第30話 わたくしの努力 アデルちゃんside
お久しぶりです。投稿遅くなりました。
私は天才だ。
そう最初に思ったのは5歳の頃だったのでしょうか?
私の言う『天才』は、他の貴族の子女でいう『天才』ではありませんわ。
大抵の貴族の家庭教師は、自分が仕える家の子息/令嬢の機嫌を損ねないために、大して凄くなくても、「坊っちゃま/お嬢様、よく出来ました。大変素晴らしい才能をお持ちですね。」と過剰に持ち上げられる。彼らの給料は雇い主の子供からの評価にかなり左右されますし、その気持ちもわからないわけではありませんが。
大抵、このように育った子供は成長してから、自分があまり凄くなかったことに気づいてショックを受けることになってしまいますわ·····。
しかし、私は、違いますの。本当の天才なのです。
魔法は、世間的に上級魔法まで使えると、評価されますわ。魔法を勉強し続けてそのレベルまで習得出来るようになるのは平均的には、20歳くらい、と言われておりますの。
私が、天才たる所以は、1年前の8歳にして上級魔法が使えるようになったこと。それのみならず、1度教えていただいたことは決して忘れません。歴史、経済、政治、地理など幅広く勉強して参りましたし、同じ年頃の子達とは頭の中身が違うのですわ。
お父様と交流のある貴族の家とのパーティーで、他の貴族家の子女と会ったことが度々ありますが、その度に彼ら、彼女らのことを子供だとつくづく思いますの。最低限のマナーはなっているものの、言葉の端々から子供っぽさ、教養の乏しさが感じられますわ。
さらに言いますと、私、かなり見目も整っておりますのよ。
まあ、というわけで私は、魔法も、椅子に座ってのお勉強も天才的で、その上すれ違った誰もが振り返るような容姿を持っているわけですの。
文武両道、まさにその言葉を体現するかのような――いや、違いますわね。私の為にその言葉があるのですけれど、そんな私も9歳になり、帝立学園に入学することになりましたの。
ここで、1つの問題が生じましたの。
私、何でもできてしまいますし、何科に入るのか迷いましたの。それで、迷った挙句、魔法科を受験することに決めましたわ。なんでですかって? 私、お兄様がいるのですけれど、エストマン公爵家が武門に名高いのに対して、お兄様は丸っきりの文官肌ですの。将来、お兄様が我がエストマン公爵家を継ぐでしょうから。私は、敬愛するお兄様を補佐して、すぐお側で公爵領を護って行くのですわ!
そして、帝立学園入学試験当日。筆記試験、余裕。魔法の試験、余裕。私の得意魔法、【火炎爆発】で耐熱性の的を丸焦げにしてやりましたわ。ふんっ。
騎士との手合わせ? いいのですわ、あんなの。類まれな魔法の才能と多彩な知識と教養とを併せ持つ持つ私にとって、剣術など、肉料理の横のパセリのようなものですわ! まったく、あんなに苦いものを食べられる方々の気が知れませんわ。 たしかに彩りはよくなるんでしょうけれど、食べられないのでは本末転倒ではありませんか! 食べ物が、勿体ないじゃあないですの。でも、それで1つの食品産業が回ってて、それに関わる輸送業や小売業にも貢献してるのですから結果オーライってことになるんですの……? まあ、よろしくてよ。話が逸れましたわ。とにかく、騎士との手合わせ以外は完璧なのですわ! 魔法科受験生にとって配点も低めですし、別に構いませんわ。
そういうわけで、当然、魔法科の首席はこの、わ・た・く・し、こそが相応しいはずだったんですのよ……。
最初の事件が起こったのは、合格発表の日ですわ。
使用人に頼んで合格発表を見に行かせてもよかったのですけれど、やっぱり自分が首席に輝いている合格発表掲示板を見たかったので、財務省にお勤めになっているお兄様にわざわざ休みをとっていただいて一緒に見に行きましたの。首席になったらお兄様にたくさん褒めてもらえるという下心があったのは否定いたしませんわ。
当然、私が魔法科首席だと思っていましたわ。それなのに、それなのに、、私は魔法科次席で、私の名前の上に他の子の名前があったんですの。
へレーナ・シュルツ
それが何故か私を差し置いて栄えある首席に輝いた人物の名前ですわ。
シュルツ家なんていう貴族も財閥も聞いたことがありませんわ。きっとどこかの庶民の出なんでしょうけれど、庶民ごときが腕の良い家庭教師をつけられるはずがありませんし、良い家庭教師をつけたところで私に勝てるはずがありませんの。
きっと何かの間違いですわ!
結局そのような結論に落ち着いたのでしたわ。私は、今のところ次席ですけれど、お兄様は首席でなかった私を褒めて下さいましたわ。しかし――
入学式で呼ばれたのは、またあの子だったのですわ。 私は、頭が真っ白になりました。
何故?私は、才能もございますし、努力も欠かさずしてまいりました。どうして?女神様は、私に振り向いてくださらないのですか?
丹精込めて作り上げた巨城が、砂上の楼閣に過ぎなかったことを知らされたような気持ちでしょうか。
幼少のみぎりに、世界の全てだと思っていた屋敷の庭から初めて出た時の気持ちでしょうか。
心が自分でも驚いてしまうくらいにすうっと冷え、何か、綺麗でさらさらしたものが両手から零れおちていくように感じましたの。
そして私は決めたのです。
私の全ての誇りをかけて、彼女に打ち勝ってみせると。引きずり下ろして化けの皮を剥がし、本性を暴いてみせることを。彼女が引き連れていた、少女の姿をした使い魔の真名を確かめることを。
そして、何より……
名誉ある首席の座には、レコルド帝国屈指の名門公爵家令嬢、アーデルハイド・フォン・エストマンが相応しいのである、と…!
―――――――
所謂“悪役令嬢”と化した桜髪の少女は、学院の寮室の枕をしとどに濡らしながら昏く嗤った。
1週間に1回投稿するとか言ってたんですけど、ごめんなさい。
いつも電車で書いてるんですけど、最近勉強で疲れて、電車では書く元気が出ない……って感じでした。
これから不定期になると思いますけど、よろしくお願いします。できるだけ頑張ります。 そら




