第29話 入学式
ごめんなさい、遅くなりました。
合格発表――それは、私の心拍数を跳ね上がらせるのに十分なものだった。
今日、帝立学園の本館前に合格者の受験番号と名前が、貼り出されるのだ。しかも、点数順にだ。
受かってて欲しいけど、受かってたとしても、下の方だったら恥ずかしいよ……。緊張するぅ……。
ルチアちゃんと一緒に学園へと向かう。
学園に着いてみると、ドカーンと合格者名が貼られた大きな板が、多くの人に見えるよう、少し高めのところに置かれ、まわりに大勢の人が群がっている。一学科につき、250人も入学するので、合計1000人にもなるのだから、こんなに大きくもなるか。
どうやら学科別に貼り出されているようだ。
私もルチアちゃんと、人混みの中に混じり、自分の名前を探していく。下から。
ない。
ない。
ない。
私の名前がない。
終わった……。どうしよう。グリセルダさん、セバスチャン、ベンさんに顔向け出来ないよ……。私が試験に落ちたと言って帰ってきたらなんて言われるんだろう……。
そんな時、
「レーナちゃん! あったよ! あったよ! 見てよ! 見てよ!」
私の横で脳天気なルチアちゃんの声が響く。
私の名前はなかったというのに、ルチアちゃんは何を言っているのだろう。
ルチアちゃんは、横でぴょんぴょん跳ねて、張り出されている
紙の一点を指差す。
ん? ん!? あった!
そこには、私の名前が堂々と太字で書かれていた。
ん、太字?――!?
どうやら1番上に書かれていたみたい。これじゃあ、見つからないわけだ。私、下から探していたもん。
そして、太字の理由は――どうやら、私が魔法科の首席のようだ。って、そんなことがあるんかーい!
私は、目をゴシゴシこすってもう1回見てみる。
うん。やっぱり1番上に書いてある。どうやら、ほんとに私が首席みたい。
まあ、とにかく、合格しててよかった……。
その後、制服採寸を終え、ルチアちゃんと2人でワイワイしながら帰った。入学式が一週間後に控え、学園では寮生活になるので、これから一週間は、色々と準備することがあるのだ。
あと、一週間で、この宿とも、お別れだな……。
◆◆◆◆
入学式当日。
私はルチアちゃんと学園に2人で登校する。今日は、二人とも制服なのだー! ルチアちゃんは、正確にいうと、新入生なわけではないのだが、学園の計らいにより、制服も用意してもらえたのだ。太っ腹〜♪
入学式会場のホールに着く。
ホールは、……凄かった。前世の時の体育館など比にならず、馬鹿でかく、大勢の人が椅子に座るだけの広さがある。
一体、どれくらいの人がいるのかな? 新入生1000人に在校生2000人。新入生の親や教員も数えると物凄い数だ。
私とルチアちゃんは、新入生用の席に2人で隣同士に腰掛ける。うわぁ、この椅子、凄いふっかふか!
しばらくそのまま待っていると、時間になったのだろうか。
「只今より、帝立学園入学式を―――」
おじさんの声が聞こえ、入学式か始まる。そこからは、お偉いさん方の式辞などで、どれも長いものだった。
どこの世界でもおじさんの話が長ったらしいのは同じなんだな……。
そう言えば、初登校日に私、死んじゃったんだよね……。咲ちゃん元気かなぁ。残された咲ちゃんの方も辛いよね。私は、今は幸せだけど、あ、こっちのお父さんとお母さんのことは、気がかりだけどね……。
「では、新入生代表挨拶を、魔法科首席、へレーナ・シュルツさん、お願いします。」
ん? 私、呼ばれた?
私の意識は、現実世界へと引き戻される。
壇上を見ると、いつの間にか、喋ってる人がおじさんから白髪のおばさんに変わっていた。
白髪のおばさん? ……!?
あの人は、受験受付の時のおばさん――ルチアちゃんが気をつけた方がいいと言っていた人だ。
ど、どうしよう。新入生代表挨拶がなんとかかんとかって言ってたから、私がそれをしなきゃってことなのかな……!?
ツンツン
ルチアちゃんが、「横からレーナちゃん、新入生代表挨拶だって、前に出なよ」と言ってきたので我に返る。やっぱり、私が新入生代表挨拶をしなきゃいけないのか……。よし、腹を括ったぞ。
静かに席を立ち壇上へと歩みを進める。
周りからの視線が私に刺さるのを感じる。
そんなのは、気にしない、気にしない。それより、代表挨拶を歩きながら考える。
コツコツ コツコツ
平静を装い、壇上へと向かう。
ようやく、壇上へと着いた。入学式会場のホール全体を見回す。私のことを見てお互いに囁きあっている人達が結構いる。私、何か粗相をしたかな……? これで勘違いだったら自意識過剰の恥ずかし子じゃん、私。
「では、へレーナさんどうぞ。」
すうっと息を大きく吸い、ゆっくりと吐き出す。よしっ!
「皆さん、こんにちは。私は、へレーナ・シュルツです。どうして私が魔法科首席になったかわからないんですけど、一応そうらしいので挨拶します。
私が、強くなろうと最初に思ったのは、私の大切な人達を救ってあげられなかった時でした。当時の私にはその人達を守ってあげられるだけの力がありませんでした。悔しい、情けない、そんな気持ちが私の中をしばらく渦巻いていました。
そんなある時、私は、魔法の得意なある1人の女性に会い、魔法を習いました。ある男性からは剣術を習い、また別の男性からは知識を得ました。私は未だ未熟ながらも、無力だったあの時からは大分強くなり、賢くなったと思います。その人達のお陰で今の私があると言っても過言ではないと思います。
もう私の大切な人達を救ってあげられない事がないように、学んだこと、これからこの学園で学ぶことを活かそうと思います。
この度この学園に入学する皆さん、私同様、皆さんのこれからの学園生活は一生の宝物になると思います。たくさんのことをこの学び舎で習い、お互い切磋琢磨して頑張っていきましょう!
これで、簡単ではありますが、新入生代表挨拶とさせていただきましゅ。」
あ、噛んだ。せっかく、なんかいい感じに言えていたのにぃ。
代表挨拶の終わった私は、壇上でお辞儀をする。
拍手。拍手。拍手。
物凄い拍手の量だった。
こうして、入学式は無事終わった。これからの学園生活、頑張るぞー! ちなみに、代表挨拶の後、ルチアちゃんに、「頑張ったね! 良かったよ!」と褒めてもらいました♪
◆◆◆◆
「え……。」
周りで拍手の嵐が吹き荒れる中、1人の少女は、放心していた。
彼女は呟く。
「私が1番じゃないなんて信じられませんの……。そんなの許せませんわ。なにかズルをしたに決まっていますわ、きっと……!」
それは、心優しい少女が変わってしまった瞬間だった。
これからも忙しくて遅くなることが多々あると思います。どうか更新が遅くても、温かく見守ってください。
次はアデルちゃん回になります。
追伸)今までの話を40箇所ほど加筆・誤字訂正しました。(4月14日)




