第21話 ~おにーちゃんside①〜
それは突然のことだった。僕は、突然の頭痛のあまり、床に膝をつき、頭を抱えて崩れ落ちる。
「はあっ、はあっ……。」
物凄い痛みのために呼吸も荒くなり、意識を手放しそうになる。
ここで意識を手放したが最後、もうこの世には戻ってこれなくなる。そんな気がした。頑張って意識を保たなければ。
僕、脳の血管でも詰まっていたのだろか……。食事にはわりと気をつけてきた自負はあったのだが。
とうとう膝立ちも難しくなり、床に身を投げ打つ。何とか迫り来る死の運命に足掻いてみたが、無駄だっようだ。今まで育ててくれた父さん、母さんありがとう。僕、幸せだっよ……。
目を開ける力も無くなり、目を閉じる。暗くなった視界には、スクリーンに写しだすように映像が流れては切り替わる。これが走馬灯というものだろうか。
僕の目の前で笑う女の子や、ソファに座ろうとして尻もちをつく女の子、ぜんぜん起きない女の子。
ん? さっきから全部同じ女の子なのだが、僕は、こんな子知らない。いったい、この子は誰だ?
そして、僕は、迫り来る運命には抗えず、意識を手放した。
―――………―――
俺は、目を覚ます。目に入ってきたのは知らない天井だ。これって、ラノベ主人公の定番セリフだっけ。
「にぃ、やっと起きた! ママに知らせないとっ」
声が俺の寝ている横で女の子の声が聞こえたので、目をやる。小さな女の子が部屋の外へ、トットットとかけでて行くところだった。
俺はこんな場所は知らないし、こんな子も知らない。いったい、誰だ?
―
――
―――
!? 、、、俺は思い出す。 そうだ。俺は、異世界に来たんだった。
妹の死を機に俺は、鬱になったのだった。その日、そう、俺の人生が大きく変わってしまった日を境に、俺には、世界がただ白と黒の2色でできた漫画のような世界のようにしか感じられなかった。それから俺は何を見ても、何をしても、もう心の底からおもしろい、楽しいなどという感情が浮かばなくなった。心の底に常に黒い靄がかかっているような感覚だ。改めて、俺にとっての妹の存在の大きさがわかる。
そうやってどれだけ時間が経ったのだっただろうか。1週間なのか半月なのか、それとも1ヶ月なのか2ヶ月なのか、覚え出せない。
ある日、突然、俺の脳に直接響くような感じで声が聞こえたのだ。当初、鬱のせいでとうとう精神病になったのかと思った。
しかし、幻聴などではなかった。最初は聞き流していたのだが、止む様子はなかった。
「お前は今、ひどく落ち込んでいて、生きているのが辛いのだろう。そして、何の罪もない妹が理不尽に事故にあっとのが許せなくて、妹の命を奪ったその世界が嫌なのだろう。ならば、こちらの世界でやり直してみないか? なに、こちらの世界に来れば、そちらの嫌な世界のことは忘れられるさ。どうだ、いい話だろう。 」
俺はその誘惑に乗っかった。
今から考えると少し浅慮だったかもしれない。だが、後悔はしていない。だって、妹のいない世界なんて俺にとっては意味がないのだから。
そして、たった今、混乱が落ち着いてきて、冷静になって気づいたことがある。先程の女の子の名前は、『マルタ』だ。そう、俺の妹、いや、言い直そう。僕の妹だ。何が言いたいのかと言うと、俺は、俺でない記憶、つまり、僕の記憶を持っていることだ。
(やっと気づいたようだな。まったく、全然気づかないから話しかけるタイミングがなかったよ。この侵略者め。)
脳に声が直接響いてくる。あの時とは違うまた別の少年の声だ。この感覚は1度経験済みなので、そこまで驚かなかった。
「えっと、あの、どちら様でしょう?」
(僕だよ。僕。お前に体を乗っ取られた僕だよ。)
そうか。俺の魂は、この世界の誰かの体に宿ったのか。そして、今話しかけてきた少年がこの体の持ち主だということだ。俺はこの事実を一瞬で理解する。
「乗っ取られたとは酷いいいようだな。まあ、事実だけどな。俺だって好き好んでこの体に宿ったわけじゃないんから、そんなに怒らないでくれないか。」
(ねえ、お前、他人の気持ち考えたことある? もし、乗っ取られたのが自分だったらどうよ? 自分は何も悪いことをしていないのに勝手に知らない奴が自分の体に入ってきたら同じことが言える?)
……。うう、そうか。確かにそうだな。どうやら、俺は相当無神経な事を言ったようだ。
「すまない。無神経な事を言った。許してくれ。」
(許せるわけないな。だって、事実、もう体を乗っ取られてるのだから。体が取り返せるか分からないし。)
だよな……。俺だって自分の体を乗っ取ってきた奴がいたらそいつのことを許せるわけがない。じゃあ、俺はこれからずっとこいつを抱えて生きていくのか? こいつには悪いが、横からあれこれ言われるのも厄介だし、自分の行動を逐一監視されているようで気味が悪い。
俺が1人でベッドの上で頭を悩ませていると、ドアノブが回され、先程の女の子とその子のお母さんらしき人が入ってくる。
赤い髪の綺麗な女性だ。赤毛といってもどぎつい赤ではなく、やわらかい色合いの赤だ。
「フリッツ、起きたのね。お母さん達心配したのよ? 家に帰ったらあなたが倒れてるんだから。」
「迷惑をかけたようですまない……。」
「あら、他人行儀になっちゃってどうしたの? きっとまだ体調が悪いんだわ。しっかり寝て休みない。」
「はい。」
「じゃあ、お母さん達はリビングにいるわ。何かあったら、ちゃんと呼ぶのよ?」
そう言って俺(僕?)の母親は出ていく。
母親が出ていくとすかさず僕が話しかけてくる。
(おい、お前。僕のママに色目使ってんじゃねーよ。)
「は? 別につかってないよ。ただ、綺麗な人だと思っただけ。てか、勝手に気持ち読み取るな。」
(僕のママには手を出すんじゃねーぞ。もし、そーしたら、ただじゃあ、置かねーからな。ただ、綺麗だと思ったところは評価してやろう。)
「そりゃどーも。」
なんか、こいつと話してると調子が狂う。綺麗だと思えばいいのか、思わなければいいのか、どっちだよ! それに、こいつ、マザコンだったのか。
(マザコンじゃねーし。)
「はいはい。」
どうやら、俺は厄介なものを抱えてしまったようだ。
おにーちゃん編はあと1話で多分終わると思います。(思ったより短い……。これでダブル主人公と言えるのかな……。)
あと、フリッツ君の人格、残さないつもりだったんですけど、情がわいたので、残してあげました。この先どうなるんだろ。だいたいの方向性は決まってるんですけどね……。
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