その対策(RTL-SDR)
電波は目に見えない。従って、対策は非常に困難だ。専門的な知識が必要なことをいいことに、ネットでは誤った情報があふれている。
「電磁波対策」で検索すれば、たいして効果のなさそうな電磁波対策グッズが多数ヒットする。しかし、近年革命的技術が登場したことで、状況は一変した。
その技術は、SDR(Software Defined Radio)と呼ばれている。
電磁波対策をするには、まず電磁波を測定しなければならない。これが難しい。業者に頼めば、いくらかかるか分らない上に、いい加減な業者も多く、どこが信頼できるかも分らない。専門業者が電磁波を計測するときには、スペクトラムアナライザー(通称スペアナ)やシグナルアナライザーと呼ばれる機器を使う。しかしこのスペアナ、安くて2万円程度、業務用なら100万はする。とても素人には手が出せない。しかも使いこなすには、電子回路やアマチュア無線の知識が必要だ。加えて電磁波工学の知識も必要だろう。素人にはかなりのハードルだ。
従来、電磁波測定にはトリフィールドメーターやガウスメーターが使われてきた。これらはアマゾンでも購入できる。しかし測定精度はあやしいし、専門家から見れば簡易電波測定器というレベルだった。
しかし、SDRを使えば、わずか2000円ほどでスペアナが手に入るのだ。
もちろん2000円のスペアナは業務用に比べれば簡易スペアナというレベルだが、それでも、どの周波数の電波が何dBmの強度で出ているかが分れば、違法無線LANルーターかマグネトロンか、発生源の見当がつく。通報の根拠にもなる。全体的な電波レベルしか分らないトリフィールドメーターやガウスメーターとは段違いだ。
それでは、一番安くて、簡単なスペアナの作り方を述べる。
まずアマゾンでUSBデジタルチューナーを注文する。だいたい1500円から2000円くらいである。それとスマホにUSBデジタルチューナーをつなぐUSB変換ケーブル(OTGケーブル)も注文する。(すでにあれば必要ない)
筆者が買った製品をはっておく。
まずUSBデジタルチューナー
https://amzn.to/2Kd3b7z
次にOTGケーブル
https://amzn.to/2tFqOKO
次にスマホに「RTL2832Uドライバー」と「RF Analyzer」をインストールする(「SDR」で検索すれば、Playストアにある)。ネットには「SDR Touch」というソフトの記事が多い。このソフトだと1000円以上かかる。「RF Analyzer」なら100円ちょっとで済む。
以上である。あとは、スマホにUSBデジタルチューナーとアンテナをつなぎ、「RF Analyzer」を立ち上げれば、スマホが簡易スペアナになる。だいたい、50MHzから2GHzくらいの電波を計測できる。
実はSDRはその名の通り、本来ラジオとして使うことを目的としている。だから「RF Analyzer」でもFMラジオや航空無線を聞くことができる。ただし、本格的にラジオとして使うには、ちゃんとしたアンテナを別に買う必要がある。
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USBデジタルチューナーと書いたが、ネットでは単にUSBドングルと呼ばれている。どれでもいいわけではなくて、RTL2832Uというチップがのっているもののみが使用可能だ。このあたりのくわしい仕組みは、ラジオライフの先月号(2018年7月号)にのっている。ラジオライフでは、ラズパイ(Raspberry Pi)というマイコンボードを使った電子工作の記事だが、スマホやタブレットならもっと簡単に、簡易スペアナを作ることができる。実際、筆者もすぐに使うことができた。
「SDR Touch」で検索すればYouTubeにも多数の動画がある。アマチュア無線の知識が多少いるが、そこは検索して勉強して欲しい。たいして難しくない。YouTubeを見ればだいたい分るだろう。
SDRを使ったスペアナは、スマホの他にWindowsやLinuxでも作ることができる。使うUSBドングルは同じくRTL2832Uを用いた製品だ。WindowsならSDR#やHDSDRなどが有名だが、本格的なソフトなので、アマチュア無線の知識が必要だ。スマホの方が手軽だし、あちこち移動して測定できるのでスマホがおすすめだ。
SDRについては「トランジスタ技術」という雑誌が時々特集しているが、電子回路の知識がいる。ラジオライフならそのあたりの知識はいらないが、Linuxの知識は多少必要である。