幼き日の誓い
ざわざわざわと、たくさんの人の声が聞こえる。
あたしが男の子にドーベルマンから助けてもらってからしばらくして、騒ぎを聞きつけた人たちが集まって来た。
そして、雪姫が連れて来てくれた大人の人がお巡りさんや救急車を呼んでくれたの。
「君たち、大変だったね。もう安心だよ」
お巡りさんは優しく言ってくれているみたいだけど、あたしは上の空。
あたしが見つめる視線の先では、男の子が救急隊の人たちにタンカで運ばれていた。
身体や服に染み付いた血のあとがとても痛々しくてかわいそうで、あたしの目に涙が浮かぶ。
「あの子は病院で診てもらえるから、心配ないよ。さあ、君たちはこっちへおいで。交番でお話を聞かせてくれるかな?」
お巡りさんはあたしたちの背中を押して、騒がしくなったこの場所から離れようとする。
救急車の中に、男の子が乗せられて行く。
あたしを助けてくれた男の子。
見ず知らずの、誰も相手にしてくれないようなあたしなんかを、命がけで守ってくれた男の子。
あたしはこの子の名前を知らないし、この子もあたしの事をおぼえてないはず。
ここでお別れしてしまったら、きっともう二度と会えない。
そう思ったらいてもたってもいられず、あたしはお巡りさんの手を振りほどいて、男の子の元へ一目散に走っていったの。
ぐったりとして目を閉じている男の子に、聞こえていないと思うけど、あたしは話しかけた。
「今日はここでさよならだけど、お礼もまだ言えてないけど、だいじょうぶだよ。きっと、あたしが見つけてみせる。だから……」
あたしたちが、もういちど出逢うためのおまじない。
すっごいドキドキしたけれど、あたしはとってもたくさん想いを込めて、男の子のお口にプチュっとキスしちゃったの。
運命の赤い糸、つながればいいなあ。
「また、会おうね♪」
インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊
おしまい




