第12話 知り合いの所へ行こう!①
私達3人は、街道を進んでいた。
「セバスチャン、セバスチャンのしりあいはどこにいるの?」
「人族の国のレコルド帝国の山奥に住んでいます。お嬢様、これから人族の国に向かいますので、我々が魔族だとばれるような言動はお控え下さい。」
「はーい!」
私は、両手を上げて返事をする。不謹慎な話だが、住んでいた街から初めて遠出するので結構楽しみでもあるのだ。
「じゃあ、しりあいのひとはどんなひとなの?」
「そうですね……。魔法の得意なエルフの女性なんですが、昔、私が冒険者だった時に、一緒に旅をしていたんですよ。女性というのは古来より強いものでしてね、パーティーのリーダーをしてましたね。今でも頭が上がりませんよ……。」
セバスチャンは何やら懐かしそうにしている。セバスチャンって昔旅をしていたんだ。って、『ボーケンシャ』って何? とにかく、昔、セバスチャンの仲間だったことは分かった。
その後、黙って歩いてもつまらないので、私とルチアちゃんは尻取りをしながら歩いた。
―――………―――
日がだいぶ傾いてきて、あともう少し歩くと川があるので、少し道をそれた所で野宿にしようということになった。
セバスチャンが持っているお金は、服とパンを買ったせいで、あと銀貨1枚ほどになっていた。なので、私たちは、宿には泊まれず、知り合いの女性のところへ着くまでは野宿の予定らしい。
「ごはん♪ ごはん♪」
私とルチアちゃんは、声を合わせてごはんまだかなソングを歌う。
私は、1日歩いたため、お腹がすいている。いつも、家の外に出かけるけれど、森でのんびりしてるから1日歩き詰めなんてことはないんだよね。
その時、いきなり街道脇の木の陰から何かが飛び出した。
「っ!?」
セバスチャンが、私とルチアちゃん2人の前に立ち、腰を落とし、警戒態勢をとる。
飛び出してきたのは、明らかに怪しそうな風貌をした男2人組だった。2人の男は私たちに向かって話しかけてくる。
「お嬢ちゃん達よお、可愛がってあげるからおにーさん達についてこない?」
「へっへっへっ、そこのオッサンなんて放って置こうぜ。こっち来れば、お菓子あげるよ?」
私が隣のルチアちゃんの方をチラッと見ると、その2人組の言葉を聞いて、ルチアちゃんは目を輝かせている。そのままお菓子のためについて行ってしまいそうなので、彼女の服の裾を掴んでおく。いや、いくら私でもこの男達の考えていることはわかる。ルチアちゃん、ずっと森の中に住んでいたからこういう他人の悪意に疎いのだろうか。精霊なのに。いや、精霊だからと言うべきか。
男達は、そのまま近寄って来る。
ここで、セバスチャンが口を開く。
「それ以上、我々に近づいたら、正当防衛に移らせていただきますぞ。」
「あん? オッサンは黙っていろよ。」
セバスチャンの声を無視して男達は近づいてくる。私は怖くなり、ルチアちゃんの裾を掴んだまま、1歩下がる。
次の瞬間、私の心配は杞憂に終わった。セバスチャンが、男2人を10秒程で組み伏せたのだ。男2人はそのまま気絶した。
「ふぅ、まったく愚かな者達ですね。」
セバスチャンは小さく呟く。
え、セバスチャン強すぎ……。まあ、相手が弱いのかもだけど。屋敷を襲撃された時も勝てたんじゃ……。あ、お母さんを人質にとられていたのか。それにしても、セバスチャン強いなあ。短刀を持っているはずなのに使ってなかったよ。
セバスチャンは、持っていたロープで男達を木にくくりつけ、さすがにここで寝るのはぶっそうなので、私達は先に進むことにした。
30分程私達は進み、道から外れたところで野宿と夕食の準備をする。
野宿といっても、大きな荷物は持ってきていないので、みんなでかたまって寝るだけなのだか。寝る時、耳を地面につけて寝るのだそうだ。なんでも、セバスチャンによると、もし魔獣や今日の男達のようなものが襲ってきた時、地面に耳をつけることで足音で気付くらしい。あと、今は春なのであまり関係ないが、冬場では地面に寝っ転がっていると、体温が逃げてしまうため、凍傷になってしまうので体育座りが良いそうだ。ホント、今が春で良かった。
荷物を下ろし、私達は焚き木を集める。そして、セバスチャンが火の魔法で火を起こす。あ、魔法いいなあ。私も使えるようになりたいなー。
「私は夕食のための狩りに行って参りますので、ルチア様、お嬢様をよろしくお願いします。」
「はーい! ボクにまかせてね!」
ルチアちゃんが戦っているところを見たことないけど、強いのかな?
火をつけた後、セバスチャンは、これから毎日干し肉なのは味気ないからということで狩りをしてくると言って出かけてしまう。私達は、セバスチャンが戻って来るまで焚き木の側でお話して待つことにした。
「ねーねー、ルチアちゃん、ルチアちゃんはせーれーなのにおなかがすくの? もりでもわたしのサンドイッチたべてたけど。」
「ボクたち精霊はね、食べなくても大丈夫なんだけど、ボクは食べるのが好きだからね。あと、レーナちゃんたちと違ってお風呂も入らなくて平気なんだよ。さすがに睡眠は必要だけどねー。」
精霊ってごはん食べなくても平気なんだ! じゃあ、私のお弁当毎日分けてたけど、食べなくてもルチアちゃん大丈夫だったんだ。いつもガツガツ食べるから、いつもお腹がすいててかわいそうだと思ってたんだけど、ただの食いしん坊だったのかー。いひひ、ルチアちゃんたら可愛いなー、もー。
「あ、ルチアちゃん、きょうのことだけど、あのおとこたち2人がおかしあげるっていったとき、ついていこうとしてたでしょ?」
「え、バレてた? ボク、人里になかなか出てなかったから、お菓子なんて100年くらい食べてないし、つい食べたくなっちゃってねー。」
「こんどからああいうこといわれてもついてっちゃダメだよ?」
「レーナちゃんみたいなお子様に言われるとはね……。レーナちゃんの頼みなら何とか次からは我慢するよ。」
「こどもじゃないもん! わたしのききまちがいかもしれないけど、ひょっとして、ルチアちゃん、100年も生きてるの?」
「ボクは100年前も生きてたけど、レーナちゃん、レディーに年齢聞くのは御法度だよ?」
「わたしもおんなのこだからかんけいないよー。」
「でも、だーめ! ひ、み、つ♪」
結局、ルチアちゃんは年齢を教えてくれなかった。見た目、少女なのに100年も生きてるなんてルチアちゃん、けっこうおばあさん? でも、けっこう子供っぽいよね。
ルチアちゃんが今日、男2人組について行こうとしたことについて注意できてよかった。言っておかないとまた同じようなことがあった時について行っちゃうかもしれないからね。
しばらくお話しているとセバスチャンが帰ってきた。手にはうさぎを抱えている。
「ルチア様、お嬢様、ただいま戻りました。夕食の準備をしますので、もう少しお待ち下さい。」
セバスチャンはそう言うと、うさぎを火にかける。それから私達はうさぎ肉を食べ、みんなで寝た。
初めて食べるうさぎ肉は予想外に美味しかった。ルチアちゃんの食べっぷりはいつも通りだったとだけ言っておく。




