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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
終章 エピローグ

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騒がしくも穏やかな日常

 7月中旬。

 梅雨が明け、サンサンと輝く太陽と空にそびえる積乱雲が、夏の幕開けを高らかに宣言する。

 夏休みを目前に控え、えもいわれぬ高揚感と、何かが始まりそうな期待感に包まれている上沢高校。

 その1-1教室。昼休みのチャイムの1分後。


「そろそろ来るぜー、3、2、1……」

「おーい、蔵人(・・)くーん!」

「おお、本当に来たなー」


 クラウドこと三雲蔵人と、インディ娘の夏山晴海は正式にお付き合いをする事になった。

 こうして、晴海は昼休みになると雪姫を連れて遊びに来る。

 夏服姿の晴海は、お弁当が入ったバスケットを見せて。


「一緒に、ごはん食べよ♪」


 そして、クラウドと晴海を中心に、雪姫と雨森ブラザーズで席を囲んで昼食を取るのが恒例となっていた。


「今日はいっぱい唐揚げ作ってきたの、みんなも食べてね」

「へえ、うまそうだな」

『いっただっきまーす!』

「蔵人くん、唐揚げどう?」

「あ、うまいな、これ。晴海、また料理の腕上がったんじゃないか?」

「えへへー」

「雷也も、もうちょっと教室にいたら食えたのにな」

「あいつは、学食組だからなー」

「実は、わたしも皆さんに食べて頂きたいものがあります」

「ん? 雪姫も何か作ってきたの?」

「雪姫ちゃんの手料理かー、楽しみだなー」


 雪姫はバスケットの中から、名状できない黒い何かを取り出した。


「えーっと、バブルスライム?」

「サルバドール・ダリの絵にこんなのがあったような」

「ブラザーズくんたち、雪姫に失礼よ! お好み焼きに決まってるじゃない!」

「……あ、いえ、おにぎりです」


 見た目はともかく、食べ物であることは間違いないので、全員ひとまず食べてみる。


「う……、うまいねー……、わさびが効いててー」

「違うなー、具にパクチーを使ってるんだよ」

「いや、隠し味はドリアンよ!」

「いえ、ただのめんたい海苔巻きなのですけれど……」


 それを聞いて3人は黙り込むが、クラウドだけは普通にモリモリ食べている。


「あ、三雲くん、おいしくなかったら無理に食べられなくても……」

「いや? 元々こういうものだと思って食ったら、食べられなくはないよ。残すのもったいないし、せっかく白鳥さんが作って来てくれたものだから」


 そう言いながら、雪姫のおにぎり(?)を完食するクラウド。

 感動でうるうるしている雪姫に、晴海は。


「ほんと、蔵人くんは女の子に優しいね。雪姫、今度お料理を教えてあげるから一緒に作ろうか」

「ううう……」


 落ち込む雪姫をなぐさめる晴海。

 姉妹のように仲良しの2人を見て、クラウドは。


「いやー、そうやってると、晴海がしっかりしてるように見えるな」

「えー、あたし、普段はしっかりしてないみたいじゃない」

「そんな、ことは、ナイよ?」

「なによー、その心のこもってない言い方は」

「いてて、完治はしてるけど、やめなさい」


 晴海は、隣のクラウドの脇腹を指でブスブス刺して、クラウドを悶えさせる。


 その様子を周りから眺める、1ー1の男子生徒たち。


 ほぼほぼ毎日、晴海と雪姫がやってくるため、文句なしNo.1美少女の白雪姫と、彼氏がいるのはともかく、とびきり可愛い晴海を拝むことができ、彼らのひそかな癒しとなっている。

 人気投票では、圧倒的多数で白鳥派が多いが、少数ながら夏山派もいるとか。


『ごちそうさまでしたー』

「今日は食後のデザートがあるのよ」

「へー、なに持ってきたんだ?」

「じゃじゃーん、あたしの大好物」


 晴海が机の上に取り出したのは、茶色く日焼けした1枚の紙切れ。

 よく見ると島が描かれており、バツ印が書いてある。

 一見すると、宝の地図のように見えるが……。


「これはもしかして、宝の地図か?」

「もしかしなくても、宝の地図よ」

「そりゃ、確かにお前の大好物だろうけど……」


 甘いものを期待していたクラウドは、ちょっとだけ残念に思う。


「どっから手に入れたんだ? こんなもん」

「古本屋で立ち読みしてたら、『大のダイ冒険』の最終巻に挟まってた」

「いや、それ、ホントか?」

「まだ良く調べてないから、どこの島か分からないけど、今年の夏休みはこの島に行こうかなーと思ってるの」

「また島か……、気が進まねーなあ」


 クラウドは地図に手をかざし、ためしに危険察知アンテナを働かせてみると、背筋にゾワリと寒気が走る。


「こいつは……、相当ヤベえ。晴海、この島は絶対やめた方がいい、とんでもなく危険な島だ」

「え? そんなに?」


 だが、晴海はクラウドの言葉に、むしろ瞳を爛々と輝かせている。


「いや、本当にやめた方がいいからな。ガチョウ倶楽部の前フリじゃねーから」

「でも、そんなに危険な島なら、きっとすんごいお宝が眠ってるはずだよ」

「だめだめ。お前を危ない目に合わせる訳にはいかねーよ」


 すると、晴海はバッグの中からあるものを取り出して、机の上に置く。

 それは、どこかで見たような1本の鞭。


「それは……、山瀬さんが使っていたムチか?」

「うん。異世界に置き忘れてあったらしいから、譲ってもらったの。これを持っていれば、いつかきっと、また玲華さんと会える気がするから」


 晴海は、念願のウイップをゲットした喜びではなく、真剣な表情を顔に浮かべる。


「玲華さんもそうだったけど、女の子だって危険を恐れずに戦わなくっちゃって事を、この前の冒険で改めて思ったの。蔵人くんがあたしを女の子として大事にしてくれるのは嬉しいけど、あたしはやっぱり冒険家だから」


 そして、晴海はクラウドをくりくりの瞳でのぞき込み。


「それに蔵人くんは、あたしに言いました。あたしの夢と冒険にずっと付き合ってくれるって」

「うっ……」

「だから、いいでしょー、一緒に行こうよー。お願い、お願いー!」


 肩を掴まれて、ブンブン揺さぶられるクラウド。


「わかった、わかった、めんどくせーけど、しょーがねえ。オレも行くよ」

「わーい、やったーっ! だから、蔵人くん大好きー!」

「ははは……」


 晴海は衆目も気にせず、クラウドの首に抱きつき、クラウドは照れてほっぺたをかく。

 その様子を、生暖かく見守るブラザーズのスマホに1通のLINE(リネ)が入る。


 抹殺の準備はできてます。陛下、今すぐご命令を。

 ラブのコメ壊滅世界連合。


 ブラザーズが後ろを振り向くと、クラスの男子たちがそれぞれカッターナイフを磨いたり、彫刻刀を研いだりしている。

 慌てて、彼らの元へ向かうブラザーズ。


「ちょっと、待て待てー」

「あいつだけは、かんべんしてやってくれー」

「なぜですか!?」

「奴は、我々が忌むべき『リア獣』ですぞ!」


 いきり立つクラスメイトに、ブラザーズは必死の説得を試みる。


「あいつは晴海ちゃんのために、それこそ死ぬ思いで戦ったんだ」

「頑張った奴には、ごほうびがあってしかるべき。ここはオレたちの顔に免じてー」

「むうう、陛下と大将軍がそう言われるのなら……」


 不承不承、矛を納めるクラスメイトの男たち。

 そこへ、金色のチェーンを首にかけたチャラい男。サバイバル部のニワカ中尉こと谷若鷲羽がやって来る。


「はははっ、ずいぶん盛り上がっちゃってるじゃないか」

「お、チャラ若」

「誰がチャラ若だ。……で、どうなんだ、あの2人は? あの後めちゃくちゃナントカしそうな感じだったけど」

「いやー、オレらもそれを期待してたんだけど」

「クラウドいわく、結婚するまでそういう事をしてはいけない、だってさ」

「あー、そう来たか。とっとと押し倒しゃいいのに、ヘタレてんなあ」

「まあ、ムッツリすけべだからなー」

「あいつらしいっちゃ、あいつらしいけど、いつまでもつやら」


「『夢と冒険にずっと付き合え』か……。なんか、お前に一生言われそうだな」


 クラウドが苦笑いをしながらつぶやくと、しがみついていた晴海が、パッと離れてもじもじしながら。


「それって……、もしかしてプロポーズ?」

「えっ……」


 一生言われそう → 一生いっしょにいる → プロポーズ。


「ばっ、いや、違う! 断じて違う!」

「そんなにムキになって、恥ずかしがり屋さんなんだから……。あたしは、いつだって心の準備はできてるんだからね」

「いや、何の?」

「もう、女の子にみなまで言わせないでよっ」


 それを聞いて、男子生徒たちは一斉に刃物を砥ぎ出した。


「わー、待て待て!」

「奴はまだ、童貞! 童貞だから、ここはひとつ穏便にー」

「ははっ、ひっでえ止め方。でも、お前らも意外と苦労してんのな」


 クラスメイト達の水面下の攻防もつゆ知らず、やいのやいの言っているクラウドと晴海を見て、雪姫はため息まじりに。


「はー、本当にお2人とも仲がよろしいですのね。実は、わたしも三雲くんの事をお慕いしていたのですけれど……」

「…………えっ?」

「雪姫っ!?」


 慌てる晴海に、雪姫はふるふると首を振り。


「いいえ、おふたりを邪魔するような事はいたしませんわ。だって2人ともとってもお似合いですもの」


 クラウドと晴海は顔を見合わせて、頬を赤くする。


「なんといっても、晴海ちゃんが8年間探し続けていた『勇者さま』ですし、2人がお付き合いされるようになって、わたしはとっても嬉しいですわ~」

「そう……だったのか?」

「うん……」


 想いの深さを知って知られて、さらに顔を赤くする2人。

 デザートよりも甘い雰囲気が漂う、この空間。


 だが。


 それを切り裂くかの如く、2本のコンパスがクラウドの眉間と心臓を目掛けて飛んで来た!

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