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インディ娘ちゃんのノーテンキ学園冒険隊  作者: マックロウXK
第七章 エクストラステージ

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戦乙女

 鈴の鳴るような、女の子の声。

 その主が白鳥雪姫であることに気付き、クラウドはその物体を掴んだまま、ピシッと固まる。


「……三雲くん?」


 クラウドは枕になっている温かいものが、雪姫のふとももであることを認識し、自分がひざまくらをされて寝かされている事を理解する。

 その体勢から考えると、自分が現在、下から持ち上げるように掴んでいる柔らかい物とは……。


「あの……、そろそろお胸から手を離してくださらないと、あん! わたし、変な気持ちになりそうですわ……」

「わああああああああああっ!」

「きゃあっ!」


 クラウドは慌てて飛び起きると、雪姫の前で土下座をする。


「ごめん、白鳥さん! 今すぐ腹を切るから、それで勘弁してください!」

「え、お腹を? ちょっとお待ちを!」


 クラウドは服をまくると、リュックからバターナイフを取り出す。


「いや、それではお腹は切れない……じゃなくて、三雲くん、落ち着いて下さい!」


 1分後。


「本っ当に申し訳、ございませんでしたっ!」


 地面に頭がめり込むかと思うような、日本伝統の謝罪法を見せるクラウド。


「神聖なる白鳥さんのおっぱいを触ってしまい、なんとお詫びをしてよいものやら……」

「いえ、わたしが膝枕をしたかっただけなので、むしろ三雲くんに悪い事をしてしまいましたわ」


 雪姫も正座で、三つ指を立ててお辞儀をする。


「あの、この事はできたら内密に。特に晴海には内緒にしてもらえると助かります」

「心得ておりますわ」


 ひそひそとお願いするクラウドに、コクンとうなずく雪姫。

 なんて優しい娘なんだ。白鳥さんマジ天使。そりゃファンクラブも出来るわけだよ。

 と、クラウドは心の底から深く思った。


 ようやく一件が落着すると、クラウドは周囲を見渡す。


「あれ、晴海は? あいつらは? あと、あの黄色いデカい奴は? 今、一体どうなってんだ?」


 様々な疑問を呈するクラウドの上空から、バラバラと音が響き、ヘリコプターと飛行機の合いの子のような機体が、ミサイルを放出している。


「何だ、ありゃあ!?」

「手短に説明しますと、黄色いロボットは一度は氷室さんに倒されましたが、変身を遂げてあのような姿に。氷室さんは疲れて休息を取られていますわ」

「あ! あいつ、あんなところで寝てやがる……」

「雨森さんたちと服部さんは、あのロボットに対抗するため、晴海ちゃんにお願いされて、時間稼ぎに出られましたわ」

「時間稼ぎ? で、その肝心の晴海は?」

「それは内緒です」

「え、何で?」

「晴海ちゃんから、『もしクラウドくんが起きても、絶対にあたしが何をしようとしてるか言っちゃダメよ』って言われましたので」


 と、雪姫はふるふる首を振る。


「いや、それはさすがに教えてくれないと」

「晴海ちゃんと約束しましたし、三雲くんはもう十分頑張りました。これ以上は命に関わりますから答えられませんわ」

「そこをなんとか」

「ダメです。お口チャックですわ」


 雪姫は自分の口の前に、指でバッテン印を可愛らしく作る。

 押し問答に我慢出来なくなったクラウドは。


「白鳥さん!」

「ひゃあ!」


 クラウドは、雪姫の小さな肩をつかんで嘆願する。


「頼む、白鳥さん! 晴海がそんな事を言うって事は、あいつ絶対またムチャをしようとしてる。あいつの近くにいないと、何か起きても助けてやれない。オレはあいつの側にいてやりたいんだっ!」

「み、三雲くん、痛い……」

「あ……、ごめん」


 いつの間にか、力強く掴みすぎていたことに気付き、パッと手を離すクラウド。

 大変だー、心配だー、と頭を抱えるクラウドに。


「三雲くん……、晴海ちゃんの事が好きなんですか?」


 突然、雪姫から放たれる、核心を突いた質問。

 ゆるふわ天然お嬢様、小柄な黒髪巨乳美少女の熱視線を受けて、対するクラウドはてらいもなく。


「うん、好きだ。オレは晴海の事を愛してる。あいつの事をずっと守ってやろうと心に決めてるんだ」


 一瞬、雪姫は嬉しいような寂しいような複雑な表情を見せる。


「……実は、聞く前から答えは分かっていました。先ほどから晴海ちゃんが好きだとか、絶対に守る的な事を、寝言でずっと言われてましたし」

「えっ? うーわ、マジか!? そりゃ恥ずかしい……」


 今度は別の意味で頭を抱えるクラウド。

 雪姫はその様子を見て、満面の笑みを浮かべる。


「分かりました、お答えします。晴海ちゃんは『とりあえず、あのロボットを墜としてくる』と言って、出て行かれましたわ」

「ありがとう! でも、墜とすって、どうやって?」

「今は、あちらに……」


 雪姫が指し示すしなやかな指の先、月の光に目を凝らして見ると、城の外壁の螺旋階段を、グレネードランチャーを持って駆け上がる晴海の姿が。


「あー、なるほど。あいつらしいなあ……」


 うんうん、そうだよ、インディ娘はそうこなくっちゃ。

 あいつはこんなところで止まってるような奴じゃないもんな。

 どんな敵にも恐れず、怯まず。

 目的に向かって、いつもガムシャラに全力で走り続けて。

 やっぱり、晴海は根っからの冒険家だ。


「ホント、あいつはスゲェなあ……」

「三雲くん?」


 ぶつぶつと一人ごちるクラウドを、心配そうに見る雪姫。

 クラウドは、大きく息を吸い込んでタメを作ると、天に向かって雄叫びを上げた。


「……っ、あの、バカーーーっ!!」



 *



 塔の外壁の階段を、晴海はグレネードランチャーを持って軽快に駆け上がる。

 だが、その行く手を阻むかのように、足場がビシッと音を立てて崩れた。


「わっ!?」


 とっさに次の段差に足をかけるがまた崩れ、次の階段もこれまた壊れる。


「わったったっ!」


 だが、次の足場は崩れずに残り、ガラガラと響く落石音を尻目に、再び晴海は走り続ける。


「ふう、危ない危ない。でも、今のはすっごいインディぽかった♪」


 死にかけたというのに、なぜかとても嬉しそうな様子。

 晴海は疾走しながら、仲間達の事を想う。


(晴海ちゃん!)

(あんたなら、大丈夫な気がしてきたぜ)


「雪姫……、雹河くん……」


(拙者もお供するでござる)

(オレらは、インディ娘ちゃんと運命を共にするぜー)


「雷也くん、ブラザーズくんたち……」


 みんなのおかげで、あたしはここまで来る事ができた。

 だから、最後はあたしの手で決着を付ける!

 そして……。


(めんどくせー……けど、しょーがねえ。お前の冒険、最後までオレも付き合うぜ)


「クラウドくん……。あたし、あなたには助けてもらってばかりだったけど、最っ高にカッコいい冒険家(あたし)の姿、今見せてあげるね!」


 天に向かって飛翔する戦乙女(ヴァルキュリア)のように、階段を駆け昇った晴海は、城の屋上に到達する。

 真円を描いているその舞台は、フットサルぐらいならゆうに出来るほどの平場になっており、弾除け(トーチカ)になりそうなものは、(へり)にある腰ぐらいの高さの壁ぐらいしかない。


 晴海は屋上の中央に立つと、グレネードランチャーを構え、これが戦いの合図とばかりに、ドパンッと号砲を一発ぶっぱなす!

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