」


 うつむいたグレイが、ふるえながらいいました。


「ご、ごめんねグレイ。おこちゃった……?」


 りすくんも笑いをひっこめて心配そうな声です。


「おこったぞう! がおう!」


 グレイは大きな声でそう言って、りょうてを頭の上にひろげました。

 まるでおゆうぎをするようなわざとらしい動作に、りすくんはほっとひと安心です。


「きゃあ! グレイがおこったぁ!」


 と笑いながらさけんで、池のまわりをちょこちょこと走り出します。

 グレイは目と口をカッと開いて「がおぉぉう!」とうなり声を上げながらりすくんを追いかけます。

 二人はそのまま、池のほとりでおいかけっこをしてあそびだしました。


 ピュルリリリリリリリ ピュルリリリリリリリリリ ヒヒヒヒヒヒヒ


 どんぐり池の上から甲高い鳴き声が聞こえました。


「あ! コマドリさんだ!」

 

 りすくんは立ち止まり空を見上げましたが、コマドリさんの姿は見えませんでした。

 つられてグレイも空を見上げます。

 コマドリさんの声はしばらく続いていましたが、そのうち聞こえなくなり、あたりはしいんと静かになりました。


「あれえ? おかしいなあ。いつもなら池におりてくるのに」


 りすくんはふしぎがおです。


「じゃありすくん。オレもきょうは帰ることにするよ」


 空を見上げていたグレイが言いました。


「ええ? もう帰っちゃうの?」


 なんだか、グレイが帰ってしまうのが、さびしいような気持ちになってきたのです。


「ああ、あした、また来てもいいかい?」

「ホントに? もちろんだよ。またあそぼうね」

「ホントか? あしたも、あさっても、あそびにきてもいいか?」


 りすくんの顔に笑顔がもどります。


「いつでも来てよ! ボク、待ってるね」


 ふたりは手をふって別れたのでした。

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