第19話 旅立ち
今回は長めです。
セバスチャンがディアボロヘイム王国に出かけてから一月ほどたったある日、私達は、いつものように魔法の訓練をしていた。この1ヶ月の間に私はだいぶ成長していた。基本4属性と光属性の魔法を中級まではほとんどマスターし、命中や精度もグリセルダさんには劣るものの、ある程度高めることができた。
「ほんとにレーナちゃんは魔法の天才ね。6歳で中級魔法まで使える子なんてそういないわよ。魔力量も多いし、将来が楽しみだわ。」
グリセルダさんは、今日もなでなでしてくれる。そう、これだ。グリセルダさんに褒められるのが嬉しくて、今日まで頑張ってきた。ルチアちゃんも私の頭をなでてくれるが。そうそう、どうやら私は魔力量が普通の人よりけっこう多いらしい。
パカラッパカラッ
馬が走る音が聞こえてくる。誰かが来たのだろうか? 音は次第に大きくなり、馬が姿を見せた。乗っていたのはセバスチャンだった。
「セバスチャン! おかえり!」
「お出迎えありがとございます。ディアボロヘイム王国王都に言って参りました。グリセルダと庭に出ていらっしゃるということは、魔法の練習をしていたのですかな?」
「うん! ちゅうきゅうまほうまではだいたいつかえるようになったんだよ。」
「おお、それはさすがでございますね。」
セバスチャンは、グリセルダさんの方に向き直る。
「グリセルダ、中に入って今後の事を話そう。」
「わかったわ。中に入りましょう。」
どうやら、セバスチャンから何か話す事があるらしい。私達はセバスチャンのあとについて行き、家に入る。
それから私達は、セバスチャンから説明を受けた。私が成長するまでは、セバスチャンが代官として領を治めることになり、シュルツ男爵家は存続させてもらえたらしい。良かった良かった。早く、王様がお父さんとお母さんを見つけてくれるといいんだけどな。セバスチャンは、代官になったから、シュルツ男爵領とここを1ヶ月ごとに行ったり来たりするらしい。私も早く大人になって領の経営ができるようにならないと。それと、これからセバスチャンがこちらにいる時は、私に剣の稽古をつけてくれることになった。魔法だけじゃなく、これからは剣の稽古も頑張らないとねっ。
セバスチャンの話が終わると、私とセバスチャンとルチアちゃんは外に出る。さっそくセバスチャンが稽古をつけてくれるそうだ。ルチアちゃんはというと、一緒に稽古をしたいらしい。
「剣術を大成させるためには、まずは基本からです。足捌きからです。足捌きというのは、足の運び方のことです。今日はこれをやっていきましょう。」
そう言って私とルチアちゃんに木刀を渡してくる。私はまだ6歳なので小太刀のような感じの子供用の木刀で、ルチアちゃんは普通の大人用の木刀だ。
「木刀の構え方です。私の真似をしてください。剣先は相手の喉元の高さ、左拳は自分のへその辺りで構えてください。基本的にこの中段の構えでいいでしょう。」
私とルチアちゃんは並んで剣を構える。
「では、足捌きです。左足の踵を浮かせ、つま先に力を入れてください。右足にはあまり力をいれないで下さい。このようにすることで、いつでも前へ踏み込むことができます。右足で体重を支えていると、直ぐに踏み込むことはできません。常にこのように構えてください。」
確かに言われてみるとそうだ。左のつま先に体重をかけることで前へすっと進みやすくなる。
それから私とルチアちゃんは、剣を構えたまま、いち、に、さん、し、と掛け声をかけながら足捌きの練習をする。
慣れてきた頃にセバスチャンが声をかけてくる。
「お嬢様方もそろそろ慣れてきたようなので、次の練習に移りましょう。素振りをしてもらいます。素振りといっても、ただ適当に木刀を振るだけではなんの練習にもなりません。むしろ、悪い癖がつきます。なので、私の言う通りにしてください。」
「「はーい。」」
「では、まず木刀を振り上げてください。左拳が頭の上に来るように。」
それから私とルチアちゃんは、何度も素振りをした。斜めから剣を振る時も左拳は身体の正中線からずらさないのだそうだ。
「では、今日はこれで終わりにしましょう。明日からも頑張っていきましょう。」
「ふわ〜、疲れたぁー、ルチアちゃ〜ん。腕がもうヘトヘト。」
「私もだよ〜。あ、腕が痛いなら、魔法で直せばいいんだ!」
「あ〜、そうだねっ!」
私達はお互いに回復魔法をかけあいっこする。もちろん、無詠唱だ。
「「えへへっ、ありがと。」」
別に自分自身にかけてもいいのだけれど、それだと味気ない。ということで、お互いに示し合わせることなく、お互いに魔法をかけていた。そうそう、怪我じゃなくても、筋肉痛などへは魔法は効くのだ。魔法、便利だよねっ! 筋肉痛を魔法で治しちゃうと筋肉はつかないが。まあ、ムキムキにはなりたくないからおっけー。
―――………―――
それから3年。私は、9歳になっていた。身長もだいぶ伸びた。同世代の子よりは小さいんだろうけれど。魔法は、中級の上の上級まで使えるようになった。それでもまだまだ上があるみたい。剣術もセバスチャンにはかなわないが、そこそこ上達した。
何故私がここまで改まっているかというと、3年間お世話になったセバスチャンとグリセルダさんとは今日でお別れなのだ。私は、今日から帝都の帝立学園に入る。正確には、まだ入ってはない。それどころか、まだ入学試験にすら受かっていない。入学試験は一週間後だ。受かるかどうか不安なんだけど、グリセルダさん曰く、『きっと、受かるわよ。私の弟子なんだから合格なんてちょちょいのちょいよ。』だそうだ。正直、すっごく怖いけど……。まあ、精一杯頑張ろう。
「レーナちゃん、お別れね。おねーさん、さみしいよぉ。」
グリセルダさんは大人なのにぐすんぐすんしている。ちょっと過保護だなー。私も寂しいけどさ。
「あ、そうだ。私からレーナちゃんにプレゼントがあるんだった。」
グリセルダさんは、そう言い残して家の中へ入っていく。何をくれるのだろうか。すると、セバスチャンが近づいてきた。
「私からも渡すものがあります。開けてみてください。」
セバスチャンは、布に包まれた何かを渡してくる。何が入ってるのだろうか。さっそく開けてみることにした。
「わあっ!」
布に包まれていたのは、本物の剣だった。今まで、私が稽古で使っていたのは木刀だ。本物の剣を持つのはこれが初めてなのだ。
「気に入って頂けたようで何よりです。その剣は、正しきことのためにお使いください。」
「ありがとう。嬉しいな。」
今度は、ベンさんが近づいてくる。
「俺からもプレゼントがある。ものじゃないがな。ちょっと家の裏手についてきてくれ。」
私とルチアちゃんとセバスチャンでベンさんの後ろをついて行く。家の裏手にあったのは……、1頭の馬だった。
「この子がプレゼント?」
「おう。」
「やったぁー! ペットが欲しかったんだっ!」
「ねえ、名前をつけてあげてもいい? この子、男の子? 女の子?」
「いいぞ。男の子だな。」
「じゃあ、あなたは、まひろね!」
前世のおにーちゃんにはもう会えない。でも、会いたい。おにーちゃんの代わりとして、この子にはおにーちゃんの名前のまひろをつけた。私とルチアちゃんはまひろにすりすりする。ねえ、この子、すごーく可愛いんだけど! つぶらなひとみで私の攻撃力が1段階下がった、なんちゃって! それにしてもこのくりくりおめめが可愛い♪
「ベン、よく馬なんて用意したな。高かったろ。」
「まあな。でも、この子の笑顔が見れて良かったぜ。」
私とルチアちゃんがまひろと触れ合いタイムをしていると、家の中からグリセルダさんがドタバタと出てくる。手は、背中の後ろに回している。何をくれるのかな♪
「はい、どーぞ!」
グリセルダさんがくれたものは、赤いベレー帽だった。何故かベレー帽のてっぺんに葉っぱをモチーフにしたような装飾が付いている。すごーくこの帽子、可愛い!
「可愛い! ありがとう!」
「はい、こっちはルチアちゃん用ね。」
グリセルダさんは、ルチアちゃんにはりんごをモチーフにしたポシェットをブレゼントしていた。こちらも可愛い。あれ、もしかしたら2つともりんごなのかな?
「ボクにもくれるんだ。ありがと。」
うんうん、照れてはにかんでいるルチアちゃんも可愛い。美少女は目の保養になるね。
それからベンさんにまひろへ荷物を括りつけてもらい、セバスチャンに食費や消耗品などのための生活費、教科書や制服を買うためのお金をもらう。まひろには私が前、ルチアちゃんが後ろで乗った。
「じゃあ、行ってきまーす。またね!」
「みなさん、お元気で!」
私とルチアちゃんは、後ろを向いて、(私は、後ろを向くだけだとルチアちゃんで視界が遮られるので、身を乗り出して)セバスチャン、グリセルダさん、ベンさんに手を振る。
グリセルダさんは、見えなくなるまで泣き続けていた。すごくしっかりしていて大人っぽい人だけど涙脆いんだな。今日の新しい発見だ。
こうして、私とルチアちゃんは、帝都に向けて旅だったのだった。
ようやく第1章完結!
閑話(おにーちゃんside)を挟んで第2章学園編に入ります。
書くのすごーく楽しみ! 学園編から悪役令嬢がやっとでてきます。
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追加連絡
先週忙しかったのと、次の話にいろいろ考えているので、次の更新まで少し待ってください。
土曜日までには何とか……します。 そら
改稿)まひろがまひるになってたので直しました。 2月3日




